第6話【オリエンテーションと部屋選び】

「ごほん、みんなの名前は把握した。それでは軽いレクリエーションをしていこうと思う、3人1チームで木を制限時間で多く削ること、1位のチームはお小遣いをあげよう」


 内容は簡単で、渡した工具を持って木を多く切り落とす。

 お小遣いはさほど多くはないが、子どもにとっては大金に近い、日本円で見ると1人1万ぐらいになる。

 【木の安全な切り方】

円の中心に向けて水面の斜めに少し切って、そして三角形を作るように真横に切る、それを取り除くと、木をまっすぐ切った時に倒れる方向を決められる。

 チーム分けは卓三が選んだ。

 チーム【木狩り隊】、メンバーはグリル、リーム、ココ

 グリル発案で、リームの「シンプルでいいんじゃないか」とココの「賛成っす」で異論なく、すぐに決定した。

 チーム【一番】、メンバーはタルト、ホワイト、ガイア

 ホワイトの提案で、ガイアはゴクリと頷き、タルトが賛成し決定する。

 チーム【ラス】、メンバーはサキ、ゼン、ラス

 サキとゼンがチームの中で冷静なラスをリーダーにし、チーム名をラスにした。

 ラスは最初、困惑していたが、サキとゼンのノリで押し倒され決定する。

 仲良さそうな人を集め、慣れさせようとする。


 慣れは早く、制限時間1時間の内に多くの木を切り取れた。

 数え方は切った木に、✕、〇、□をつけ、ニイナに採点してもらう事にした。

 その間、卓三はストレージから、簡易BBQセットを出して、素材ストレージから、タン、カルピ、ミノ、ホルモン、などを出して焼いていた。

 朝食べていたかは知らない、けど昼飯を食べていないのは確実、そして、運動した後にお腹がすくのも確実。

 そのため、少し多く焼いていた。


「美味そうだな」


「もう腹ペコペコだぜ」


「園長さん、すごいっす」


 香ばしい肉の香りは森に浸っていたそのため院生達は気づいてもおかしくはない、案の定、既に気づかれていた。

 どうやら一番乗りは、チーム【狩り隊】のようだ。

 それに続きながらチーム【ラス】、チーム【一番】がやってきた。

 ベンチを軽く移動し、いくつかの椅子を追加した。

 みんなが来たタイミングで肉が程よく焼き上がり、肉の香ばしい匂いが食欲をさらに掻き立てる。


「焦らなくてもまだまだあるぞ」


 人が多いと焼くのが間に合わなくなる。

 それを予測した卓三は、前もってBBQセットを多く出していた。


「うめぇー」


 グリルはそう言うが、他の院生は黙々と食べていた。

 中には涙を流し、直火焼肉を噛み締めていた院生もいた。

 これを見た卓三は心を打たれ、気まぐれに始めた孤児院に対して、ますます本気になって行った。

 そしてBBQをニイナに任せ、切り取った木を1箇所に集めた。


「園長どうすんの?」


 グリルが1番に食べ終わり、卓三の様子を見に行っていた。


「ちょっとね、見ていたら分かるぞ」


 そう言って【プログラミング】を使う

 さらに、【活性化】、【覚醒】、【最適化】、等のスキルを使う。


【活性化】

 各能力の限界値を一時的に上昇させる

 MPは使わないが、キャストタイムとリキャストタイムがあり、1度使うとゲーム世界で1日は使えなくなる

【覚醒】

 各能力値の限界に一時的になれる。

 キャラクターレベルMAXで習得可能で、使用時常時MPを使う。

 使用時に一部のバフとデバフを無効化する。

【最適化】

 常時MPを使うスキル1つの消費MP量を激減。

 割合消費スキルは不可で、同時に1つのスキルに対してしか使えない。


 これらを使いプログラミングで簡易的に建物の擬似的な設計図を作るシステムを作る。

 ダイビング用に浮かばれた架空キーボードで作り始める。

 その動きはただの人間が打てるものではなく、下手なシステムだったらエラーが出まくりの事態になる。


「は、はえー!?」


 グリルは人知を超えた卓三の指の動きを見て、感想がそれだけしか出せなかった。

 数分ほどして完成する。

 本来IWOでは、【プログラミング】がなくても建物の設計図を作ることができる。だがしかしそれは、手書き、他人に依頼、特定のクラス習得、などでしか出来ない。そのため、隠れスキル【プログラミング】は特定のクラスを要らず、システムを知っていれば手書き程めんどくもない。更には自分でするため、依頼料がかからず、自分で好きにやりたい放題ができる。

 ただし、現実になるまではそれは分からない。


 最低限の設備を考え、設計していく、そして作り終わったあとでも変更や追加が可能である。


【教室】

 懐かしの木造で広さ10m×6m×3.2m

 後ろは木製の、鍵のついていないフルオープンのロッカーがあり、前には黒板もある。

 窓は広く、壁の半分近くはガラスの窓で、閉鎖されている感じが少ない。

 これだけで、院生たちの取ってきた木材が底を尽きる、そのため、ストレージから足りない分をたす。

 補強のため埋め込みの鉄柱などがあった。

 卓三は雨が降った時の屋根に当たる音、屋根を経て芝生に落ちる音がお気に入りで木造にした。


【体育館】

 壁はコンクリートで33m×15m×13m

 10坪の倉庫と、6坪の教員部屋。

 床は木で、一般的な小学校の体育館で、違いはステージがないこと。


 2階は全員分あり、8畳の1部屋、希望に応じて畳からフローリングーに、クローゼットが1つ、それとちゃぶ台、布団、カーテン等の家具を配置している。


 様々な活躍でポイントを渡し、ポイントを使い欲しい家具やおやつと交換できるようにしている。

 キッチンや風呂場、トイレなどもあり生活に問題はないようにした。

 ちなみに、風呂とトイレは男女、さらに教員用で分けている。風呂は露天風呂である。真ん中に教員用がある。


 電気は、【電鯰の髭】で代用、高レベルプレーヤー向きエリアで、ボスエネミーの【電鯰】を倒すとごく稀にドロップするアイテム。

説明文では、これ一つあれば、ひとつの街の電力を1年まかなえる、と書いてあった。


 水は貯水槽に【深海石(水属性)】を置いている。

これは、卓三の所属しているギルドの所有しているガルピア海溝にある様々な鉱石の1種で、他の水と混ざらない水が重みによって凝縮され鉱石になった、と説明文に記載されていて電流をながすとただの水が湧く、原理は不明である。

 最後に広く見晴らしのいい場所にシステムを合わせてボタンをおそうとする。


「( ̄・ω・ ̄)じー」


 列熱な視線を配るグリル、やはり子どもというものは好奇心旺盛である。


「押すか?」


「いいのか?」


「ああ、もちろん」


「よっしゃー!」


 嬉嬉として喜ぶグリルを見て卓三は和む。

 そして、グリルをお姫様抱っこして地面を強く蹴り自分を天高く空に飛ばす。

 落ちなくするために【電磁浮遊】を使う。


【電磁浮遊】

 スキル名がかっこいいが、多くのMP消費の割に能力は空中に浮くだけっていう地味で使えないスキル。

 そのため卓三は習得して少し後悔していた

 けど、たまに使っている。


「ほえー」


 高いところから見ていて、いい場所がいくつかある。その中でもアレのしやすそうな場所を選び、そこに降りる。


「ほらよ、ここを押せばできる」


 そう言って、近寄りシステム画面を見せ、どこのものか指を指し示す。


「ここか?」


 1番の心配、この画面を他人が見れて押せるか、それは問題がないようだった。


「ああ、そこだ」


 そう言われ、押すべき所を確認し終わってそこを押す。

 そうすると、ストレージにある木材や石材などが次づきと消えて、何も無い草原に建物が建ち始める。

 そして、卓三は【転移】でさっき居たBBQしていたところに戻り、残りを院生を連れてきた。

 その頃には全ての建物が建て終わり立派な場所になっていた。

 グランドはないため、通常の学校と比べたら小さいが、孤児院としては大きかった。


「ここがみんなの孤児院だ。見たかったら見てもいいが少し待ちな、決めてもらいたいものがある」


 そう言ってそのまま、2階に上がり、院生たち残りをために用意したいくつもある部屋の前に行く。


「1人1室好きな所を選びな、って言っても構造とは同じだ」


 そう言われた院生たちははしゃぎながら各部屋を見て行く。

 基本に的には階段に近い所を選びがちになる。

 そこでジャンケンを提案し、部屋が素早く決まった。


「そうそう、和室だけじゃなくて洋室にもできるぞ、やるやつは申し込みな」


 大半が洋室に変更する、それに合わせて洋室にベットとマットレスを置く。

 和室のまま残ったのが、ガイアとゼンとラスだけだった。


「で、いいことをすればポイントを渡す。そのポイントは新しい家具や夜食のおやつなどと交換できるぞ」


 この後、施設全部院生たちによって隈無く探索されたのであった。




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