約100回記念特別企画 マイナー昆虫決定戦! ⑧決着の刻ッ!

 世界一マイナーな昆虫(もく)を決めようとしている今回のシリーズ。


 前回で26種類のグループが消え、残りはガロアムシもくとジュズヒゲムシもくだけになりました。


 さっそく優勝を決めたいのですが、両者の実力は恐ろしく拮抗しています。

 優劣を付けるのは、不可能と言っても過言ではないでしょう。


◇ルール


 ①まず各グループをABCの三つに分け、Cクラス以外をふるい落とす。

 

 ②Cクラス内で決勝を行い、最もマイナーなグループを決定する。


 ※クラス分けの基準は、以下の通りです。


 Aクラス:昆虫に興味のない方でも知っているグループ。


 Bクラス:昆虫に多少興味のある方や、特定の業界には知られているグループ。


 Cクラス:かなりの昆虫マニアしか知らないグループ。


 ※カマアシムシもく、トビムシもく、コムシもくも、広い意味では「昆虫」です。

  ただし他の昆虫とはちょっと違うため、今回は除外します


 ◇特別ルール


 グループ自体は無名でも、有名な昆虫が含まれる場合は、ワンランクアップとします。


 例:「コウチュウもく」と言うグループが無名でも、「カブトムシ」が超有名な場合。

 →本来はCクラス相当でも、Bクラスになる。


 ※最終的には作者の独断と偏見で決まります(笑)


 ◇ガロアムシもくとジュズヒゲムシもくは互角


 最初に説明した通り、Cクラスの昆虫を知名度で比べることは出来ません。


 またガロアムシもくとジュズヒゲムシもくは、どちらも非常に小さいグループです。


 総数はほぼ互角で、50種類にも届きません。

 今までのように、総数で判定を下すことは不可能です。


 シリアゲムシやラクダムシと違って、見た目が特徴的なわけでもありません。

 素人が見ても、別の昆虫と間違えてしまうでしょう。


 もちろん、シロアリモドキもくのように、独特な能力を持っているわけでもありません。


 考えてみれば、当然の話です。

 何かしら個性があるなら、決勝戦まで残っているわけがありません(笑)


 ◇見付かった時期もほぼ同じ


 では、グループとして認められた時期はどうでしょう。


 目立たない昆虫なら、なかなか人間に見付からないはずです。

 より遅く認められたほうが、マイナーと言えるのではないでしょうか。


 調べてみると、ジュズヒゲムシもくが認められたのは1913年のことです。


 一方、ガロアムシもくは、1932年にグループとして認められました。


 わずかにジュズヒゲムシもくのほうが早いですが、ほぼ誤差です。


 しかも1932年は、「ガロアムシもくが認められた年」に過ぎません。

 最初のしゅが発表されたのは、1914年のことです。


 対するジュズヒゲムシもくは、1913年に最初のしゅが発表されています。


 乱暴に言ってしまうと、人間が彼等を知った時期は一年しか変わりません。


 ◇ガロアムシもくは一番新しいグループだった?


 ただ70年間、ガロアムシもくは昆虫の中で一番新しいグループ(もく※)でした。

(※絶滅したグループを除く。また当時は『もく』ではなかったが、カジリムシもくは1953年に認められている)


 2002年にカカトアルキもくが認められるまで、彼等の牙城が崩れることはありませんでした。


 この点をセールスポイントと考えるなら、ガロアムシもくのほうがメジャーと言えます。


 ◇ジュズヒゲムシもくは日本にいない?


 レア度と言う点でも、両者には微妙な違いがあります。


 これっぽっちも認知されていませんが、ガロアムシは日本にもいる昆虫です。


 対するジュズヒゲムシもくは、2020年現在、日本で発見されていません。

 日本で見付かっていないグループは、彼等とカカトアルキもくだけです。


 ガロアムシよりマイナーと言いたいところですが、この点は個性と考えることも出来ます。


 28種類の中で2グループしか該当しないなら、文句なく特別です。

 そんな虫が優勝していいのか、意見の分かれるところでしょう。


 ◇ガロアムシもくはレア


 更に問題をややこしくするのが、棲息域です。


 ジュズヒゲムシは熱帯の昆虫ですが、割と世界中で発見されています。

 温かい南米や東南アジアはもちろん、アメリカや中国にも分布しています。


 一方、ガロアムシは世界的にもレアな昆虫で、限られた地域でしか見付かっていません。


 国内にいるからと言って、メジャーだと決め付けるのは早計です。

 ただ単に、日本がその「限られた地域」の一つであるだけに過ぎません。


 ◇ガロアムシはなかなか見付からない


 おまけにガロアムシは特殊な環境に棲む虫で、見付けるのは困難です。

 恐らく国内にいる虫で一番見付からないのは、彼等かシロアリモドキもくでしょう。


 森や山で偶然遭遇することは、ほぼありません。


 田舎に住んでいる方は、毎日色々な昆虫に遭遇していることでしょう。

 しかしガロアムシを見たことがある方は、結構珍しいはずです。


 彼等と会いたいなら、こちらから棲息する場所に行く必要があります。

 その上でしっかり探さなければ、まず見付かりません。


 ただジュズヒゲムシも木の中や樹皮じゅひ(木の皮)の下に棲むため、見付けやすいわけではありません。

 やはり出会いたいなら、能動的に探す必要があります。


 国内にはいるが、世界的にはレアなガロアムシもく


 日本にはいないが、世界中に分布するジュズヒゲムシもく


 どちらをマイナーと言うべきなのかは、難しいところです。


 ◇Googleグーグル先生に聞いてみた


 Googleグーグル検索のヒット数(2020年3月23日時点)は、圧倒的にジュズヒゲムシのほうが下です。

 ガロアムシもくは2万2000件ほどヒットしますが、ジュズヒゲムシもくは2000件しかヒットしません。


 ちなみにメジャーなコウチュウもくは約13万件、チョウもくは約684万件(!)ヒットします。


 学名(アルファベットのほう)で検索すると、ジュズヒゲムシは9万1000件ほどヒットします。

 一方、ガロアムシのヒット数は9万3000件ほどで、ほぼ互角です。


 学名で検索すると、海外のサイトが多くヒットします。


 どうやらジュズヒゲムシもくは、海外のほうが知名度が高いようです。

 日本にいないため、国内では取り上げる人が少ないのでしょう。


 ◇運命の判定


 様々な面から検証してみましたが、優劣を付けられるほどの差は見付かりませんでした。


 どちらを選ぶかは、完全に好みの問題です。


 ビアンカとフローラ、きのこの山とたけのこの里、貧乳と巨乳と同じです。

 人それぞれ意見があるもので、絶対的な解答があるものではありません。


 ちなみに、作者は貧乳派です(唐突なカミングアウト)。


 最終手段として、同時優勝と言う落としどころも考えました。

 ただ、ここまでやって来たからには、白黒付けたいのが人情です。


 そこで今回は、作者の独断と偏見で判定を下したいと思います。

 苦情は甘んじて受け入れますので、どうかご容赦下さい。


 世界で一番ムゥワィナー(巻き舌)な昆虫は――


(ドラムロール開始)


(ドラムロール継続中)


(まだまだ継続中)


(まだ継続中)


「ガロアムシもく」です!


 やはり世界中にいる虫に、マイナーの栄誉はふさわしくありません。


 それに日本にいないジュズヒゲムシもくは、いわば「外敵」です。

 日本人の作者としては、国産のガロアムシに王座を与えるべきだと思いました。


 って言うか、こんな不名誉な王座、外国に押し付けるべきだったのでは……?


 ま、まあ、日本勢が手ごわい外国勢に勝ったほうが、ドラマチックですしね。


 何ともいい加減なジャッジですが、所詮、このシリーズはエンターテインメントです。

 科学的で論理的な判断は、専門家の方にお任せします。


 ◇ガロアムシもくはなくなるかも?


 最大の理由が、「消えるかも知れないこと」です。


 ガロアムシもくはカカトアルキもくと近く、統合されることがあります。


 今後の動き次第では、「ガロアムシもく」と言うグループがなくなるかも知れません。

 無名で満足せずに消えてしまうなんて、マイナーの究極系ではないでしょうか(笑)


 また彼等と一緒になった場合、カカトアルキもくは「日本にいない」と言う売り文句を失います。


 それはつまり、ジュズヒゲムシもくが「唯一日本にいないグループ」になると言うことです。

 そんな個性を持つグループに、「世界一マイナー」の称号を与えるわけにはいきません。


 ◇無理矢理盛り上げてみる


 と言うわけで、最ナートーナメント(ではない)の覇者は、「ガロアムシもく」です!


 99対100くらいの僅差ですが、勝負を制したことに変わりはありません!


 参加グループ28種類ッッ!


 試合数(ページ数)約50ページッッ(42字×34行換算)!


 死闘(制作期間)およそ2週間ッッ!


 心を負傷した回数は、参加グループの数と同じと言っていいでしょう(虫キモい)!!

 

 2度とッ! 2度とこんな大会は見られないでしょうッッ(もうやらねぇよ、ペッ)!


 28種類にも及ぶグループは、どれ一つとして凡庸ぼんようではありませんッ!


 全てのグループが個性的ッッ!


 全てのグループが特徴的ッッ!


 そして全ての選手が……ッッ、イカしてたァッ!!


 現代社会において「マイナー」と言うことが、あるいは無意味との声もあるでしょう。


 しかしマイナーであることは――かくも美しい!!!


「マイナー」であることは美しい!!!


「マイナー」であることはスバラシイ!!!


 アリガトウッッ、ガロアムシッッ!!


 マイナーイズビューティフル!!!


 よし、これで盛り上がったな(確信)……!


 ◇準優勝のジュズヒゲムシとは?


 さて、ここからは惜しくも準優勝になったジュズヒゲムシもくを紹介します。


 そして次回は、開会式で約束した通り、優勝者のガロアムシもくを掘り下げます。


 はたして資料は集まるのか!?


 それとも、キュアミューズへの愛を語る回になってしまうのか!?


 待て、次回!





 ☆ジュズヒゲムシもく絶翅目ぜっしもく) Zoraptera


 総数:約37種。


 変態:不完全ふかんぜん変態へんたい(成虫になる際、サナギにならない。幼虫がそのまま大きくなる)。


 代表的な昆虫:ジュズヒゲムシ。


 関連シリーズ:なし。


 解説:最後までガロアムシもくを苦しめた外敵軍団。


 ・こことカカトアルキもくだけは、まだ日本で見付かっていない。


 ・日本国内での知名度は、ガロアムシもくより低いかも知れない。


 ・シロアリモドキもくや、黒いヤツもく(正式名称は自粛)に近いと言われるグループ。

  ハサミムシもくやカワゲラもくに近いと言う意見もあるが、結論は出ていない。


 ・英名は「Angelinsectエンジェルインセクト」。

  直訳すると、「天使の虫」。


 ・何ともロマンチックな名前だが、見た目はシロアリそっくり。チャタテムシにも似ている。


 ・「ジュズヒゲ」と呼ばれている通り、数珠じゅず状の触角を生やしている。


 ・とても小さい昆虫で、体長は1.5㍉から3㍉程度。


 ・学名の「Zoraptera」は、「はねがない」と言う意味。


 ・確かにはねのないタイプもいるが、あるタイプも存在する。

  当初ははねのないタイプしか見付からなかったため、はねのない昆虫だと誤解されていた。


 ・はねのあるタイプとないタイプでは、微妙に姿が違う。


 ・はねのあるタイプは褐色かっしょくで、複眼がある。


 ・はねのないタイプは複眼が退化し、なくなっている。身体の色も白っぽい。


 ・なかなか見付からなかったことからも分かるように、はねのあるタイプは少ない。


 ・棲息地の環境が悪い時だけ、はねのあるタイプが誕生するらしい。

  飛んで遠くに行き、繁殖に適した場所にしゅを運ぶためだと考えられている。


 ・はねは短期間で抜け落ちてしまう。

  この辺りも、はねのあるタイプが見付からなかった要因か。


 ・雑食の昆虫で、菌類や植物の破片、昆虫の死体などを食べる。


 ・アリやシロアリのように群れを作り、樹皮じゅひ(木の皮)の下や朽ち木の中で暮らしている。


 ・ただし、アリやシロアリほど巨大な群れは作らない。


 ・割と世界中にいるため、「実は日本にいるのでは?」と疑っている人も多い。


 ・実際、シロアリにしか見えない昆虫なので、気付かれていない可能性は高いと思う。

  素人が偶然見付けたとしても、この虫が特別だとは思わない。


 ・特に温かい沖縄や九州なら、ワンチャンあるかも。

  新聞や図鑑に載りたい方は、手当たり次第に木を探してみて下さい。


 ・日本で見付かったら、結構話題になるはず。一気にAクラスになるかも。



 ◇参考資料


 徹底図解 昆虫の世界

 岡島秀治監修 (株)新星出版社刊

 

 昆虫の誕生 一千万種への進化と分化

 石川良輔著 (株)中央公論社刊


 ※その他、過去に作者自身の書いたものを参考にしています。

  当時参考にした資料は、各回をご覧下さい。 

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