21
ピチチチ……。
朝の光と小鳥の声。
目覚ましが鳴る前に目が覚めた。
ゆっくりまぶたを開け、天井を見る。
いつものわたしの部屋の天井。
いつもの朝の風景ーーーーー。
ガバッ。
わたしは飛び起きた。
そしておそるおそる自分の顔を触ってみた。
ペタ、ペターーー。
細っそりした顔の輪郭。
胸がドキドキ鳴っている。
昨日と同じ。
そのまま二の腕や太もも……ありとあらゆるところを触ってみる。
どこもかしこも、すらっと細っそりしている。
「……はぁ。よかった……」
思わず安堵のため息と共に言葉が漏れた。
昨日、新しく別人に生まれ変わったわたしの姿は、ひと晩寝たあとも変わらずそのままだった。
夕べは、仕事から帰ってきた新しいお父さんとバイトから帰ってきた新しいお姉ちゃんともふたことみこと言葉を交わし、みんなで夕飯も食べた。
見知らぬ顔ぶれにわたしひとり緊張していてあまり食べずに終わったけど、家族のみんなはそんなわたしに気づくこともなく……というか、特に気にすることもなく夕食も淡々と終わった。
弟の翔平は、大皿に盛られたおかずをモリモリ食べ、お姉ちゃんはバイト先でのちょっとしたおもしろ話や愚痴なんかを時々話し、お母さんはそんなお姉ちゃんの話を聞きながらお父さんの空いたグラスにビールをつぎ、お父さんはそのビールを、おかずをつまみながら美味しそうにゴクリゴクリと飲んでいた。
夕食のあと、わたしはいつものように歯を磨き、お風呂に入り、早めに自分の部屋に戻った。
自分の部屋がいちばんホッとする場所だ。
だけど、とりあえずこの新しい家族のみんなもいい人達の気配だ。
たぶん、なんとかやっていけるような気がする。
わたしはベッドから下りると、静かに鏡の前に立った。
鏡に映るわたしの姿は、昨日のあの可愛い女の子だった。
いや、他人のような言い方だけど、これはわたしなんだ。
ちょっと寝グセがついてても、パジャマ姿でもやっぱり可愛い。
「……すごい」
思わずつぶやく。
ちなみに、わたしの部屋はなにも変わらないけれど、タンスの中やクローゼットの中はガラッと変わっていた。
今までの地味で大きいサイズの服など1枚もない。
小さめの華奢なサイズの可愛い服がいっぱい入っていた。
昨日の帰宅後は、モコッとしたフード付きの可愛い部屋着を着た。
このパジャマも、白地に淡い色のさくらんぼがプリントされていてとても可愛い。
こういうの、ずっと着てみたかった……。
なんだか胸がじわっとして、ちょっと目頭が熱くなった。
なんだか昨日から、ひとつひとつの小さなことに感動する。
ありがとうーーーー。
わたしは、鏡に映る自分の姿を見ながら心の中でつぶやいた。
ピピ、ピピ、ピピーーー。
セットしていた目覚ましが鳴った。
支度しなきゃ。
学校だ。
わたしは歯を磨きに洗面所に向かった。
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