箸休め はえですよろしくおねがいします ③はなあぶもはえです

 文末に今回の「まとめ」を掲載しています。

 お時間のない方は、一番下まで画面をスクロールさせて下さい。


 題材の関係上、気持ち悪い話が多めです。

 お食事中には読まないほうがいいかも知れません。


 ◇前回のおさらい


 PVが心配で仕方ない今回のシリーズ。

 前回はハエもくが二つのグループに分かれることを解説しました。


 くり返しになってしまいますが、ハエもく短角亜目たんかくあもく(ハエ亜目あもく)と長角亜目ちょうかくあもく(カ亜目あもく)に分けることが出来ます。


 長角亜目ちょうかくあもくはカやガガンボのグループで、短角亜目たんかくあもくはハエとアブのグループです。


 更に短角亜目たんかくあもくは、羽化の仕方で二つのグループに分かれます。


 サナギに丸い穴がくのがハエで、サナギの背中が裂けるのがアブです。


 更に更にハエには、額に袋のあるグループとないグループがあります。


 ほとんどのハエは前者ですが、ハナアブは袋を持っていません。


 さて、最後の文に違和感を覚えた方は、何人いるでしょうか(笑)。


 ◇ハナ「アブ」だけど、「アブ」じゃありません!


 袋の有無で分けられるのは、「ハエのグループ」です。


「アブ」の「ハナアブ」は、サナギの背中が裂けなければいけません。


 オールウェイズ民明みんめい書房しょぼうの作者が、また全国の青少年を騙したのでしょうか?


 いいえ、基本的にこのシリーズはデタラメだらけですが、今回は間違っていません。


 ◇「アブ」が「ハエ」で、「ハエ」が「アブ」????


 生物学的に言うと、ハナ「アブ」は「ハエ」です。


 逆にオドリ「バエ」は「ハエ」ですが、サナギの背中が縦に割れます。


 この点だけ見ると、彼等は間違いなく「アブ」です。

 ただし実際には、アブとハエの中間に当たる昆虫と考えられています。


 ◇「ハエ」か「アブ」かはフィーリング?


 実を言うと、アブやハエの名前はかなりいい加減です。


 生物学的には定義が存在しますが、フィーリングで決められているのが現実です。

「アブっぽい」のが「アブ」で、「ハエっぽい」のが「ハエ」と呼ばれています。


 気持ち悪ければ「ハエ」で、見た目がいいのが「アブ」と言ってもいいでしょう。


 ◇キュートなハナアブ


 実際、ハナアブの仲間は、ハエとは思えないほどファンシーです。


 日本に棲むナミハナアブも、例外ではありません。


 彼等は体長15㍉前後のアブ(正確にはハエ)で、花の蜜や花粉を吸って生活しています。


 割とどこにでもいますが、特に花の近くでよく目撃されます。

 最も見掛けるハナアブであるため、単に「ハナアブ」と呼ばれることも少なくありません。


 黄色と黒に色分けされた身体は、ミツバチにそっくりです。

 もこもことした毛も生やしていますが、針や毒は持っていません。


 黄色&黒の虫が花の近くを飛んでいたら、ほとんどの人がミツバチだと思うでしょう。

 しかし実際には、ナミハナアブであることのほうが多いようです。


 ◇ミツバチに似ている理由――ベイツがた擬態ぎたい――


 もちろん、ミツバチに似ているのは偶然ではありません。


 ハチのように毒針を持つ生き物は、捕食者にとって近付きたくない存在です。

 ナミハナアブは彼等に擬態ぎたいすることで、外敵を遠ざけていると見られています。


 毒のない生物が毒のある生物に擬態ぎたいすることを、専門的には「ベイツがた擬態ぎたい」と言います。


 ベイツがた擬態ぎたいに関しては、以前のシリーズで詳しく解説しています。

 興味がありましたら、目を通してみて下さい。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884444188/episodes/1177354054884519163

 URLをクリックすると、該当する回に飛びます。


 ◇ハナアブは多種多様


 ハナアブは大きなグループで、現在までに6000種ほど発見されています。

 日本国内だけでも、約400種のハナアブを見ることが可能です。


 それだけ種類がいれば、生活スタイルも一つではありません。


 ◇「アリ」の「巣」に潜む「アリス」アブ


「アリス」アブの仲間は、幼虫時代を「アリ」の「巣」で過ごします。


 ハナアブが「ハエ」の仲間である以上、幼虫は「ウジ」と呼ぶべきです。


 しかしアリスアブの幼虫はお皿を伏せたような形で、とてもウジには見えません。

 昔の学者もかなり混乱したらしく、かつてはナメクジや貝だと考えられていました。


 アリスアブの幼虫は、アリの幼虫の体液を吸って生きています。

 あわれにも体液を吸い尽くされたアリの幼虫は、ぺしゃんこに潰れてしまいます。


 日本にも棲んでいるので、気になる方はアリの巣を掘ってみて下さい。


 またヒラタアブと言うグループの幼虫は、アブラムシを食べることで知られています。

 見た目はウジですが、野菜や花を育てている方にはありがたい存在です。


 ただ、どんな幼虫でも、ハナアブの成虫ほど人間に貢献してはいないでしょう。


 長くなったので、今回はここまで。


 次回は植物とハエの関係に迫ります。


 ◇今回のまとめ


 ☆ハナアブは「アブ」だが、本当は「ハエ」の仲間。


 ☆オドリバエは「ハエ」だが、アブとハエの中間に当たる昆虫。


 ☆アブとハエの名前は、フィーリングで決まっている。アブっぽければ「アブ」で、ハエっぽかったら「ハエ」。


 ☆日本中に棲むナミハナアブは、毒針を持つハチに擬態ぎたいしている。花の近くを飛んでいるナミハナアブを、ミツバチと誤解している人は多い。


 ☆ハナアブは大きなグループで、約6000種発見されている。国内だけでも、約400種のハナアブを見ることが出来る。


 ☆「アリス」アブの仲間は、幼虫時代を「アリ」の「巣」で過ごす。


 ☆アリスアブの幼虫は、全くウジに見えない。昔はナメクジや貝と誤解されていた。


 ☆アリスアブの幼虫は、アリの幼虫の体液を吸って生きている。


 ☆ヒラタアブと言うグループの幼虫は、アブラムシを食べる。


 ◇参考資料


 ハエ学 多様な生活と謎を探る

 篠永哲・嶌洪著 東海大学出版会刊


 蠅たちの隠された生活

 エリカ・マカリスター著 桝永一宏監修 鴨志田恵訳

 (株)エクスナレッジ刊


 ビジュアル 世界一の昆虫

 リチャード・ジョーンズ著 (株)日経ナショナル・ジオグラフィック社刊


 徹底図解 昆虫の世界

 岡島秀治監修 (株)新星出版社刊

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