第11話 止めの一撃

 試合の次の動きは七回に訪れた。


実況:さぁ、七回表、『ブラックアイズ』の攻撃です。先頭打者は四番左翼手(レフ

  :ト)の左京選手だ。残り回も少ない。いよいよ『白い流星弾』が再び放たれる

  :か。


 左京が呟く。

「さぁ、この回で終わりだ。まぁ、小学生にしちゃ、よく頑張ったんじゃないか。」

 秀樹は対策を必死で考える。『白い流星弾』は残り2発。残りの回も少ない。ここ

で使ってくるのは間違いない。ここでレフトの秀美に打たれては秀美のスタミナが尽

きる。他のメンバーのスタミナも苦しい。俺だ。俺が止める。左京を挑発だ。秀樹は

左京に吠えた。

「おい、左京。俺と勝負しろ。この卑怯者め。お前の『白い流星弾』は俺が必ず止め

て見せる。」

 左京は笑う。そしてバットを秀樹のライトに向けた。ホームランの予告だ。

「面白い。乗ってやろう。ただ、言っておくぞ。これを捕っても取れなくてもお前た

ちの負けだ。無駄な努力だぜ。」


■ピッチャー 「投球スキル レア フォークボール」

■バッター  「打撃スキル ウルトラレア 白い流星弾」


 投手(ピッチャー)の真子もとっておきの『レアカード』を出した。ホームベース

手前で球が激しく落ちる。だが、真子の意思も『ウルトラレア』には勝てなかった。

再び左京に光の柱が立った。白いオーラが左京を包み込む。


実況:ピッチャー投げた。だが『ウルトラレア』の『白い流星弾』炸裂。ダミーボー

  :ルが9つ発生した。打球群がライト上空へ迫る。


■セカンド  「守備スキル アンコモン ハイジャンプ」


実況:おおっと。二塁手(セカンド)の球児選手が『ハイジャンプ』で飛んだぁ。

  :『白い流星弾』に準備していたのでしょう。だがこれでは残念ながら捕球は

  :無理だ。そのまま無防備に『白い流星弾』の前に出た。


 球児は秀樹の盾になる覚悟だ。ボールは捕れなくてもいい。1個でもライトへの

ボールを減らすんだ。体中でダミーボールを受け止める。ダミーボールが三つ減り、

6個になった。そのまま地面に落下する球児。秀樹は球児に叫ぶ。

「サンキュウ、球児。」

 次は俺の番だ。秀樹は宣言する。


■ライト   「守備スキル アンコモン ハイジャンプ」 


 秀樹も上空に飛ぶ。『白い流星弾』が迫ってくる。ボールの一つの色が濃い。これ

が本物だ。


実況:さぁ、ライトの秀樹選手も『ハイジャンプ』で飛んだ。捕球できるか。秀樹選

  :手、ボールを捕獲。だが、ここからが問題だ。残りのダミーボールが秀樹選手

  :に襲い掛かってくる。


 ダミーボールが一斉に秀樹に襲いかかってくる。1球目は左足でキック。2球目を

右手で外に弾き飛ばす。だが、残りは・・避けられない。ガン、ガン、ガン、ガン。

4個のダミーボールが秀樹を直撃。痛い。秀美にこれを全部ぶつけたんだな。怒りが

込み上げてくる。秀樹は痛みに耐え、ボールをグローブごと胸に守って着地。ボール

をキャッチしたグローブを高々と上げる。アウトだ。

「『白い流星弾』、破ったぞぉ!。」


実況:おお、右翼手(ライト)の秀樹選手が『白い流星弾』を捕球した。アウト、

  :アウトだ。『ウルトラレア』の攻撃を耐えきった。しかし、今の守備で秀樹選

  :手のスタミナも大きく減少だ。これは大丈夫か。9回まで持つのか。


 やった。捕ったぞ。捕ったぞ。秀樹は喜びに震えている。そのまま左京に向かって

言い放った。

「左京、俺がお前の『ウルトラレア』を破ったぞ。どうだ。」

 左京は笑いながら答えた。

「あぁ、それはおめでとう。よかったな。だが、捕っても捕らなくてもお前たちの負

けだと教えてやっただろう。お前たちは既に詰んでいる。俺の計算通りさ。今から答

えを見せてやる。」

 左京の前で『スキルカード』が回転している。思わず秀樹は身構える。左京はゆっ

くりと『スキルカード』を宣言する。左京を中心に赤い光の爆発が起きる。


■先行   「フィールドスキル スーパーレア メルトダウン」 


実況:左京君、フィールドスキル『メルトダウン』を宣言。一瞬でグラウンドは黒く

  :変色。雨に濡れてぬかるんでいた地面が更に溶けていく。守備者は膝半分まで

  :泥に沈んでいく。


 秀樹は驚く。なんだこれは。何が起こったんだ。スコアボードに表示された解説を

読む。


『メルトダウン』

 ・先行チームのみ使用可。一試合に一度のみ使用可

 ・球場の地面を融解する。

 ・効果は発動した回のみ有効。次回より次回より晴天の通常グラウンドとなる。

 ・このフィールドスキルの発生回に守備プレイヤーのスタミナが10%減。

 ・効果が発動している間はスキル消化量が1.5倍になる。


 ここでスタミナが10%減。秀樹はテキストを読んで絶望する。あぁ、これで俺と

秀美のスタミナがゼロになってしまう。拳を握りしめる。


左京は満面の笑顔だ。

「お疲れ様。これでお前はこの試合から排除だ。」


 負けるのか。負けてしまうのか。こんな、猫がネズミをいたぶるように。虫けらを

踏みつぶすかのように。負けたくない。こんな試合内容で負けたくない。悔しい。嫌

だ。

「くそぉ。ここまで踏ん張ってきたのに。」

 秀樹は沼となった地面に両手と両膝をついた。そして静かに涙を流した。

 秀樹と秀美の頭上にデジタルの数字が浮かび上がる。代用(トークン)へ変わるカ

ウントダウンだ。

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