第14話 アホな幼馴染に女子更衣室で監禁された

男子「(修羅場から数時間が経過。僕と佐藤さんは一緒に学校に登校し、いくつかの授業をやり過ごした。何度か話しかけたがタイミングが悪くスルーされている。実際には、無視されていると言える。ご機嫌斜めのようだ。1人で引っ越してきて、スペースデブリが落ち、アパートが崩壊。同居の相手が僕で、その妹と争った。この数日で彼女の人生は一変した。家を失い、男子と同居。僕なんかに彼女の気持ちは到底理解出来ないだろう。分かりたいと思っても、不可能なのかもしれない。そんな中、思ってもみない人物が話しかけてきた。それは水泳の授業が始まる前のことだった。)」


幼馴染「捕獲するっ!」


男子「(更衣室から出て、プールサイドへ向かう途中だった。突然腕を掴まれ、振り返る隙もなく、僕は反対側の女子更衣室の中へと引っ張られた。鍵が閉められ、その正体を確認する――佐々木かえでが仁王立ちしていた。初めての登場に相応しく堂々たる立ち振る舞いで、にやにやしている。つまり、アホだ。彼女もまた水着に着替え終わり、まさにプールサイドへ向かう途中だったのだろう。スクール水着が強調する体のラインに思わず目が向いてしまう」


幼馴染「山本君に話しかける方法が、これしか思いつかなかったっ!」


男子「久しぶりに話す相手に、女子更衣室に監禁される気分が、分かるか? 分からないだろうな。女子たちが着替え終わったこの場所は男性には刺激が強すぎる。甘い香りを吸うだけで、心臓が暴れそうになる。もし、僕がここからパンツをひとつ盗んだとしても、それは僕のせいではないと断言する」


幼馴染「それなら私のパンツを一枚5000円で売ってあげる!」


男子「幼馴染のパンツを誰が買うかっ! 僕とお前はクラスメイトだ。いつでも話すタイミングくらいあるだろ」


幼馴染「転校生とイチャイチャしてると、遠慮してしまう!」


男子「……イチャイチャって……。話ってそれだけですか? 佐々木さんが、女子更衣室に男子生徒を拉致監禁してるのがバレたら佐々木さんは退学ですよ」


幼馴染「私が!? 絶対に退学は、山本君の方! ってか、佐藤さんとイチャイチャの次は、夫婦喧嘩中ですよね?」


男子「僕は、誰にもプロポーズしてません」


幼馴染「バレバレだよー! 山本君が佐藤さんといい感じなのは、クラスの全員が知っているっ! 噂も一人歩きして、同居してるとかなんとかって」


男子「ゲゲッ! バレてる!!!」


幼馴染「ぇええ! リアルだったとは! ってことは、もうやっのですか?」


男子「お前、久しぶりに話しかけてきたと思えばそれを確認したかったのか?」


幼馴染「何回やったの? 佐藤さんはイッタの? 大人しい顔してるけど、どんな顔でイクのっ! 教えろ!」


男子「(佐々木さんがそう言いながら詰め寄ってくる。すでに後は壁)お前、スクール水着で幼馴染を脅迫するなんて、反則だぞ!」


幼馴染「じゃとっとと全部、洗いざらい白状しなさいっ!」


男子「っ! いつの間に胸まで、そんなに成長したんだ。中学生の時はぺったんだったろ!」


幼馴染「さすがは変態君! よくご存知で! 何故か急に成長したのだよ! なるほど、そうか! 佐藤さんのおっぱいに誘惑されたわけだ!」


男子「お前、胸が当たってる! 頼む! それ以上は、近づくな!」


幼馴染「ヤダだよー!」


男子「わ、わ、分かった。白状する。昨日のスペースデブリ事件。あれ、佐藤さんのアパートなんだよ。その時たまたま、僕の家に佐藤さんがいて、母親が張り切っちゃって、家で一緒に住むことになった」


幼馴染「エッチ生活! 性格に似合わずあそこは元気なんだね! ほらほら私を見ても少し……」


男子「ッバカ! お前って相変わらずだな。幼馴染を拉致監禁、脅迫する変質者。国が違えば訴えられるぞ。それに僕の性格は、お前だってよく知ってるだろ? 二次元の女の子が好きなんだ。まぁ最近は、声優さんにも興味が……。それも含めてこの三次元とは全く次元が違う人だ」


幼馴染「キモオタは相変わらずだね。まぁ私は幼馴染として、心配して声をかけてあげたのは事実っ! でも、少しは安心した。やりまくってなさそうだし!」


男子「幼馴染なら、もっと幼馴染らしく振る舞えないのか?」


幼馴染「それじゃ幼馴染の定義を教えて欲しい!」


男子「そこまで言うなら、お前にラブコメの幼馴染が何かを教えてやろう。幼馴染とは、妹や学園アイドルよりも、てっぱん。それでいて、幼馴染の解釈は多岐に渡る。それ故に魅力的。そしてどんな幼馴染にも言えることは、2人だけの共通の思い出を持っていることだ。山や川でかけまわったこと、部屋でお絵かきをして無邪気に笑ったこと。それらの思い出こそが、幼馴染の象徴なんだ。――そして、当時に交わした約束を思い出した時、青春が加速する。やがて気がつくと、どんな境遇にも負けない強い絆で結ばれていく。つまり、幼馴染とは、メインヒロインに負けない。ラブコメ最強のキャラと言える」


幼馴染「意味不明過ぎるっ!」


男子「途中であくびされると、僕だって傷つくんだぞ!」


幼馴染「でも、幼馴染の重要性だけは理解したつもりだよっ! よしっ、決めた! 私が、山本君にとっての最強の幼馴染になってあげるよ!」


男子「っは? はい? それは別に望んでない。話したのはあくまで、ラブコメの話で……。って人の話は最後まで聞けっ!(更衣室の鍵を開けて、スタスタと遠ざかっていく佐々木楓。ヤバイな。ここから一刻も早く出ないと、僕は本当の変態になってしまう)」



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