27
こうして黒岩くんと友達になったわたしは、またひとつ交友の輪が広がり更に毎日がキラキラし出した。
黒岩くんはとても気さくな人で、たまに校内で顔を合わすと『おす』と明るく声をかけてくれた。
最初はそんな風に軽く挨拶し合う程度だったけど、ちょっとずつ廊下で二言、三言、言葉を交わすようになっていた。
いつも黒岩くんが、ちょっとした他愛のないおもしろ話を振ってくれる。
わたしはそれが楽しくて、いつしか廊下で黒岩くんを見つけると『あ、黒岩くんだ』と、仲のいい友達にバッタリ会えたような嬉しさを感じるようになっていた。
黒岩くんはとてもいい人だ。
話していてとても楽しいし、なんだか元気になる。
嬉しい気持ちになる。
でも、それはあくまでも友達としての感情だ。
だけどーーーー。
「いく、ちょっとちょっと」
みんながワイワイ帰り支度や部活に行く準備をし出す放課後。
りょうちゃんがわたしの腕をつかみ、さりげなく教室の隅へと引っ張っていった。
そして、キョトンとしているわたしに向かって突然こう切り出したんだ。
「ねぇねぇ。いくってさ、もしかして今黒岩といいカンジ?」
「えっ?」
い、いいカンジ⁉︎
「いや、ほらさ。前にいく、黒岩に告られたでしょ?で、残念ながら黒岩はふられたわけだけど。最近、ふたり廊下とかで会うと楽しそうに話してるから。もしかして、ちょっと黒岩に対する気持ちが変わってきたりしたのかなぁー。と思ったりしたりして、さ」
りょうちゃんがニコニコほほ笑みながらあたしの顔を覗き込んできた。
「ち、ちがうちがう!そんなんじゃないよっ」
思わず声がデカくなってしまったので、わたしは慌てて自分の口をおさえた。
「そりゃ、黒岩くんはいい人だよ?話してても楽しいし。でも、わたしと黒岩くんはあくまでも友達であって……」
わたしが小声で言いながらブンブン手を振っていると。
「じゃあ、黒岩とつき合ってる……もしくはつき合いそう……なんてことはーーー」
「ないないっ!」
わたしが更にブンブン手を振ると、りょうちゃんが『なるほど』というように大きくうなずいた。
「まぁ、そうだろうとなとは思ったんだけどさ。一応ちょっと確認してみたの。っていうのもね、実は今日さりげなーく聞かれたの。あるヤツに。いくと黒岩のこと」
「え?」
「あの2人はつき合ってるの?ーーーって」
「いやいや、つき合ってないよっ。全然!」
「だよね。でも、きっとヤツにはそんな風に見えたのかもしれないねぇー。いくのことが気になって、気になって。もう確かめずにはいられなかったんだろうねぇー」
「ーーーえ?」
りょうちゃんが遠くを見るような穏やかな眼差しで教室の天井を仰ぎ見る。
「いく。わたしは気づいてしまったのだよ。あるヤツの気持ちに。まぁ、本人は至ってフツーに?さりげなく?わたしに聞いてきたつもりなんだろうけど。なんかわかっちゃうんだよねー。そういうのって」
ひとりうなずきながら、しみじみ話すりょうちゃんだけど。
ちょ、ちょっと待って。
「え、えっと……なに?どういうこと?」
りょうちゃんがわたしの横にきてポンと肩を叩いた。
「いく、場所を変えよう。ここからは込み入った話になるから。図書室ならほとんど人いないでしょ。レッツゴー!」
「え?え?」
りょうちゃんに腕を組まれてあれよあれよと歩き出すあたし。
なになに?
込み入った話ーーーってなに??
この、りょうちゃんの言う『込み入った話』というのが、ミラクル続きのわたしに更なる……ううん、これまででもっともミラクルな出来事が起ころうとしている前兆だということを、その時のわたしは知るよしもなかったんだ。
そう、人生史上最大の〝奇跡〟が。
わたしを待っていたんだ。
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