第3話【出会いはロマンチック?】
「最も高い部屋で」
受付嬢は眉を歪め、見るからに迷惑客を対応しているような様子で返事をする。
それもそうだ。この服装を見るところ高そうには見えない、それどころかそんじょそこらのデパートで買えるようなラフな格好に見える。
これが、ブランドの店ごとを買っても余りが出て、ついでにブランド店も買えるぐらい価値を持っていることを、ただの受付嬢はブランドのマーク以外を見ることはなく、少し雑な対応になる。
「ロイヤルスイートスクワット〜
笑顔で返事をするもやはり真心など感じるはずもない。
「ええ」
主の知らないところでまたやらかす。けど、卓三に知るよしはなかった。その返事に邪気は感じない、邪気は。
「やはり高級ホテル、1番安いのでもこんな広いのか」
「ソウデスネ」
「おい……はぁ、まあいい、金はあるから問題は無い」
オートマタの方を見ると露骨に目を逸らし、ロボット風な話し方になる。そもそもロボットだけど。問題点は少ないためこれ以上言わないことにした。
しばらく読書をして心を落ち着かせ、ルームサービスで夕食を済ませ、寝間着に着替え、寝ることにした。
「寝て起きたら戻に戻るパタンはないんだな。ちょっとランニング行ってくる」
リアルなら朝の運動は満員電車の通勤で十分、だけど通勤しなくていいとなると少し物足りなさを感じる。
連勤の時は、そもそも疲れがあって運動のところではないけど。
ジャージ姿に着替えランニングを行う。
自分で言うのもなんだか、「私は実に可愛い」を体現する。これで不審者が現れないはずがない。そうオートで発動できるスキル【威圧】がなければの話だ。
【威圧】
このスキルは低レベルの相手の行動制限するスキルである、
スキルにはレベルがあり、獲得した時はレベル1で特定条件達成5まで進化し、進化後もレベル1や違うレベルのものを使用出来る。
【威圧】をレベル5で使うとこの街に居るタダの人間は全て等しく気絶をするだろう、だからレベル1で近寄る(半径1m)と体が思う通りに動かせず、卓三を何が強大なものに感じるようにした。
ついでに【隠れ身】も発動する。
【隠れ身】
発動期間中、存在をそこら辺の石に感じさせ、気づかせなくする。
ただし、石でもあえて注目するような人や、その石の存在を一度認知すれば、その人に対する効果はない。
それらを発動し時速30キロのランニングを15分ほどした頃に打撲音が聞こえ、すぐに止まる。
「またとりやがって!」
地価が安い地域に入って少しのところ、比較的に治安が悪く思える所。
路地裏の手前で1人の薄汚れた少年を大柄な男性3人がかりで殴ったり蹴ったりしていた。
薄汚れた少年の手にはパンがあり、その男たちから掠めとった様子。
「あー、これこれやめたまえ」
この状況に適した言葉が思いつかなく教師が言いそうな言葉になる。
「てめぇ!顔がいいことに偉そうにすんじゃねぇぞ!」
頭に血管を膨れ上がらせ怒声を卓三に浴びる。
「ほら、こいつをやる釣りは要らん」
ストレージから数万コインをとり布袋に詰めて怒っている男の方に投げる。
怒りを鎮め、静かにさせる意味合いも含めて多く渡す。
「は?」
突然のことに威勢が消えた男たち。
少年は気絶したようだ。このまま見殺しにしても後味が悪い。
「買うって言ったんだよ。オレが買ったらそれをどうしても問題はないだろ。その小僧にあげてもな」
わかりやすく説明する、理解した男らは「ぐへへ、すいませんね」と頭を下げながら路地裏の奥へと行った、金を忘れずに懐にしまって。
ゲームがリアルになった世界でキャラの性能のせいか五感が研ぎ澄まさせる、奥に行ったはずの男らの声が聞こえた。
『やりー、安モンのパン一つでこんなに貰えるとは』
「プライドもクソもないな。……さてこいつをどうしたものか」
とりあえずこいつを脇に抱え、ホテルに運ぶことにした。
初心者の頃に習得した便利なスキル、【浄化】で汚れをとり、レベル5まで高めた初心者の時にソロ狩り用にしていた【ヒール】で傷を治しておくことにした。
オレは既にホテルの方に「ランニングをする」と、言っていたため、パーとかで無ければカジュアルな格好で過ごせるのだが、流石にいつでも破れそうなTシャツと短パンではいかんだろ、そう思い、オレのお古で【ドキッ!幼なじみとの学校生活!】のクエストで使ってみた【
「ガルルル!」
しばらくして意識を取り戻した少年が突如起き上がり、ベットの上で身を低くし威嚇する。
「そう構えるな」
椅子に足を組み、優雅にサービスのワインを飲む、自然と自分がつけたキャラ設定に沿ぐような言動になる、当然意識すれば思う通りの行動や話し方が出来る。
ワインは強い方ではないけれど、このキャラは毒物耐性が付いている。
これを機にたらふく飲んでろうと思った、どうせ酔わないから。
オートマタはと言うと、私のそばに立って酒を注いてくれている。
「元の服はそこだ。パンはオレが買った、好きにしろ」
「ガルル٩(๑`^´๑)۶ルルル」
少し表情は緩くなったが、それでも威嚇したまま机の上のパンを素早く取り、またベットの上にもどる。
悪くない動きだ、タダの人の中ではな。
「それが嫌ならこれをやろう」
そう言って、生ハムとパクチーを詰めたバケットを差し出す。
パクチーが苦手なのか、それとも毒が入っていると思っているのか、頭を振って手に持っている不格好なパンを食べ始めた。
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