第12話 窮地脱出

実況:あぁ。これで『武蔵野ジャイアンツ』の秀樹選手・秀美選手のスタミナがゼロ

  :になった。二人の頭上にデジタルの数字が浮かび上がる。代用(トークン)に

  :変わるカウントダウンだ。10、9、8、・・・


 これで終わりか・・。秀樹は諦める寸前だった。だがその時、目の前の画面に1枚

の『スキルカード』が浮かび上がってきた。


〇システム音声 「使用できる『スキルカード』があります。」


 え。『スキルカード』を見る。『フェニックス』だ。すっかり忘れていた。でも、

どんな『スキルカード』なんだ。効果の解説(テキスト)を読んでいる時間はもう無

い。なるようになれ。秀樹は右手を大きく右に振って叫んだ!。


■ライト  「闘志スキル スーパーレア フェニックス」


 秀樹の体が炎に包まれる。炎は回転を始めて秀樹を中心とした天空に届く巨大な竜

巻となった。一瞬で球場が暗くなり。竜巻から巨大なフェニッが現れる。フェニック

スは球場を舞うように飛ぶ。球場がどよめいた。

 秀樹はあたりを見回す。自分を含め、『武蔵野ジャイアンツ』のチームメンバー全

員の体が光に包まれて輝いている。秀樹のスタミナがどんどん回復していく。スタミ

ナバーは満タンになった。力がみなぎってくる。あぁ、助かった。スタミナを回復す

る『スキルカード』だったんだ。スコアボードの解説(テキスト)を読む。


『フェニックス』

・一試合に一度だけ使用可(闘志バーの50%を消費する。)

・使用者のスタミナを最大値に回復する。

・チームの他のメンバーのスタミナを半分まで回復する。


実況:『武蔵野ジャイアンツ』の秀樹選手、ここで闘志スキルの『フェニックス』を

  :使用した。巨大なフェニックスが球場を舞う。なんと美しい光景だ。右翼手

  :(ライト)の秀樹選手のゼロになったスタミナが満タンになった。他のメンバ

  :ーもスタミナを大幅に回復だ。『武蔵野ジャイアンツ』、窮地を脱出。


 左京が驚いた顔をしている。想定外の事なのだろう。

「お前、そんなとんでもない『スキルカード』を隠し持ってやがったのか。」

 右京も困った顔をしている。

「まずいな。今度はこっちのスタミナが持たない。」 


実況:『ブラックアイズ』、次のバッターは五番だ。沼と化したグラウンド。どんな

  :展開になるのか。


■ピッチャー 「投球スキル コモン ストレート」

■バッター  「打撃スキル アンコモン 強打」


実況:打ったあぁ。三遊間にボールが飛ぶ。が、ボールは沼と化した地面で転がらな

  :い。三塁手(サード)の三石選手が拾って一塁手(ファースト)にボールを投

  :げる。これでツーアウトだ。


 今のプレイで三石のユニホームは泥だらけだ。真子が三石に頭を下げた。三石は右

手を上げて応える。


実況:続いて六番バッターの登場。が、力み過ぎたか。真子選手のストレートに空振

  :り、三振だ。『ブラックアイズ』、追加点無し。スリーアウト・チェンジだ。


 やっと、やっとチャンスが回ってきた。『ブラックアイズ』に隙ができた。左京の

スタミナだ。『メルトダウン』と二度目の『白い流星弾』を使用したことで大きく減

少している。秀樹はチームのメンバーに声を掛ける。

「みんな、徹底的にレフトねらいだ。」

 さぁ、反撃のチャンスだ。先頭バッターは俺だ。この回こそ一点を取るんだ。


実況:『武蔵野ジャイアンツ』、ピンチを脱出して今度は反撃だ。この、『メルトダ

  :ン』の効果を逆に生かせるか。三番、右翼手(ライト)の秀樹選手からの好打

  :順だ。秀樹選手は先ほどの『フェニックス』でスタミナは満タンだ。ピンチの

  :後にチャンスあり。期待しましょう。


■ピッチャー 「投球スキル アンコモン スライダー」

■バッター  「打撃スキル アンコモン 強打」


実況:当たった・・。ボールはレフト前に落ちる。『メルトダウン』の効果でボール

  :は転がらない。レフトの左京選手、必死にボールに駆け寄るが追いつけない。

  :セーフだ。ノーアウト・一塁。


 左京の顔が歪む。『ウルトラレア』、『スーパーレア』を連発した左京のスタミナ

もほとんど残っていない。奴が代用(トークン)になれば逆転だって夢じゃない。


実況:次は四番・三塁手(サード)の三石選手だ。試合も終盤。ここで連打が欲しい

  :ところです。キャプテンの意地を見せることができるか。


■ピッチャー 「投球スキル レア フォークボール」

■バッター  「打撃スキル レア 天秤打法」


実況:三石選手、『レアカード』の『天秤打法』だ。『フォークボール』をすくい上

  :げた。打球は高々とレフトのライン際に上がった。左翼手(レフト)の左京選

  :手、沼の中を今度は左に走る。『武蔵野ジャイアンツ』、左京選手へ狙い打ち

  :だ。自らの『メルトダウン』に苦しむはめになった。左京選手のスタミナも底

  :が見えてきた。大丈夫か。


 左京はやっと打球に追いついたが、どこにも投げられない。ノーアウト・一塁・二

塁。さすがに今までのような余裕は見られない。


実況:これでノーアウト・一塁・二塁。『武蔵野ジャイアンツ』、大きなチャンスを

  :迎えた。次は五番バッターだ。


■ピッチャー 「投球スキル アンコモン カミソリシュート」

■バッター  「打撃スキル アンコモン バントエンドラン」


実況:一塁・二塁のランナーが同時にスタート。バントエンドランだ。失敗すれば

  :ダブルプレイだ。あ、当てた。バッター、なんとかバントでボールを一塁線に

  :転がした。一塁手(ファースト)が取りに行くが、『メルトダウン』の効果で

  :ボールは転がらない。今、一塁手(ファースト)が、やっと追いついた。

  :ファーストカバーのピッチャーに投げる。クロスプレイだ。判定はどうか。


□マザー 「判定 ファースト、アウト」


実況:残念。バッターはアウトだ。だが、ワンアウト・二塁・三塁。貴重なランナー

  :を次塁に進めることができた。『武蔵野ジャイアンツ』のチャンスが続く。

  :ついに1点をもぎ取ることができるか。打順は六番。


■ピッチャー 「投球スキル アンコモン スライダー」

■バッター  「打撃スキル アンコモン 強打」


実況:打ったぁ。しかしレフトの真正面。犠牲フライになるか。しかし左京選手には

  :『レーザービーム』がある。おまけにグラウンドは『メルトダウン』で沼状態

  :だ。三塁ランナーの秀樹選手、どうする。

  :ここで秀樹選手は三塁上で陸上のクラウチングスタートの姿勢を取った。タッ

  :チアップするのは確定だ。『武蔵野ジャイアンツ』、勝負に出る。


 左京がボールを取る。秀樹はスタートを切った。レフトで左京が叫んだ。

「点はやらん。これで死ね。」


■レフト   「守備スキル レア レーザービーム」


 ビチャビチャになっているグラウンドを秀樹はホームベースに向けて走る、走る、

走る。レフトから捕手(キャッチャー)に猛烈な返球が返ってきたのがわかる。タイ

ミングじゃ間に合わない。だが負けられない。絶対に負けられない。みんなの思いを

ここで断ち切れない。絶対にこの1点を取る。使いたくなかったけど仕方ない。この

まま突撃だ。秀樹の側で『スキルカード』が回転する。捕手(キャッチャー)の右京

にも『スキルカード』が回転している。


■ランナー   「走塁スキル レア 黒い弾丸」

■キャッチャー 「守備スキル レア 要塞」


実況:秀樹選手、『ブラックカード』の『黒い弾丸』を宣言。捕手(キャッチャー)

  :の右京選手も『レアカード』の『要塞』を宣言。二つの『レアカード』が激突

  :するぞ。


 秀樹は目の前の右京が灰色の巨大な壁に変わっていくのがわかる。だが速度は緩め

ない。逆に加速だ。このまま右京に体当たりだ。黒いオーラに包まれて、秀樹は本塁

へ突入した。「バーン」と激しい爆発音が球場に鳴り響く。


実況:どうだぁ。おっと、ランナーも捕手(キャッチャー)も吹き飛んでいる。

  :あぁ、捕手(キャッチャー)の右京選手がボールを落としている。


〇マザー  「判定 ホーム セーフ」


実況:秀樹選手、セーフだ。『武蔵野ジャイアンツ』、ついに、ついに1点をもぎ

  :取った。スコアは4対1。二塁ランナーはこの間に三塁へ。ツーアウト・三

  :塁だ。


 やった。秀樹はガッツポーズを取った。『武蔵野ジャイアンツ』のベンチ前はお祭

り騒ぎだ。今までの鬱憤が一気に晴れた感じだ。


実況:さぁ、ここで打順は七番だ。ヒットが出ればもう一点が取れるが。あぁ、だが

  :空振り三振だ。力みすぎたか。だが、この回、『武蔵野ジャイアンツ』は貴重

  :な一点を取ることができました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る