22
今日も天気がいい。
太陽が眩しい。
わたしは青空に輝く太陽にそっと手をかざした。
新しい自分になってから2回目の登校。
不思議。
まだちょっとドキドキはしてるけど、昨日ほどの緊張はない。
むしろそのドキドキは、なんというか……いい緊張感で。
学校に行くことを少し楽しみにしながら歩いているわたしがここにいた。
『おはよう』ーーーー
高杉くんと山中さんに会ったら、挨拶するんだ。
玄関で会えるかな……。
そう考えるだけで、胸があたたかくなる。
自然と目線も前を向く。
なんか、明るい。
視界が明るい。
そして広い。
仕事に向かうスーツ姿のおじさん。
登校途中の学生達。
走ってる人、自転車に乗ってる人、車に乗ってる人。
いろんな人達がいる。
とても賑やかで、そして活気に満ちている。
今まで、ずっと下を向いてうつむきながら歩いていたあたし。
少し顔を上げるだけで、こんなに広くて明る世界が広がっていたなんて。
今まで気づかなかった。
「綿谷さん」
校門近くでポンと後ろから肩を叩かれた。
後ろを振り向くとにこっと笑った山中さんが立っていた。
「山中さんっ……」
やった、会えた!
嬉しい!
わたしはすかさず挨拶をした。
「お、おはよう!」
「おはよう」
笑顔の山中さん。
そしてごく自然と並んで歩き出した。
「あーあ。今日1時間目から英語の小テストだよねー。やだわー」
「ああ……そうだったね。やだねー」
「綿谷さん勉強した?」
「……あんまり。勉強しなきゃとは思うんだけど、なんかやる気出なくって……」
苦笑いで答えると。
「わかる!しなきゃなとは思うのよ。思うんだけどさっ。やる気出ないんだよねー。で、昨日は結局勉強しないで図書室で借りた本1冊全部読んじゃったよー。綿谷さんがおすすめしてくれたあの本。めっちゃおもしろかった!」
え。
「一緒!わたしも昨日、山中さんがおすすめしてくれて借りた本、夜一気に全部読んじゃった。すっごくおもしろかった!しかも最後すっごく感動した!」
わたしが思わず力説すると、山中さんが目を輝かせてわたしの手をガシッとつかんできた。
「だよね、だよね!あの本、ラストちょー感動だよね⁉︎ 泣けるよねっ⁉︎」
「うんっ。泣けた!」
わたしも大きくうなずくと、山中さんが立ち止まってわたしの手をブンブン振りながら嬉しそうに言った。
「綿谷さん、わかる人!!いやぁ、嬉しいっ。わたしあの本すごい好きで。前に違う友達にもおすすめしたんだけど、なんかその友達はそうでもなかったみたいで。なんて言うの?こう……その感動を共感しあえない寂しさみたいな?わたし的には、映画化とかになってもいいんじゃないか?ってくらいイチオシの本だったからさ!だから綿谷さんがこの本の良さをわかってくれて、なんかすっごい嬉しいわ」
山中さんが興奮気味に一気にしゃべる。
そんな楽しそうな嬉しそうな山中さんを見て、わたしも嬉しくなった。
「うん。ホントにおもしろかったよ。わたしもあれは映画化になっても絶対いい作品になると思う。文章の表現っていうか、言葉がキレイだから、すごくその情景や風景が目に浮かぶっていうか……。映像化したらきっとキレイだろうなぁって思ったよ」
「それそれそれ!!まさに綿谷さんの言うとおり!わたしも同じこと思ってた。映画化したら絶対いいよねっ」
「うん!いいと思う」
わたしが笑顔で言うと、山中さんがキャーと足をジタバタした。
そして、ひと呼吸おいて山中さんが楽しそうに言った。
「あー。嬉しくて思わずテンション上がっちゃったよ。で!綿谷さんに教えてもらって借りた本!あれもホントおもしろかったー!次が気になっちゃって、どうなるの?どうなるの?って一気に読んじゃったよー」
「よかったー。嬉しい。わたしもあの本大好きで何回も読んでるの。あれ、毎回思わぬ展開になるからなかなか先が読めなくておもしろいよね」
「そうなの、そうなの!あれも映像化してもおもしろそうだなー。でもあれは、どちらかと言うと映画化よりも……」
「「ドラマ化!」」
ふたりの声が同時に重なった。
山中さんもわたしも立ち止まって手を握ったまま大笑いしちゃった。
笑い過ぎて、涙が出てしまう。
嬉し過ぎて、涙が出てしまうーーー。
きっとこれが、〝友達〟ーーーーー。
「おいおい。朝っぱらから立ち止まって手握って大笑いして。おまえらなにしてんだ?」
近づいてくる男子の声。
この声は……。
ドキドキしながら振り向くと。
そこにはカバンを肩にかついだ高杉くんが立っていた。
た、高杉くんだ!
ドキンと胸が大きく鳴った。
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