第14話
「……なぁんだ。たどり着いちゃったのね」
黄恋春はそういいつつ、私がここにやってきたことに驚きもしていない。その証拠に、その口元に浮かぶ笑みが崩れる事はなかった。
その足元には、両手足を縛られた土岐湊がいた。
「輝……!」
「湊……ちょっと目閉じとき」
「ブラフは?どうしてここがわかった?いつから私は目をつけられていたのかな?迎えの連中が来るまでどうせ暇だろう。教えてよ」
「誘拐の懸念がある人間が姿を消したって連絡。間髪入れずにそれらしい車が走り去るのが目撃される……まるでそいつを追っかけてくれって言わんばかりや。
走り去る車がブラフやとした時、誘拐した犯人と湊はまだ校内かその周辺にいる可能性が高い。やけど、自由を奪われた人間一人を抱えている奴なんか目立って仕方ないからな。必然追手の目を外に向けさせている間に迎えを待つか、人気が完全に絶えてから運び出すか、そもそも本人に動いてもらうの三択や。
最後は、この場所を知っている、湊から信頼を得ている、私がたんなる転校生じゃないって知りえている可能性があるの三つを満たす人物やと……」
「なるほどね。お見事!大正解!」
「余裕やな?私に見つかった程度では困らんか?」
「またまたご明さ……」
つ、とは発音されなかった。その言葉を発する前に、私が投擲した飛
「……悪いけど、気に入らん相手と会話する気は無いねん。そのままだまっといてや」
結局、何の迷いもなく人の命を奪い取れる自分に絶望しながら、私は湊の拘束を解こうと近づいた。
「残心、って日本の武術の初歩じゃなかったか?」
とっさに、後方転回で距離を取ったが、遅かった。黄が手にした得物が、私の背中に長い傷を刻んでいった。痛みに思わず呻きながら膝をつく。
「頭かち割ったったのに……⁉」
「……
死霊魔術。人畜の亡骸に魔術によって疑似的に作成した魂を降ろし、死してなお活動できる使い魔とする術のことだ。
「なるほどな……他人の死体やなく生きた自分に死霊魔術を仕込んでおいたんか」
黄は返事の代わりに長い蛇のような舌を見せてくる。そこには、びっしりと死霊魔術の励起呪文が刻まれていた。
「まさかいきなりこいつを使う羽目になるとはね……日本のくノ一には恐れ入るよ」
そういいながら、黄は苦無を眉間から引き抜く。傷から血は一滴も出ていない。
「さぁ、私を殺して見せてくれ」
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