第24話 ポンコツ転校生は真実に迫る

山本「(逆立ちから10分が経過。頭に血が溜まり、顔を真っ赤にした佐藤さんがぜぇぜぇ言いながら、ベッドに仰向けになった。運動すると妙にハイになるタイプらしく、にこやかに微笑んでいる)」


佐藤「やっぱり真実は、いつもひとつだねぇ。名探偵の気分だよぉ」


山本「(次は清々しい達成感で笑う佐藤さん)」


佐藤「山本君って、羨ましいくらいに、青春ラブコメしてるんだねぇ」


山本「はっ、はい? 何が?」


佐藤「きっと山本君にも分かる日がくると思うよぉ。多分ねぇ」


山本「教えてよ! 気になるじゃん!」


佐藤「このなぞなぞは、解けるように出来てるんだよぉ。それも意図的にねぇ。硬く閉ざされた長い時間が解けるように、ゆっくりとねっ――。は、気付いて欲しくて、いつも誰かに語りかけてるんだよぉ。うぅん、ロマンチックだよねぇ。よしっ、私はIROAさんを応援するよぉ。そう決めたよぉ。じゃおやすみぃ」


山本「うぉぉぉぉおおおお!!! 何言ってんの! 何の話? 寝ちゃうの? 話の途中だよね! あぁぁぁぁああ全く分からんっ!」



 ○ ○ ○



佐藤「(朝の5時前。まだ朝日は昇っていない。山本君は床でぐっすり眠っている。私は一睡も出来ずに……沙織ちゃんの部屋をノックした。彼女も起きていたようで、夜の散歩に誘うと、沙織ちゃんは静かに頷いた。家をそっと抜け出す。そして、公園の滑り台の上。少し遠くの町が見渡せる場所にやって来た)」


佐藤「IROAさん、だよねぇ」


沙織「……?」


沙織「今、なんて言ったの?」


佐藤「IROAさん、って言ったよぉ。山本君が大好きな、IROAさんだよねぇ」


沙織「……っ……し…………知ってたの……?」


佐藤「なぞなぞだからねぇ。3年間、本当はずっとずっとずっと、言いたかったんじゃないのかなぁ。私はさっき、このなぞなぞに気付いた時にねぇ、名前が気付いて欲しくて、気付いて欲しくて――苦しいよぉって。そう言ってるような気がしたんだよねぇ。同時に、胸が張り裂けそうで苦しかったなぁ。沙織ちゃんの気持ちがねぇ、痛かったんだよねぇ」


沙織「……………………」


佐藤「(夜明け。朝焼け。遠く遠く、太陽が昇ってくる。黙って私に抱きついてくる沙織ちゃん。彼女は何も言わなかったよ。ただ彼女の涙が、私のTシャツを濡らしていくんだぁ。頭を撫でてあげると、彼女は嗚咽をあげるように泣いた。ずっと、彼女は、ひとりで泣いていたんだろうな……。私には、彼女が背負っているものなんて、到底分からない。分かるはずもないよぉ。そのくらい大きくて大きくて、だからこそ、張り裂けそうになるんだろうなぁ)――このなぞなぞに気付いたから、私は応援するよぉ。もし沙織ちゃんが、悲しむようなことがあっても、私は絶対に沙織ちゃんを守ってあげたいなぁ」



沙織「……あのぉ、お姉ちゃんって呼んでもいい?」



佐藤「それは、どうかなぁ。あははぁ」







【雑談】

沙織ちゃん、抱きしめたくなります。






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