4

気がつくと、わたしはとある雑居ビルの屋上に立っていた。


なんでここに来たのか、どうやってここに来たのかわからない。


屋上の手すりから下を見る。


人や車が小さく見える。


周りを見回すと、近くに学校も見える。


さっきまで、あそこにいたんだ……。



教室での出来事が蘇ると、わたしは激しい吐き気に襲われた。


乱れる呼吸を整えようと、空に向かって大きく息を吸った。


澄み切った青空。


ぽっかり浮いている綿あめみたいな白い雲。


キレイだなぁ……。


空を見上げていたら。


また、ポロポロ涙がこぼれてきた。


わたしって、なんだろう……。


こんな時に慰めてくれる友達もいない。


ホントにひとりぼっちだ。


味方になってくれるのは、血の繋がっている家族だけ。


なんかそれって、すごく寂しい。



なんだか、わからなくなったよ。


わたしが生きている意味。


もう、学校には戻りたくない。


憧れていた高杉くんにも、もう二度と顔なんか合わせられない。


もう、いいよ……。


なにもかも。


デブなのも、可愛くないのも。


もう、どうでもいい。


なんだかふわふわした気分になってきた。



ピチチチ……。


頭の上では、小鳥が楽しそうに空を飛んでいる。


いいなぁ……。


楽しそう。


わたしも、空を飛びたいなぁ。


わたしは、そっと手すりに足をかけた。


とっても空が近い。


なんだかあの雲に届きそうな感じだよ。


なんか……飛べそうな気分だ。


一歩進めば、そこはもう空中。


なんか変な感じ。


下を見れば、こんなに自分は高いとこにいるのに、ちっとも怖くないの。


むしろ、気分がよくなってきた感じ。


なんだか、あの鳥達と同じように、自分にも羽があるような気がしてきたの。


太陽がおいでって呼んでるみたい。


………今、行くよ。


わたしも飛ぶよ。



お母さん、お父さん、お姉ちゃん、翔平。


さよなら。


わたし、もうひとりでこの世界にいるの、疲れちゃったよ。


空は、どこまでも広くて、自由で。


とっても楽しそうだから。


飛んでいくよ。


さよなら、高杉くん……。


優しくしてくれて、ありがとう。



みんな、さようならーーーーーーー。



タン。


わたしは、静かに足場を蹴って。



そして、空へ飛んだ。








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