第80話「登場人物紹介(十章終了時点)」

主人公 佐渡タケル(さわたり たける)


 職業:高校二年生(言語理解チート持ち) 十七歳(現在は十八歳)


 中肉中背、やや低身長で、容姿も平凡でこれといった特徴はない。

 学校では内気で目立たない帰宅部だが、自宅ではラノベ百巻読みの傍ら兵法書や古流剣術書などを読みあさり木刀を振っていた。花火の火薬をほぐして手製の火縄銃を作ったこともある(失敗作だったが)。

 隠れ中二病で、役に立たない知識だけ蓄えている、俗に言う「普通の高校生」。

 異世界転移という絶好の機会に、魔剣の勇者に成りたかった夢を実現しようとするが、転移した先にプレイヤーチートなど存在せず、お気楽ファンタジーでもなかったという厳しい現実に直面する。

 生きるためいろいろと足掻くうち、なぜか多数の奴隷を持つ大商人や騎士や領主、果ては王国摂政になってしまうことになった。


 性格は基本的に他者に依存する面倒くさがりで、力に溺れ易いお調子者。そのため、腰を上げるまでは遅いのに、一度やりだすと止まらなくなり、調子に乗らせると我を忘れてやり過ぎてしまう。

 また、躁鬱気質で他者を驚かせる突飛な決断、行動力を発揮する。

 ただ、この躁鬱気質が彼の本質である為、光でも闇でもない「中立の剣」を授けられた。


『中学校の夏休みの時のエピソード』


 爆竹などをほぐして火縄銃の火薬を作ったが、花火の火薬酸化剤は過塩素酸系で燃焼速度が遅い。鉄パイプを通してパチンコ玉を発射してみたが、爆発させても銃身から玉がポロリと転がる程度で、とても銃と呼べる代物にはならなかった。

 この時にタケルが、子供なりに熱心に調べた火縄銃の構造が、頭のどこかに残っていてマスケット銃の再現に役に立った。


ルイーズ・カールソン


 職業:女戦士(騎士スキル持ち) 二十四歳(現在は二十五歳)


 茜色の瞳で、燃えるような紅い髪をポニーテールにしてる女戦士のお姉さん。

 初対面の相手には寡黙だが、仲良くなるとわりとよく話してくれる。ガタイが大きくて肉体がこれ以上ないほど鍛えぬかれているので見た目ちょっと怖い感じだが、荒くれ者が多い冒険者としては、信じられないほど礼儀正しく優しい人。

 まだロスゴー村に流れてきて日は浅いが、その立ち居振る舞いから尊敬されているようだ。

 不得意な柄物はなく、どんな武器を使っても戦えるオールラウンダー。野営スキルも高く、ロスゴー村における最強の冒険者である(まあ、ドが付くほど田舎のロスゴーに、他の冒険者はほとんど来ないのだが……)。

 戦士としても優秀で戦塵にまみれても美人なのに、勝ったものを反射的に喰らおうとする悪癖があるのは残念なところ。

 頼りないタケルを世話しているうちに、ズルズルと手伝うはめになってしまう。

 タケルの義勇兵団設立の際に、義勇兵団の団長に就任し、辣腕を振るう。

 クーデター終了後、王国の腐敗と騎士道の衰退に絶望したルイーズは、要職の誘いを断りタケルの騎士として納まった。


 ルイーズの物語『万剣ばんけんのルイーズ』


 ルイーズは、元シレジエ近衛騎士団、参事(副団長クラス)だった。

 カールソン家は、二百四十年前のシレジエ王国建国から、代々優れた騎士や将士を生み出している名門武家の家柄で、武家の棟梁である。

 ルイーズも家柄の高さと、その柄物を選ばぬ奮迅ぶりから、騎士見習い、騎士、将士、侍従、参事と近衛騎士団で、異例の出世をしていたのだが、女騎士の出世を喜ばぬ保守派貴族や男騎士に疎まれて、今の近衛騎士団長ゲイル・ドット・ザウス(当時は同じ参事だった)の罠にハマり排斥される。

 そうして、一介の冒険者まで落ちたルイーズは、逃げるようにして誰も知り合いが居ない、ロスゴー村にまでたどり着いた……。


サラ・ロッド


 職業:農家の娘 十二歳(現在は十三歳)


 タケルに言わすと、さらさらの金髪だからサラちゃんらしい。

 大きな農園の娘で、ライル先生から基礎教育も受けられる程度には富農な家。タケルの最初のバイト先。

 彼女が、タケルのほぼ唯一のチートスキル『言語理解』に気がついてくれたおかげで、タケルは農家手伝いで一生を終えずに済む。


 ちょい役ですぐ消えるモブキャラのはずが、ライル先生に教育されている設定辺りから徐々にチートっぽくなる。

 エスト伯爵領の募兵の折りに、ロスゴー村の二男、三女を率いて、ロスゴー村義勇隊を結成。

 義勇兵団の上層部全員にコネがあるのを最大限に利用し、出来立ての義勇兵団の兵長という職を勝手にでっち上げて、人事権の全てを掌握する。

 さすがにどうだという意見がルイーズ団長から出て、ロスゴー村の代官・防衛隊長に無理やり栄転させられて、後方に下げられる。

 今は本人曰く「修行中」らしく、それなりに大人しく代官しているが、イエ山脈鍛冶屋ギルドとの仲介役や輸送を担当したりして、折あるごとに出てこようとはする。


ライル・ラエルティオス


 職業:書記官(中級魔術師(火系は苦手)、初級錬金術師スキル持ち) 二十二歳(現在は二十三歳)


 茶髪の短髪、細身の身体にいつもピッチリとした書記官服を着込んでいる男装の麗人。本人はことあるごとに自分は男だと言ってるが、綺麗な顔も白い肌も女性にしか見えない。

 成長期もすでに終わっており、本気でまったく線の細い女性にしか見えないので、おそらく男の娘ではない。

 家の都合で男ということにさせられた女だったとか、魔術の暴走で性転換してしまったとか、普通に男だったとか、いろいろと妄想は膨らむが、詳細は分からない。

 もう男でいいから、普通に女性の服を着て女として振る舞ってくれればタケルもへんな気分にはならないのに、男装するから注意を引いてしまう困った人。

 周りの人が、そういう態度にツッコミを入れないのは、ファンタジーだからかもしれない。

 ただタケルにとって重要なのは、ライル先生の性別でも容姿でもなく、チート気味の博識の方だったりするので、あまりそこらへん藪をつついて蛇を出したくはないので深くは聞いていない。

 クーデター終了後、タケルの摂政就任にともない、国務卿の地位にいつの間にか就任している。

 まあ、先生なのでなんでもありだろう。


 ライル先生の物語 『不遇の天才チート


 ライル先生の学識は広く、兵法、外交術、博物学、教育学、薬学、有職故実にも通じている。ありとあらゆる知識チートを有している万能の天才、と言ったほうが早い。

 元々が、大学者の家系という教育環境と、家族で自分だけが魔法力で劣っている(あと身体の事情もある)ために、疎まれ廃棄物扱いされた過去のトラウマから、極められる知識を全て吸収するようになる。

 それだけの優秀さを示しても父親には認められることはなく、さらに疎まれるようになった。

 大博士の父親に強い愛憎を抱き、上級魔術師である兄の二人を純粋に憎悪しており、物静かな性格ではあるが、その奥にマグマのように滾る力への渇望と大きな野望を抱えている。

 タケルと出会ったときは、左遷された書記官であったが、ライル先生なら出会いがなくても、ゲイルのクーデターで頭角を表していたに違いない。


ナタル・ダコール


 職業:ロスゴー鉱山の代官(技師スキル持ち) 四十八歳(現在は、四十九歳)


 壮年の渋いハゲオヤジ。今は代官としてロスゴー鉄鉱山の経営に専念しているようだが、もともと鉱山の技師だけあってガタイが物凄くいい。

 女戦士のルイーズとは、また違った肉だるまのような筋肉の付き方で、同性が見ても惚れ惚れする。

 ただ、自慢の筋肉を魅せつけるように半裸で、接客するのは止めて欲しい。


 タケルが鉱山権益を握ってからは、その繋がりでイエ山脈鉱山組合の組合長にまで出世する。

 そのまま引き継いで、イエ山脈の鍛冶屋ギルドとの仲介役を果たし、火縄銃と大砲製造の設計・生産ラインを統括している。

 偉くなっても相変わらず、現場に技師として出かけては、新しい大砲を造りかねている鍛冶屋にあーだこーだ注文を出して煙たがられている。


ダナバーン・エスト・アルマーク


 職業:エスト地方領主(伯爵 のちに侯爵) 三十四歳(現在は、三十五歳)


 でっぷりと太っていて、悪く言えば鈍重、よく言えば恰幅が良い。いかにも貴族って感じのおっさん。ただ腹黒そうではなく、温和な印象を受ける。地位を鼻にかけることもなく、歳が若い平民のタケルにも、気さくに話してくれる。

 タケルにエストの街の土地をプレゼントしたりしてくれるが、実は新商品を生み出す才能を評価しての先行投資。商業の何たるかが分かる、有能な領主。

 凡庸そうな見た目に反して実利主義者で、役に立つ人や物をどんどん取り入れていく進取性と好奇心がある。

 イエ山脈を背景にしたエスト伯領は外敵も少なく、国家鉱山からの間接的な上がりもあって、豊かな土地柄になっている。彼の統治の手腕も大きいのだろう。

 あと、赤いものが好きでアルマーク家の紋章から家具や城の尖塔まで、赤に染めないと気が済まない赤マニアでもある。


 地方貴族には珍しく、王権に対して強い忠誠心と愛国心を持っている。

 おそらくはエスト伯領が、王領と相互に依存する立場だからであろう。後背地のエスト領があっての王領の安定であり、王領あってこそのエスト領の経済的発展であるとはいえる。

 普段は赤いエプロンドレスを着させたメイドとイチャ付いているだけだが、ゲイルのクーデターの際には臨時政府の首班となって戦った。

 戦ったというか、まあ毎度のことで戦場には出なかったが、得意の後方支援を頑張った。


 奴隷少女たち(初期十三人)


 商人の娘が一人シャロン(種族:犬型獣族のクォーター)

 兵士の娘がシュザンヌ、クローディア

 花売りの娘がヴィオラ(種族:ハーフニンフ)

 鉱夫の娘が一人ロール(種族:ドワーフ)

 パン屋の娘コレット

 娼婦の娘フローラ

 物乞いの娘がエリザ、メリッサ、ジニー、ルー、リディ、ポーラ。


 全員が王都シレジエ出身。奴隷キャラバン隊は、シレジエの向こう側から来て、売り物にならない奴隷を連れて、イエ山脈の鉱山に納入する予定だった。


 急成長して商会を取り締まってるシャロン(十八歳)と、硝石を作りまくってるロール(十二歳)、かろうじてヴィオラ辺りぐらいまでで、以下はいまいちキャラ立ちしてない。

 奴隷少女は数がどんどん倍増しているので、果たして何人がまともに登場できるか。


 ちなみに、ニンフが水妖精、エルフが白妖精、ドワーフが、黒妖精である。


 シャロンはオレンジの髪に琥珀色の瞳、犬科獣人の血が入っているので基本的には従順で、群れの安定を第一に考える習性がある。奴隷少女のリーダー。


 ヴィオラは青い髪に青い瞳、大人しい引っ込み思案、物静かそう、ハーフニンフなので差別されがち。

 水精霊の加護があり、ライル先生から初期の水魔法と薬草学の知識を授けてもらった。


 ロールは、赤銅色の髪に褐色の肌、背が低い、我慢強い。ドワーフ娘なので、ワーカー・ホリック(一人称があたし、何故か、ひらがなでしゃべりがち)


 コレット ブラウンの髪、ブラウンの瞳、元パン屋の娘だがどちらかと言うと酒場の看板娘っぽい雰囲気。料理長で、酒蔵を管理しているせいか、ロールと仲がいい。


 物乞いの娘、エリザ、メリッサは調理班の手伝い、二人はクレープの屋台をやりたがっている。


 シュザンヌ、明るい赤色の短髪で、赤い瞳。

 クローディア、髪も瞳も淡褐色ヘーゼル。ルイーズの真似なのか、肩甲骨辺りまで伸ばした髪を、後ろでくくっている。

 二人はルイーズについて、騎士として成長して立派にキャラ立ちした。二人とも、いまは騎士見習いの奴隷少女を抱えているはずだが、まだ名前は出てない。


 奴隷少女(二期生、十三人)


 シェリー(十二歳) ほとんど色素の薄い銀髪の少女。瞳も少し青みがかった銀。

 破産したギャンブラーの娘で、借金のカタに家財道具もろとも二束三文で売られた悲惨な経歴。

 ライル先生すら凌駕する数学的天才を発揮する。

 タケルから聞きかじった半端な経済知識、ライル先生の中世レベルの歴史、商会経営で培った観察眼から、データを集合してまともな経済知識を自分の中で構築して、経済チートとして頭角をあらわす。

 その能力のために、商会のブレーンとしてシャロンに重宝されて、二期生でかろうじて一人だけキャラ立ちできた。


 リアルファンタジーなので、やっぱり奴隷少女たちの扱いは酷い……。


 オナ村自警団


 若い衆二十名。モブで名前もないが、全員が鉄砲を扱えて、大砲を扱える人たちもいる。後半には、この人達こそが、義勇兵団トップのベテランになる。

 リーダーは、お調子者で声がデカいのが取り柄のマルス。村長の息子である。


 職業:伝道修道女 シスター ステリアーナ(リア) 年齢不詳(若くは見える)


 少しウエーブのかかった、淡い金髪の長い髪、やたら胸が大きいのが特徴のシスター。

 当初は、エストの教会に居る修道女であったが、伝道修道女は教区をふらふらして寄進を求めるのが基本的な仕事。リアはその突飛な性格から、教会上層部からもかなり持て余されているらしく、一所の教会にいつくようなタイプではなかった。回復魔法師としてもそこそこのスキルを持っているが、神聖錬金術が得意らしい。

 白地に青のラインが入ったローブを目深にかぶっている。常に街を練り歩いて寄進を求めるちょっとお金にがめつい人だが、さくっと聖水や霊水を創るあたりはすごい。

 あとなんか、最初から距離感をグイグイに詰めてきておかしい。寄進を求める仕事ってのはやっぱりそういうアレなんだろうか。

 教会運営にも金がかかるのは分かるが、かなり豊かな胸元に白銀のアンクを下げてるのは教会もかなり儲けてそうではある。


 勇者認定資格の三級をかろうじて取得しており、タケルを勇者に認定した。そのままタケルと共に「禁呪の秘跡」によって、二級、準一級へと昇格して聖女としての力を得る。

 元から得意だった神聖錬金術がレベルアップで冴え渡り『封印の聖女』の二つ名を付けられるまでになった。


 是非とか、是非もないってのが口癖。おそらくは彼女が、宗教的な運命論者だからである。女神のシナリオで、彼女の世界は動いているのだ。


『リアのお師匠様の話』


 リアは孤児出身で、教会で孤児院を経営していた聖女に引き取られている。

 そのため、古くから教会書庫に入り浸ることが多く、思春期に禁書に触れまくってしまい、あのような残念な形に成長した。

 リアの養親も、神聖錬金術に長けた聖女で、ルイーズと共に『魔素の瘴穴』封印へと赴いて、ゲイルに聖棒ホーリーポールをすり替えられて、あえなき最後を遂げた。


 職業:シレジエ王国宰相 ローグ・ソリティア 五十八歳


 白い髭のおじいさん。実際の年齢よりも年老いて見えるのは、崩壊しかかっている国の執政をささせるため、かなり苦労しているからだろう。

 若くして(タケルから見ると爺にしか見えないが)王国宰相を務める。格式を重んじ、保守的ではあるが、基本的にはかなりまともな愛国者。

 有能ではあったが、政治家すぎた。零落する王権を守るため、各方面で権力を均衡させる妥協を繰り返していった結果、獅子身中の虫をのさばらせることとなってしまったのである。


 ゲイル・ドット・ザウス 三十二歳。


 職業:王国近衛騎士団長、対『魔素の瘴穴』将軍、髭面男爵。

 かつて、騎士団の同僚としてルイーズと団長の座を争った男。その政争は、ルイーズが指揮した瘴穴討伐の失敗によってゲイルの勝利に終わった。

 上にはへつらい、邪魔になるものは潰し、一般兵卒から将軍までのし上がってた切れ者である。

 上司のいないところでは、俺様の嫌な奴。かつて騎士団長の座を争った、ルイーズには特別な思いがあったようだ。


 後にクーデターを起こし、王都の王族・貴族を根絶やしにして、シレジエ王国の国王戴冠を自ら宣言する。

 ゲイルの行動は私欲に基づいたものであったが、名門貴族しか登用されない硬直化したシレジエ王国の構造に風穴を開けた点では、評価される面もあったのかもしれない。

 臨時政府軍にゲイルが敗れるまでは、その行動を支持した人たちも確かにいたのだ。


 ゾンビ男爵 ルーズ・アンバザック・オックス 三十五歳(死んだ年齢)


 アンバザック領を統治していた男爵。

 要塞街オックスで、領民と共に『魔素の瘴穴』と戦い続けて街ごと滅びた悲運の人。

 気がついたら魔素の影響で、ゾンビ・マスターとして転生しており。

 困ったときに救援してくれなかったシレジエ王国を逆恨みして、領民をゾンビにして仕返しするつもりだった。

 着々と力を蓄えてゾンビ・ロード化しており、このまま魔素の影響を受け続ければ、末は魔王にもなっていたかもしれないところを、あっけなくタケルに倒されてしまった死んでからも踏んだり蹴ったり、悲運の人。

 死霊伝説の糧にするつもりが、タケルが勇者化するための糧になってしまった。


 ロスゴー村の少年兵 ミルコ・ロッサ 十三歳


 サラちゃんに連れられて、ロスゴー義勇隊に参加した少年兵。貧農の二男坊でサラちゃんの幼馴染。

 近衛兵と言う形でサラちゃんが強引にねじ込んできて、タケルが伝令として使ううちに善良で気が利く少年と分かったので、重宝して使うようになる。

 周りが奴隷少女ばかりなので、タケルは貴重な男手としてミルコくんを秘書官に育てたかったのだが、サラちゃんがロスゴー村に帰還するときに、何度も慰留したにもかかわらず一緒に帰ってしまった。

 どうもミルコくんは、サラちゃんが好きで着いていったようなのだが、上昇志向に強い相手なので、その密かな恋心は叶わないような気もする。


 職業:王家の傅役ふやく 教育係 新宰相 ニコラ・ラエルティオス


 ライル先生の父親。ラエルティオス家は、代々上級魔術師の家柄であり、ニコラも大博士である。

 壮年のやたらかっこいい茶色の長いヒゲの上級魔術師。

 三人の男の子の子供があり、ライル先生以外の上二人の息子は、王都に勤めていたために、ゲイルのクーデターで死亡。


 一人だけ中級魔術師なため、半端者と蔑んでいた息子だけが生き残ってしまう皮肉な結果となった。

 今でも、ライル先生との親子仲は最低であり、ニコラの宰相派とライル先生の摂政派は王城を二分する勢力となっている。


 職業:王女ハーフエルフ シルエット・シレジエ・アルバート 十五歳(現在は十六歳)


 ストロベリーブロンドの(胸も背も)小さなお姫様。ハーフエルフのためか、かなり容姿は整って美しい。

 シレジエ王国第十七代国王ガイウス・シレジエ・アルバートの庶子で、本人は売女の娘と称している。

 シルエット(影絵)などという名前を付けて養育されたため、かなり屈折している。

 ゲイルのクーデターのあとは、シレジエ王国内で建国王の血を継ぐ最後の生き残りとなる。

 人間中心主義の貴族が多いため、成人しているのに王位継承者として認められていない。


 職業:第三兵団、兵団長 ザワーハルト・モクス 四十歳


 くすんだ銀髪の騎士隊長のおっさん。

 騎士団に居たときはゲイル派であったが、自分がゲイル軍とシレジエ王国臨時政府軍人の間に立って、キャスティングボードを握った立場にあると気がついた途端、イヌワシ砦に篭って、中立を宣言した利に聡い男。

 かつては同輩だったのに、自分より先に出世してしまったゲイルへの嫉妬も絡んでいたりするのだが、まあ本筋とは関係ないのでどうでもいい。

 変な欲をかいたせいで、タケルに砲撃されてしまう。


 クーデター終了後、ドット男爵領を拝領して、一応、ザワーハルト男爵となった。元がゲイルの所領なので、統治には苦労している様子。


 ちなみに、門閥貴族が第一、第二兵団で、第三兵団から第五兵団までが、ゲイルの息がかかった新興貴族や武家による編成である。クーデターの失敗でゲイルが除かれたあとも、その事情はあまり変化していない。


 職業:近衛騎士団参事(副団長クラス) シルエット姫の近衛騎士 ジル・ルートビア 二十四歳


 癖のない黒髪をルイーズと一緒のように、ポニーテールにしている。

 筋肉質だが、小麦色の肌でスタイルは良い。

 スポーツ選手みたいな体つき。

 極度の甘党。


 シレジエ王国建国以来からの、ルイーズの郎党の家柄であり、かつては近衛騎士団でルイーズの右腕として働いていた。

 ゲイルが近衛騎士団であった頃は左遷されていたが、クーデター後は騎士団に復帰し、シルエット姫専属の近衛騎士としてルイーズに推挙されて務める。

 護衛としては有能だが、姫の世話係としてはイマイチである。


 イヌワシ団 頭目は「イヌワシの頭」


 三百人を超える大盗賊団で、イヌワシ砦という三階建の石造りの砦まで築いた王都へ続く街道の盗賊として活動していた。

 しかし、魔素の瘴穴解放の影響が強く、盗賊団は砦を魔物に襲われて崩壊。

 魔素の瘴穴事件終了後、再起を図ってオックスの街の山々を根城にするが、そこでタケルと出会ってしまいまた、襲われて追い出される。

 因縁の対決は、スパイクの街に持ち越されるが、結果は本編の通り。


 「イヌワシの口」と名乗る交渉担当とか、牙とか、アギトとか、眼とか、爪とか、好き勝手にニックネームがついているキャラがいて。盗賊は非合法活動なので、本名では呼び合わないことになっている。

 それなりに分担した組織があって、細やかにたくさんのキャラがいたのだが、ほとんど出せないままに壊滅してしまった。


 メス猫盗賊団


 頭目は、ネネカ。濃い紫色の巻き髪をタラッと足元まで垂らした変わったお姉さん。色気ムンムン。

 タケルのイヌワシ盗賊団に対する悪辣な謀略に若干引きつつも、自分たちの話を最後まで信じてくれたことには感謝してウェイクにそのことを進言した。

 ウェイクとは、古い馴染みのようだ。

 のちに元スパイの経験を生かして、義勇兵団の密偵部隊を構成することとなる。


 職業:悪逆の盗賊王 稀代の義賊 三国に渡る大盗賊ギルドの長 ウェイク・ザ・ウェイク 二十四歳


 柔らかい金髪のお兄ちゃん。

 合成弓コンポジット・アローで、風魔法『反逆の魔弾』により鉄の矢を一気に三発撃ちこむ。

(最高五発までいけるが、その場合は乱れ矢になる)

 付けている緑のローブは風の精霊の加護があり、ローブに向かってくるあらゆる飛び道具の射程をずらす効果がある。

 銃撃の火線ですら、撃ち漏らしてしまう。

 ウェイクを攻撃して倒すには、だから矢をかいくぐり接近戦で倒すしか手はない。

 しかし、ウェイクの身の回りには、常に手練の盗賊が二人伏せているので接近戦の守りも万全だったりする。


 クックっと鳥がなくような妙な笑いをする。

 姫騎士いじりが結構好きだが、慎重な男なので自分ではやらせず主人公にやらせる。


 魔道具のなかでも、呪具と呼ばれる呪われたアイテムのコレクターでもある。毒や、呪いなど、本来は役に立たないと思われるアイテムを、上手く使って見せるのに喜びを感じるタイプ。

 冒険者にはゴミ扱いされる呪具だが、盗賊王にとってはイタズラから暗殺にまで、結構便利に使えるのだ。


 トランシュバニア公国・シレジエ王国・ローランド王国の三国に渡って、協力関係にある領地には盗賊ギルドを置いて裏の仕事を担当し、敵対関係にある領主の領地を襲いまくるのを基本業務としている。

 裏の仕事はあくまで個人的介入であって、国家間の戦争には介入しないのを信条にしている。諸国を渡り歩く盗賊が、国を完全に敵に回してしまうと、命取りになるからである。表の権力と裏の権力の均衡、そこには一定の暗黙の了解がある。

 しかし、強権的なゲルマニア帝国はその不文律を破り、盗賊ギルドの生業にまで手を伸ばしてきたため盗賊ギルドは、どこも帝国とその領邦を敵対視している。


 職業:第四兵団、兵団長 オラクル子爵 オルトレット・オラクル・スピナー 二十九歳


 灰色の総髪、均整のとれた肉体。爽快な言動。


 もともと領地を持たぬ武家出身の清貧な騎士、能力主義のゲイルの元で出世した一人だが、クーデターを起こした段階でゲイルを見限り、配下の騎士隊と指揮していた第四兵団を引き連れて、即座に臨時政府側に参加して子爵領を手に入れた。

 ゲイルのことは嫌いつつも、クーデターで袂を分かつまで従っていた彼は、無骨な見かけよりも柔軟な思考ができる男であるといえる。

 ただ、質素倹約が染み付いているため、領主になってからもまったく城を飾ろうとしないのはちょっと行き過ぎている。


 オルトレットは、一人称がなぜか拙者でござるが、武家出身がみんなこんな喋り方をするのではない。

 よく言えば古風な人なんだろうか。


 魔族 隠形の上級魔術師 カアラ・デモニア・デモニクス 十九歳


 力が弱まり下級魔族しかいなくなったシレジエ地方から生まれた天才魔族。極稀におこる先祖返り、突然変異と言っていい。

 若干十九歳にして、人間界の最上級魔術メテオ・ストライクを会得する。

 人間の国同士の戦争や内紛を利用して、魔素の瘴穴の解放・魔王復活という大目的を達しようと動く。

 隠形が得意なのは、隠れ住んでいる弱小魔族出身であるから。

 人間に化けることもできる。

 魔王軍の大幹部になるのが夢で、策士を気取っているのだが、感情に左右されすぎて詰めを誤ることが多い。

 人間を利用しているつもりが、利用されてしまうこともよくある。魔素溜りの解放方法は彼女が開発したのだが、その情報をゲイルに教えたせいで、ゲイルと通じていた帝国側に流出してしまい、フリードに利用されるハメに陥った。


 一人称は、アタシで、自分をワタクシと言えないあたり、まだ子供なのかもしれない。


 ゾンビ辺境伯 ソックス・ロレーン・スパイク 三十五歳(死んだ年齢)


 ロレーン辺境伯領を統治していた辺境伯。

 領民と共に『魔素の瘴穴』と戦い続けて街ごと滅びた悲運の人。

 気がついたら魔素の影響で、ゾンビ・ロードとして転生しており。

 困ったときに救援してくれなかったシレジエ王国を逆恨みして、オラクル大洞穴に籠もり、魔王としての力を蓄えてから復讐するつもりだった。

 天才魔術師カアラの後援と教育もあり、着々と力を蓄えて魔王化していた。『闇の剣』まで扱えるようになり、このまま魔素の影響を受け続ければ、末は本当に魔王にもなっていたかもしれないところを、あっけなく勇者化したタケルと鉢合わせして倒されてしまった、死んでからも運が悪い。

 ちなみに、彼ら魔王候補は魔物に転生したときに必ず体内に『魔王の核』が発生する。それが、イマジネーションソード『闇の剣』の発生源となっている。

 それを生きた人間の身体に埋め込むなど気違い沙汰であるが、どこかの勇者がやってしまったら案外できてしまったようだ。


 職業:ダンジョンマスター 不死少女 オラクル 三百歳


 白っぽい髪をツインテールに結んで、赤い目に青い肌。

 外見上は、ちんちくりん。せいぜいが十三歳ぐらいで、奴隷少女には背伸びして辛うじてお姉さんぶれるぐらいの見た目しか無い。

 実年齢は三百歳なので、少女っぽい愛らしい身なりは安全を確保するための擬態である。内部はムレムレに成熟している。

 さもバンパイア・ロードっぽい擬態をしているが(血も吸える)正体はエンシェント・サキュバス。いわゆる精気と呼ばれる、異性の心的エネルギーを吸収することで、大きな力を得ることができる。

 精気を吸うときに、なんかエッチい感じになるが、決してR18規程に引っかかるような行為は行われていないことをここに明言しておきたい。この世界のサキュバスは極めてセーフティーな存在で、ご家族の方も安心してご覧いただけるのである。

 しかし、心的エネルギーの精神的な交合であるとはいえ、その過程で稀に子孫繁栄などが起こってしまうのは、致し方ない仕様である。

 ただ、魔族と人間は交配可能とはいえ、異種交配は出来にくいとは言える。


 ダンジョン内部ではチートクラスの高い能力を持つが、ダンジョンの外では制限された力しか使えないが、その制限された力が結構強い。

 例えばマミー無限湧きは、マミー千体湧きとなる。


 職業:第二兵団長 対トランシュバニア公国 前線司令官 ロレーン伯爵 ブリューニュ・ロレーン・ブラン 三十四歳


 綺麗に編みこまれた黒髪を長く垂らし、奥にピンと細く尖った黒い口髭を蓄えたおっさん。

 黒色の微細な細工が施された美的には素晴らしいが、実用性皆無の甲冑に身を包んで、腰には、また金細工が施された装飾過剰な宝剣を差している。

 名門貴族ブラン家出身で、傍系ながら王家の血を引いている。

 王都のクーデターで、ブラン家本流が根絶やしになったあとは、ブリューニュがブラン家当主となり家臣を引き連れてやりたい放題。

 成り上がり者のゲイルへの敵対心から、第二兵団と旗下の騎士を引き連れて臨時政府軍に参加。

 ロレーン伯領の統治権と、トランシュバニア公国との戦いにおける前線指揮権をニコラ宰相より授かる。


 旧ロレーン辺境伯領は、もともとトランシュバニア公国とゲルマニア帝国の国境線にあたり、独自気風の強い土地柄。とはいえ、魔素の瘴穴でその領域は全て壊滅的打撃を受けたのだが。


 門閥貴族の首魁、地方貴族派の代表格。

 バカにバカを重ねた、策士の策謀を台無しにする、マイナスチートの持ち主でもある。

 裏でゲルマニア帝国と通じており、ブラン家当主ブリューニュを旗印にシレジエ王国の継承戦争が勃発。

 その最中にブリューニュは、自身の愚かな采配が元で戦死するが……。


 トランシュバニア公女 公王の一人娘 カロリーン・トランシュバニア・オラニア 十六歳


 亜麻色の長い髪。結構巨乳。メガネっ子。

 青いドレスを好ん着ている。

 かなりの愛国者で、真面目で考え方がしっかりしている女性である。

 遠い親戚筋に当たる同じ王族であるためか、シルエット姫と仲がいい。


 父親の公王とは違い、勇者の庇護下には入ったが、結婚相手はできれば自国民が独立を保つために良いと考えていた。

 シルエット姫が女王として立つ決心を聞いて、状況が許せばそういう手立てもありかと考え直している様子。


 ちなみにトランシュバニアは、ガラス加工が盛んで、ガラス玉やポーションのガラス瓶やレンズやメガネなどが特産。


 ゲルマニア帝国皇太子 フリード・ゲルマニア・ゲルマニクス 真の勇者 影の魔王 金色の獅子皇ししおう 二十歳


 輝くような金色のライオンヘアー、凛々しい顔立ち。

 皇太子の双眸は、青と黄金のヘテロクロミア。


 若獅子がごとき風貌の美丈夫。広い肩肘と引き締まった肉体もさることながら、その存在感の大きさが彼を大きなものに見せる。

 元の世界で言うなら、奴のまとう雰囲気は、特進クラスの後ろの方に座っている『特別な奴』。

 声高に叫ばずとも、ただ目視するだけで人は彼に従う。それだけのカリスマ性を有している。

 ゲルマニアの第一王子、もはや皇帝としての実権を手に入れている。

 力を得ることに、ためらいも躊躇もない。ただ、ひたすらに権力とパワーを欲する。


 「光の剣、オリハルコンの鎧、闇の剣」光と闇が交わったが故に最強に見える。


 職業:ノルトマルク大司教 聖者 ニコラウス・カルディナル 年齢不詳(年齢不詳に見える)


 オールライトヒーリング、全範囲回復魔法の使い手にして、聖遺物『アダモの葉』のレプリカを現代に蘇らせた天才。

 次期教皇候補の一人であり、その実力は伊達ではない。


 銀縁メガネをかけて、黒髪を七三分けにしている大人しそうな青年。

 その実態は、アーサマ教会の中心で男女平等を唱える、おてもやんなホモ大司教猊下。フリードとは利害関係が一致しているので協力しているだけで、自分の「聖者×勇者」の夢を受け入れてくれない彼には不満の様子。


 大司教として明らかにマズイことをやってるのだが、アーサマによると『それもアリ』だそうである。


 職業:ゲルマニア帝国宮廷魔術師 『時空の門』イェニー・ヴァルプルギス 二十二歳


 他は中級程度だが、視線の届く範囲への瞬間移動に加えて、転移魔法という極めて稀有な特異魔法の使い手。転移は、あらかじめ陣を張った場所に十人程度しか送り込めないが、チートレベルを効果的に転移させると、戦局を揺るがす魔法となる。


 グラマラスなボディーに、それはどこのエッチな水着なのかと言う、肌色の面積がやけに多い黒いボーンテージファッションに黒衣のマントを羽織っている。

 妖艶なる容姿である、やけにでかい宝玉の入った杖は強そうだ。


 彼女の使う魔方陣は、古代魔法遺産『試練の白塔』の移動用魔方陣と同質。古代の神聖リリエラ女王国の末裔とか、そういう感じなのであろうがおそらく語られるまもなく先生にぶっ殺されると思う。理由は、上級魔術師だからで十分。

 特異魔法以外は地味な中級までしか使えないので、半ば干されている身だったところを、フリードに実力を見出されて宮廷魔術師まで一気に押し上げられた。

 そのためフリード皇太子には、揺るぎない忠誠を誓っているようである。


 職業:守護騎士 『鉄壁のヘルマン』 ヘルマン・ザルツホルン 三十歳


 オリハルコンの大盾をもった巌のような角刈りの大男、その守りはあらゆる攻撃を跳ね除ける。盾は、そのまま敵を殴りつけることで強力な武器にもなる。

 帝国が誇る近衛不死団一万人の頂点でもある。


 弱点は多方面攻撃、後ろを突かれること。俊敏な動きでカバーしているが、やはり四方八方から食らったらまず負ける。

 そのため戦場では、近衛不死軍団を補佐に使う事が多い。彼らは、皇太子を守りぬく盾である。


 ゲルマニア近衛不死団


 ゲルマニア帝国の帝室に仕える近衛軍団一万人。

 彼らは幼少の頃より洗脳教育を受けており、槍が降っても鉄砲の弾が降っても、恐れること無くその身を挺して、皇太子を守り続ける。

 死ぬと、音もなく交代の者が現れるので、不死の軍団と呼ばれている。

 その上数がやたらおおい、敵にするとかなり嫌な感じである。


 古き者 混沌の化身 一万二千歳(推定)


 オラクル三十階の隠し扉に、三百年間座り続けて、土の彫刻のようになっている美しい女性の形をした何か。

 不死王オラクル本体によると、推定年齢一万二千歳、古き者の中では新株にあたるそうだ。まあオラクル本体も千年足らずしか生きていないので、実際のところはわからないのだが。

 ちなみに、アーサマの世界創聖が八千年前、いかに古いか分かる。


 その行動は混沌そのもの。魔族にとっては恵みの母だが、同時に触れるものに災厄をもたらすおそれ多い狂神でもある。

 タケルたちをさんざん弄んだあげく、魔王の『闇の剣』ではなく『精霊剣』でもなく、前例のない『中立の剣』を与える。

 なぜそんなことをしたのかとは聞くだけ無駄。

 彼女らの行動は、神代レベルの「なんとなく」だから理由などない。あえて理屈をつけるのであれば、刺激に対する反射と考えるといいかもしれない。


 砂嵐の上級魔術師 『砂塵の』ダマス・クラウド 二十六歳


 風系最上級魔法 パーフェクト・ハリケーンが使える。風系特化なので、水系や火系はあまり使わないやりやすい相手とは言えたのだが。

 それ以前に、風を操るために飛行魔法が得意だったのが、彼の運の尽きである。

 自分以上に、上手く空中戦ができる魔術師など居るわけないと過信して飛び上がったところを、カアラとオラクルちゃんに挟み撃ちされて、落下死した。


 ゲルマニア先鋒軍 主将 『敢勇の』ネルトリンガー・ライン・ファルツ 三十四歳


 ファルツ家は、ゲルマニアの名門で何代にも渡り逸材の将士を輩出している。ツルベ川のほとりに、小さいが豊かなライン男爵領を持つ貴族でもあった。

 騎士隊を率いて突撃を仕掛ければ、右に出るものがなく人呼んで『敢勇の将』。ライル先生が工夫した三重の柵を、一気に突破した突撃力はかなりのものだった。

 それなりに強い魔法のかかったフルプレートアーマーで、ルイーズに一騎打ちを挑んだが、バシネットごと頭を叩きつぶされてあえなく戦死。

 人間の戦士が相手なら、十人が束になって掛かろうが絶対に負けなかったのだろうが、彼が相手にしたのは人間の戦士を超えるドラゴンを超えるドラゴンキラーの女騎士だったのだ。


 常に副将、指揮をすれば負けっぱなしの姫騎士 エレオノラ・ランクト・アムマイン

十八歳


 みんな大好き「クッ……殺せ」系、姫騎士。

 綺羅びやかな真紅の炎の鎧に身を包んだ、金髪碧眼の若い女騎士である。

 人呼んで『ランクトの戦乙女』。そうとうな跳ねっ返りとして有名。

 ランクト公の一人娘。アムマイン家は、帝国に豊かな領地を持つ名門貴族であり大富豪でもある。

 ランクト公は、帝国経済の中心地を抑えており、ゲルマニア諸侯の盟主でもあり、かなり地位が高い。

 その公姫である彼女に、表立って意見できるのは皇族ぐらいなので、「なんで公姫が騎士やってんだよ」という感じで、帝国軍上層部では腫れ物扱いされている。

 一般兵卒や、平騎士には好評なので余計に質が悪い。


 心身ともに打たれ強く美しい姫騎士エレオノラは、副将として騎士隊を率いるまでなら問題はないのだが、主将に何かあって姫騎士エレオノラに指揮権が移譲されると大変なことになる。

 常に「突撃せよ」しか言わない彼女は、どうも兵科の特性とか細かい違いを理解するつもりがないようだ。

 誰か注意すればいいのだが、常に護衛の重装歩兵隊(通称 大盾隊)が取り巻いている上に、公姫の彼女より地位階級の高い人は前線に存在しないので、困ったちゃんのまますくすくと成長している。


 緋色の鷹をあしらった紋章のマントを身に着けている。

 それ一つで城が一つ買えるほどの伝説級マジック装備『炎の鎧』の補正がバカ強いため、下手に武器を使うより、殴ったほうが強いのは、本人も周りもまったく気がついていない。

 武器もせめて、高価なマジック装備一本に絞ればいいのだが、どうもルイーズの『万剣伝説』に憧れているフシがある、いろんな得物が使えたほうが良いと考えている様子。

 自分の特性を生かして戦えば十分いけるはずなのに、いろんなものが裏目に出てしまうのは姫騎士の呪いと言えるかもしれない。

 下手に関わると、幌馬車とか引火して燃えるので、戦場で見かけたら避けたほうがいい。


 職業:ガラン傭兵団長 ガラン・ドドル 三十二歳


 ゲルマニア帝国内にある大傭兵団の団長。

 冒険者ギルドからも取り込んで、不正規軍三千を指揮する。

 シレジエ王国側に鞍替えしてからは、五千人を指揮するようになる。

 自らのミスを刻むために、あえて消さなかった歴戦の傷を持つ彼には、癖のある傭兵たちも一目を置いて、その精悍な指揮に従う。


 全身に黒い鎖帷子チェーンメイルを付けており、ずきんを脱ぐとスキンヘッドである。黒い髭を生やした大男。


 職業:将軍 『穴熊の』マインツ・フルステン 六十歳


 齢六十の経験豊富な百戦錬磨の老将。

 いぶし銀のようなシワの深い白髪の御老体。細くて小さな眼をして好々爺の笑いを浮かべ、杖をついてヒョコヒョコ戦場を視察するその姿は、鉄の鎧を着ていなければ散歩中の爺さんにしか見えない。

 慎重派で、『臆病の』だの『凡将の』だの、若い将校に軽蔑されているが、実態は守勢に特化した名将。

 四十年の軍務経験のうち、その六割方を負けているが、それは負け戦ができる将がゲルマニアにマインツしか居ないから後始末に奔走されているのである。

 ライル先生が尊敬する数少ない名将であり、その采配は手堅く、兵の統率能力には秀でたものがある。

 この時代の将軍としては珍しく情報戦を重視していて、その状況判断も的確。

 後詰めの経験がほとんどのため、指揮の積極性に欠ける点以外は、隙のない名将と言っていい。ライル先生の戦術に対して、一歩上回って見せたのは、四十年の経験値によるものだろうか。


 一介の巡察官(帝国の憲兵のような役割の兵卒)から、今上帝コンラッドに才能を見出されて一軍の将にまで登用されたマインツは、唯一の理解者であったコンラッド帝に生涯の忠節を捧げ、その御代の終わりには戦場で死ぬつもりであった。


 凡庸なる上級魔術師たち『ウルリッヒの三姉妹』


 長女ノナ・ウルリッヒ 次女デキマ・ウルリッヒ 三女モルタ・ウルリッヒ 上から二十六歳 二十四歳 二十三歳


 特に目立ったところはない。普通の上級魔術が連携して使えるだけ。

 だからこそ、帝国軍最強の上級魔術師集団であった。

 黒髪の美人三姉妹であり、他の帝国の上級魔術師と同じく登場後すぐに殺された。

 上級魔術師が、ライル先生の前に敵として立ってしまうことは、産まれの不幸としか言いようがない。


 職業:将軍 ラハルト・ヴァン・レトモリエール 二十三歳


 ロレーン攻めの若い主将、ブリューニュ伯爵を抑えきれず、その伯爵も死んだため。

 独断専行の上に敗退した責任を問われて、後に降格処分になる。


 職業:ロレーン騎士団長 男爵 バガモン・ド・カルチャディア 三十九歳


 やたら長いトンガリ兜と、骨董品の板金鎧を着ている貧しい騎士団長。

 ロレーン騎士団、王国派のボス、帝国派のド・マルセ副団長と、騎士団を割って争っている。


 ロレーン騎士団領は、ゲイルのクーデターの際に、臨時政府側派に味方した騎士や将士に、領土を分かつ訳にもいかず、宰相がとりあえず騎士団でまとめて地位だけ高いものを与えた、苦肉の策である。

 民もほとんど居ない乾燥した荒野で、彼らは両国に無視された小さい戦争を延々とやっている。


 エメハルト・ランクト・アムマイン公爵 三十六歳


 交易都市ランクトを有する、世界有数のお金持ち。

 姫騎士エレオノラの父親。娘と同じ柔らかい金髪で、透き通った碧い瞳。均整の取れた細面の美しい顔立ちに豊かな髭を蓄えている、ハンサムな壮年。

 アムマイン家は、ツルベ川の舟運による莫大な交易権益を背景に、ゲルマニア諸侯の盟主として君臨し、その権力はゲルマニア皇室に次ぐ。

 代々のお金持ちらしい気品があり、芸術の振興にも力を入れている好人物。

 帝国の対シレジエ侵略戦争の雲行きが少し怪しくなってきたため、柔軟に王国側にも渡りをつけようとしている様子。

 金と文化の力で、人心を篭絡する狡知に長けた傑物のように見えるが、どういうわけか一人娘の教育には大失敗した。


 ゲルマニア皇帝 コンラッド・ゲルマニア・ゲルマニクス 七十二歳


 齢七十を越える老皇帝、五十年前に『迷霧の伏魔殿』を封印したのはこの人。『試練の白塔』の五十四階まで登り、オリハルコンの鎧と大盾を手に入れた勇者でもある。

 若いころは遠征に次ぐ遠征で、帝国の西の三王国を喰らい、帝国の版図を広げた英雄的な皇帝であったが、年老いて精彩を欠くようになる。

 継承問題に決着を付けることができず、兄妹を力ずくで蹴散らして実権を握った若獅子フリードに良いようにされて、半ば隠居の身となっている。

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