第4話 チーム誕生

「そうそう。そうやって進めていくんだ。『スキルカード』は使用されるタイミング

で自動で表示されるから、その時に宣言すればいい。『スキルカード』によって1試

合で使える回数が違うから注意してね。お互いの『スキルカード』の効果はスコアボ

ードに表示される。見慣れない『スキルカード』が出たらスコアボードを見て確認し

よう。」


 秀樹はスコアボードに表示されているスキルカード効果欄を見た。

『一本足打法』

  ・一試合に3回使用可

  ・打球の飛距離が20%増加。

  ・ホームラン確率が20%増加。


「『スキルカード』を使用すると、『スタミナゲージ』が減るから注意してね。さっ

き言ったけど『スタミナゲージ』がゼロになるとシングルプレイではゲームオーバー

になる。ハーフ(4人)モードやフル(9人)モードではスタミナ切れのプレイヤー

は代用(トークン)に変化する。チームの1人でも代用(トークン)になると相手の

チームに狙い打ちされて敗北につながりやすい。九回までスタミナをバランスよく割

り振ってプレイしないとダメなんだよ。ちなみに10点差で勝っていても、八回に全

員のスタミナ切れになればゲームの続行が不可能で負けになる。」


 監督が店長に質問する。

「俺は盗塁が好きなんだけど、走塁のスキルもあるの?。」

「ええ。ただ種類が少ないんですよ。なにしろ打席が1球で終わりますからね。代わ

りに人気があるのが『マルチスキル』の『レアカード』の『神速』ですね。守備時は

打球の前に50%の確率で移動、残り50%は打球近くに移動。走塁時にも使用でき

て早く走れる。色々と便利な『スキルカード』です。」

「なるほど。出番が多そうですね。カード枚数を確保するのが大変そうですね。」

「ええ。レアカードまでならオンラインで他のプレイヤーと交換(トレード)もでき

ます。でも『神速』はかなりレートが高い。人気の『スキルカード』ですから。」

「審判はどうなっているの?。」

「この『ヴァーチャル・ナイン』の世界では、『マザー』と呼ばれる人工知能が全て

を審判をするんですよ。『マザー』の決定は絶対です。試合もマザーが続行不可能と

判断すれば強制的にコールドゲームにします。」

「へぇ。厳しいですね。」

「でも、絶対中立だし、勝ち負けが決定したゲームをダラダラやっても面白くないで

すからね。」


 店長は説明を続ける。

「またこのゲームの特徴に、『破壊(ブロークン)』があります。全てのカードは使

用時に1%の確率で『破壊(ブロークン)』されます。レアリティは関係なし。」

 思わず秀樹は確絶叫する。

「え~。『スーパーレア』も壊れちゃうの?。」

 店長は意地悪に答える。

「運が悪ければ1回使用しただけで壊れちゃう。ただし、2回連続では『破壊(ブ

ロークン)』は起こらないので、コモンカードなんかが『破壊(ブロークン)』した

時の次に『スーパーレア』とかを使えば壊れない。タイミングが難しいけど絶対に壊

れて欲しくないときのテクニックだよ。」

 なんだかすごく残酷なルールだなぁ。

「それから持っている『スキルカード』に『スーパーレア』や『ウルトラレア』が多

い場合には『破壊(ブロークン)』の確率が上がって壊れやすくなる。。『ウルトラ

レア』1枚ごとに+0.5%、『スーパーレア』1枚ごとに+0.1%で確率が増加

する。例えばデッキに『ウルトラレア』が2枚入っていると、『破壊(ブロークン)

』の確率は通常確率の2倍の2%になる。対戦相手の『破壊(ブロークン)』の回数

が多い時は注意が必要だね。切り札を隠し持っている可能性が高い。」

 色々と奥が深いなぁ。秀樹は感心する。店長は続ける。

「ゲームでは『スキルカード』が大量に必要だから、いっぱいプレイしないとね。1

ゲームで1枚抽選されて手札が増える。」

 店長は『いっぱいプレイしないとね。』の言葉に力が入っていた。さすが経営者。


 向こうの『コンソール』で女の子たちがはしゃいでいる。

「ユニホームはどれにする?。」

 秀樹の妹の秀美(レフト)とその友達の真子(ライト)だ。

「色は白字に赤かな。」

「ユニフォームのタイプはどうしよう?。」

 隣のコンソールのキャプテンの三塁手(サード)の三石に相談している。

「あぁ、それは女の子に任せるよ。」

 二人は悩んでいる。もう一人、一塁手(ファースト)に女の子がいるが、そいつは

ユニホームには興味が無いようだ。黙々とプレイしている。

「う~ん、『3』が可愛いよね。でも、ミニスカートだと下着が見えちゃいそう。」

 秀樹は思った。ヴァーチャル空間だから別に関係無いんじゃないかな?。

「『4』のホットパンツもいいけどね。でもやっぱりミニスカートの方が可愛いか

な。」

「じゃぁ、『3』で決定。三石キャプテン、名前はどうするの?。」

「やっぱり現実のチームと同じで。『武蔵野ジャイアンツ』でいいんじゃないか

な。」

 よし、全員の設定終了。秀樹はみんなに声を掛けた。

「よっし。じゃぁ、全部決定。登録。よし。お小遣いに無理が無い範囲で頑張ろう

な。」

 「は~い。」とみんなの返事が聞こえる。

 小学生野球チームの『武蔵野ジャイアンツ』のゲーム版チームが生まれた瞬間だっ

た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る