第159話「ロールアウト」
「それで黒杉軍艦の
「はい、一隻目は拿捕したガレオン船を元に造りましたので、思ったよりも手早くできそうです。二号船、三号船と切り出していただいた黒杉で造って行きますが、こっちはもう少しお時間をいただきます」
シェリーはライル先生の代わりに、辺り一面に書類が散乱している執務室に篭城している。
先生が体調悪そうなので、兵站官としての仕事がこの娘に累積しているのだ。兵站は突き詰めると数学なので、シェリーほど適した人材はいない。武官もそうだが、文官も不足している。
ただでさえ忙しいシェリーに無理を言って申し訳ないが。
カスティリアの無敵艦隊に攻められているブリタニアンへの救援と言っても、船がなければどうしようもない。
本当なら一隻でも多く欲しいところなのだが、贅沢は言えないよな。
船の建造は、時間がかかる。現在うちが使えるまともな母港と造船所はたった一つ。アメリカ軍じゃあるまいし、月刊空母とか夢のまた夢である。
シレジエ海軍は、他に大砲で武装したキャラック船。それにコッグ船が二隻。いまは、自治都市アスロに向けて食糧の輸送に延々と従事している。
そろそろスウェー半島の飢餓も落ち着きそうなので、そっちも戦争に駆り出すとして、アスロからもコッグ船か小型のガレー船ぐらいは何隻か供出させられるかもしれない。
それでも無敵艦隊相手に大海戦をやらかすには、無理がある。
数を揃えるにも策があるが、それまでの時間稼ぎも考える必要がある。療養しているライル先生に心配かけないように、俺も気張って見せよう。
「シェリー。新型の炸裂弾があったよな」
「えっと、実地テストを始めた段階で……安全性の問題があります」
炸裂弾。つまりただの鉄の弾ではなく、弾の中に火薬が入っていて着弾時に炸裂する近代的な弾を作らせてみたのだ。
しかし、とりあえず形だけ作っては見たものの加工が難しく、不発弾になったり逆に中の火薬に引火して暴発したりする危険性が高い欠陥兵器になっている。
「テストも実戦でやってみよう。安心しろ今回は大砲に詰めて使うんじゃなくて、直接使うから」
「直接ですか?」
「うんまあちょっと考えがある。爆弾の供給は海軍優先で、できる限り多くかき集めてスケベニンゲンの港まで運んでおいてくれ」
「ご命令ならば、弾も火薬も必要なだけ送ります。お兄様がエレオノラ公姫と結婚してくれたおかげで、資金面の問題が解消されましたからね」
「もしかして、アムマイン家の資金も製造工場の建設に使ってるのか」
俺が呆れると、シェリーはお兄様グッジョブと親指を立てた。
本当に手段を選ばないな。
「困ったときは嫁の実家の金蔵も開けろ! といいますからね」
「どんな、酷いことわざだ。押し込み強盗みたいだな」
「なあに投資ですよ投資。ちょっとでも金を出させたらこっちの勝ちです。あとはどれだけでも引き出せるので、当面の資金問題は解決です。もともと技術力の高い国ですから、ラインさえできてしまえば増産は容易いです。ご支援いただいたエメハルト公爵にも、あとでしっかりバックはありますから心配しなくていいですよ」
「本当だろうな……」
まあ、新型の船や火薬製造は先々需要も見込めるか。
財布に余裕がないのだ。こうなったらランクト公にも一蓮托生になってもらうしかない。
「といったわけで、弾薬に不足はありません。しかし、海軍に供給を集中させるとなると、正統ゲルマニア帝国軍の兵站支援のほうが弱まりますが」
ちょっと考えるが……そっちはもう、ダイソンの脅威がないから大丈夫だろう。
新ゲルマニア帝国には、もはや指導者もおらず、騎士も魔術師も居ない。要塞街ダンブルグにヘルマンに兵を付けて戻してやったし、あとは、マインツ大将軍にやりくりを任せて掃討戦をがんばってもらおう。
「かまわない、戦術物資の供給は海軍優先で頼む」
「了解しました」
シェリーの報告が終わったようなので、俺は立ち去ろうとすると、ギュッとシャツの裾を掴まれた。
「どうした、まだなにか報告があったか」
「船ができたご褒美は、いただけないんですか」
あれっ、そんな約束してたっけ。
どっちかといえば、船が出来たのは船大工が頑張ったおかげのように思えるのだが、それを言うと今のシェリーはめちゃくちゃ頑張ってるので、そりゃ褒美はあってもいいよな。
銀色の髪がボサボサになっているシェリーは本当に忙しそうだから、邪魔しちゃいけないと思ったから言わなかったんだが、そういう発想をする俺も少し余裕がなくなってるかもしれない。戦時とはいえ、たまには休憩が必要だよな。
ご褒美をくれ……と言われても、特には思いつかない。
「シェリー、一緒に風呂でも入るか」
「はい喜んで」
とりあえず、髪でも洗ってやることにしよう。
シェリーは、どこぞのドワーフ娘のように風呂嫌いってわけではないのだが、身の回りのことに無頓着すぎる。忙しくなると風呂に入らなくなるから、機会を見て誘ってやらないといけない。
※※※
「うーん」
「どうしましたか、お兄様」
子供の成長は早い。ほんの少し見ない間に、シェリーはまた大きくなったような気がする。
具体的にどこがと言うと、背丈が少しと胸辺りの女性らしさを増した。まだシルエットと一緒のサイズぐらいなのに、大人のシルエットよりはるかに胸がある。
というか、シルエットに胸がなさすぎるのか。
なんか、悲しくなってきた。
「あんまり失礼なことを考えていると、温厚な女王陛下も怒りますよ」
「シェリー。お前、読心術まで使えるようになったのか」
心の声を読み取られたかとびっくりした。
そんな魔法あったっけ。
「半分は
「視点の動きだけでそこまで心理を読み取ったのか、名探偵シェリーと名乗ってもいいぞ。あっ、でもなんで後宮のことをお前が知っている」
後宮は、限られたメンバーしか入れない。
お風呂に限っては、開いている時間帯に許可制で、奴隷少女やメイドにも使わせてやるように言ってある。
しかし、後宮の奥の間はプライベート空間で、いくら重用されている奴隷少女のシェリーでも立ち入れないはずだ。
通いのメイドですら立ち入りを制限されてるから、シャロンが自らベッドメイキングしてるほどなのだ。
「女の子はみんな噂好きですから、お兄様の夜の相手を誰がしたとか、ステリアーナさんかオラクルさんがそれとなく話せば、爆発的に広がっちゃいますよ」
「なるほど」
なんというこっ恥ずかしさ。
俺の情事は、王城の方にも筒抜けになってるんだな。リアとオラクルあとでシメる。
「情報の収集と分析は、私の仕事の一つです」
「頼もしすぎるな、わかったからさっさと風呂に入ってしまおう」
シェリー相手に隠し事はできないんだな。
どうせ、小さい女の子から女性になりかけてるシェリーと風呂に入るのは、だんだん抵抗が出てきたなーとか。
俺が憂慮してることも、みんなお見通しなのだろう。
張り合いがあるんだか、ないんだか。もう気にするのが面倒になってきた。難しいことを考えるのは、あとにして風呂でリラックスしよう。
※※※
「今日は静かだな」
「そうなるように、手は打ってありますからね」
シェリーの柔らかいシルバーブロンドの髪を、石鹸を泡立てて綺麗に洗ってやりながら話をする。
俺は、奴隷少女たちの髪を洗ってやるのが結構好きだ。銀とか、金とか、赤銅とか、珍しい髪色をたくさん見ることができる。
シェリーが考えた『清掃中』の立て札は、しっかりと人避けになっている。
こんなに簡単に、お風呂場でばったりと他の女の子が入ってくるありがちな展開を回避できるとは、やはり天才か……と思わざる得ない。
こんなことも思いつかなかった、俺が凡才か……とも思わなくもないが。
そんな感じで、すっかり油断していたので、湯船にいつの間にかお客さんが入り込んでいたのに気が付かなかった。
ふっと振り向いて、おやっと思ってから。
二度見してようやくそこにアレが居るのに気がついて、変な声が出てしまった。
「うわぁ!」
「えっ、なんですかお兄様怖いです」
頭が泡だらけになっているので、目をつぶっているシェリーが怖がってる。
「いや、大丈夫だ。なんか変な人がお風呂に入ってただけで」
「変な人とは、ご挨拶ダナ」
いや、やっぱり気が付かなかったのはおかしいな。青い髪からはニョキッと黒褐色の竜角が突き出てるし、たたまれているとはいえ大きなドラゴンの羽も生えている。
彼女は、竜形拳という謎の中国武術……というのはないか。この世界は中国がないから、まあとにかく『古き者』竜神が開祖の武術を使う、卓越した武闘家でもある。
俺がのんびりシェリーの髪を洗っている間に、気配を消してそろっと入ってきたのだろう。
アレの太い手足には、竜のゴツゴツした鱗が付いているので、ズシンズシン音がしそうなのだが、不思議とまったく音がしない。
技巧ゆえなのか、生物的に忍び足ができる猫のような仕組みがあるのか、今度ゆっくり見せてもらいたいものだ。
シェリーを怖がらせては困るので、俺はさっさとお湯を汲んで泡を流してやった。
眼が開けられるようになった、シェリーはすぐアレに文句を言いに行った。
「清掃中の看板を見なかったんですか!」
ドラゴンの角やら羽やら手足やらがついているアレは普通の人に怖がられているのだが、シェリーは物怖じしない。
アレのほうも、子供が何を言っても何とも思わないようで、歯牙にもかけない。
「看板は見たが、匂いで勇者が居ると分かったのダ」
「匂いって、俺そんなに臭いか」
俺は思わず、自分の腕の匂いを嗅いでしまう。
石鹸の匂いしかしないが、竜乙女のような種族は匂いに敏感なのかもしれない。
「お兄様は臭くないですよ、お父さんみたいな安心できる匂いがします」
「いや、シェリーそれフォローになってない」
ため息混じりにつぶやくと、シェリーは抱きついてきた。俺の首筋に、鼻を押し付けてくる。誤魔化された感がある。
シェリーの親父って、身を持ち崩したギャンブラーじゃなかったっけ……。
俺まだハタチなんだけど、お父さんの匂いってなあ。
少なくとも王城にいるときは、毎日お風呂入ってるんだけど。
「勇者は悪い匂いではないゾ、血と硝煙に満ちた香りがするのダ」
「ハードボイルドかよ、血の匂いが取れてないとか、めっちゃ嫌じゃねえか」
血塗られた手の汚れが落ちないとか、文学的な表現だ。
石鹸で綺麗に洗えば、落ちるはずなんだけど、竜乙女は微粒子レベルに残った匂いを感じるのかもな。
「珍しいことをしているので観察していたのだが、見つかってしまってはしょうがない。そっちに行ってもイイカ」
「珍しい? ちょっと、こっちに来るなよ」
ザバッと、アレは湯船から立ち上がって、こっちに歩いてくる。
珍しいと言ったのは、おそらく石鹸で洗っていることであろうと気づく。あまりにもあっさりと馴染んでいたが、アレにとってもお風呂は珍しいのかもしれない。
リアほどではないが、カロリーン公女ほどの大きさで、先がツンと上を向いていてとても張りと
シャープに引き締まったお腹と、安産型の柔らかそうな臀部。目を背けるのも忘れて、思わず見とれてしまう肉体美だった。
髪の毛と一緒で、下の毛も天然の青色。異世界の種族とは、不思議な生き物だなと感じてしまう。
おぞましい青竜の角、翼、太い手足と、輝くばかりの健康的な美少女の身体とのアンバランスが、なんとも奇妙な、それでいて自然な造形美を生み出している。
一目見て、
堂々と裸体を惜しみなく見せていたくせに、俺がジッと眺めていたら。
アレは意外にも、恥ずかしそうに顔を赤らめて、大きな手で胸を覆い隠した。
「なんだ、平然としてたが、やっぱり恥ずかしいのか」
あまりにも超然とし過ぎているので、少し安心したぐらいだ。
普通の女の子らしい恥じらいもあるんだなと。
「うん、あんまり見ないで。アレの身体は、ちょっと
「んっ? なにが不格好だ。もしかして胸のことを言ってるのか」
胸を手で隠すアレを見ると、そう言っているようにしか見えない。
コクンと頷くので、やっぱりそうなのか。完璧なプロポーションにみえるのだが。
「でっかい肉をぶら下げて、飛ぶにも戦うにも邪魔だろうと、仲間によくバカにされたゾ。私が島で最強の戦士になってからは、言われなくなったけど……」
「うーん」
何といってやるべきか。
基本的には、胸は大きいほうが良いと思うんだけど、それを言うと
「勇者は、胸の大きい女は嫌いカ」
好きだけど、女性を胸で判断するのはいけないことだな。
逆に巨乳を否定すると、それはまた
「良いんじゃないか、胸は子供に乳を与えるものだろう。大きいほうがなにかと良いに違いない」
どちらとも言えないので、好き嫌いへの明言は避けて、意図的に話をズラして肯定的に答える。
政治家の手口である。俺も為政者の端くれだからな。
「そうか、じゃあ良かったゾ」
アレは、大きな青い鱗のついた手で覆い隠すのを止めて、胸を見ろとばかりに突き上げてきた。
いや、良かったじゃねえよ。隠しておいては欲しかったのだが。
羞恥心を感じる意味合いがズレている。文化の違いか。
まあいい、見せ付けたければ見せつけろ。いまさら騒いでもしかたがない。うちもけっこう、混浴文化だしな。
俺が、今日に限って余裕なのには理由がある。
昨晩のことだ、たっぷりとシルエットと夫婦の営みをしたあとに、カロリーンの強襲を受けて朝までたっぷりと搾り取られた。
いつものパターンではあるのだが、二人ともかなり本気だった。
王女と公女、国を背負ってる二人が『夜の出来レース』に遅れをとったままでは問題があるのだろう。
真剣に迫られて、まさか断るわけにもいかず、朝まで死力を振り絞った。
なので、俺は余裕がある。
今に限って言えば、美少女だろうが、美巨乳だろうが、嫁以外の身体では反応しないと言い切れる。
「その泡の出るやつで、私も洗ってくれると嬉しいゾ」
「……まあいいだろう、今日だけだからな」
アレは最初、自分で石鹸を泡立てようとしてたのだが、やっぱり竜の鱗のついた大きな手では、上手く泡立てられない様子。竜乙女とは、なんとも難儀な種族だと、横目で呆れて見ていたのだ。
それで顔や身体を洗うのは、難しそうだったので、俺が洗ってやることにした。
「じゃあ、俺はアレの髪を洗うから、シェリーは身体を洗ってやってくれ」
「えー! 今日は私のご褒美じゃないんですか」
それはそうだけど、俺が身体を洗うわけにはいかんだろう。
「ご褒美は、あとでまとめて払うから手伝ってくれ」
「しょうがないですねえ、お兄様は……」
なんだかんだ言いながら、シェリーも面倒見が良いほうだ。
いそいそと小さいタオルを泡立てて、アレの身体を洗い始めた。
「それにしても、立派な角だな」
アレの青色の髪から生えている二本の竜角。
大丈夫だろうかと思いつつ、石鹸でゴシゴシ洗ってやるけど、黒褐色で太くてたくましくて、とても大きいです……。
「だろう、大きな竜角は、私の自慢できる数少ない部分ダ」
「ふうん」
もっと他に、自慢できるところがいくらでもあろうだろうと思いながら、泡で滑らかになった青髪を手で梳いてやる。
シェリーが、
「お兄様、アレさんに結婚しないかと誘われませんでしたか」
「それなんだよ、よく分かったな」
シェリーの推理力が炸裂する。
王都前での戦闘には参加してなかったのに、見てきたように指摘するな。
「
「なるほどな、理解した」
シェリーは、先生の書斎の図鑑を全部読んでるからか、竜乙女の生態にとても詳しいようだ。
いい大人の俺が、妹に負けているのは情けない。俺ももっと勉強すべきだな。
「よし、流すぞ」
「勇者、どうだろう。私の身体は……」
なにいってんだアレは、と思いつつ、お湯で流してやる。
これからシェリーに、ご褒美をやらなきゃならないのだが、いまさら追い出すのも可哀想なので、おとなしく風呂に入るなら居ることを許そう。
「ほら、終わったからもう湯船で温まっておけ」
「なあ、勇者タケル、私を欲しくはないか。もし、そうならいいのだゾ」
それこの前、断っただろ。擦り寄って来られても、知らんよ。
入らないなら、もう知らない。勝手にしておけばいい。
「シェリー、入るぞ」
「あっ、はいお兄様!」
すでに身体を洗っているというのに、きちんとかけ湯するシェリーはいい子である。
俺は、アレにさっき、かけ湯をせず入ったことを注意しておく。マナーは最初にきちんと教えておくのが大事だからな。
湯船に入ると、俺はとてもリラックスする。
すぐシェリーがスルッと、当然のように膝の上に乗ってくるが、いつものことなので気にしないことにする。
それよりアレだ、かけ湯を覚えたのは偉いけど、入ってきたら当然の権利のように擦り寄ってくる。
お前まだ出会ったばかりだろ、何でそんなに自然なんだよ。
「こんなに女が誘っても、勇者はつれないのダ」
「そうだな、俺はつれない。もう既婚者だからな!」
ちょっと可哀想だけど。俺も、
この手の誘いに乗りまくってたら、切りがないことが分かった。どこかで、明確なラインを引くべきなのだ。
こうやって、アレが思わせぶりに近づいてくる理由も、シェリーが教えてくれたおかげで、ちゃんと分かっている。
俺は、これ以上、絶対に嫁は増やさないと決めたのだ。
「勇者にすでに嫁がいるのは知ってるゾ。竜乙女は、重婚もオーケーだからその点は問題ないのダ」
「いや、こっちサイドに問題があるんだよ」
だから、背中に大きな胸を押し付けてこられても絶対になびかない。
絶対に、絶対に……。
怒涛のおっぱい攻勢に、俺が難儀しているのを見かねたのか、シェリーが口添えしてくれた。
「ちょっと、アレさん。あんまりお兄様を誘惑しないでください!」
「なんだ、ちびっ子には関係ないゾ」
そういうアレに向かって、シェリーはバシャッと湯船で立ち上がって噛み付いた。
小柄なシェリーは、そうやって背伸びしてようやく湯船に浸かっているアレと同目線なのだが一歩も引かない。
「関係大ありです。いいですか、この城にお兄様の奥さんが六人居るのは知ってますよね」
アレがコクンと頷く。
「ランクト公国のエレオノラ公姫も奥さんなんです。これで七人目ですが、これで終わりではありませ。サラ代将や、私たち奴隷少女の中にも希望者はたくさんいます、お兄様との結婚予定は、順番待ちの状態なんですよ!」
「そ、そうなのか……勇者はモテモテなんだゾ」
アレが愕然としている。
本人の俺が驚いてるんだから当たり前だ。
「私たちも、あと何年かすれば成人に達しますからね。算術級数的に嫁が
「コホン、そういうことだ。残念だったなアレ」
たぶんシェリーは、アレを諦めさせるために一芝居打ってくれたのだろう。嘘をつくなら、ここまで大げさに言っておけば返って
さすが、シェリーは頼りになる。
アレは、少し意気消沈気味に肩を落とし、考え込んだ様子だった。
そんなの関係ないと言い出すかと思いきや、論破されたらおとなしくなってくれた。
アレは、凶暴な見た目のイメージより話が通じるタイプなのかもしれないね。
これなら、俺の護衛として置いておいても、トラブルにはならないかもしれない。
「じゃあ、結婚はあとにして、とりあえず勇者と身体だけ結ばれるならかまわないだろう。一回ぐらい減るもんじゃないし、良いゾ」
アレは、しばらく熟考して思いついたように、ポツリとつぶやいた。
なんで精一杯妥協してみましたみたいな言い方なんだよ。何がとは言わないが、ちゃんと減るし!
「それって単なる浮気だろ。ダメに決まってる」
「浮気はダメ……」
やっぱり、アレは勝手をさせたらトラブルの元になりそうだ。
何らかの方法で、首輪をつけておかないと危険だな。
しかし、アレは俺どころか、うちで最強のルイーズよりも強いんだよな。
厄介なものを抱え込んでしまったかもしれない。
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