堅狼はそびえ立つ、蒼白の狼は咆える
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少し時間が飛んで、八月の第一週。
とある情報番組が行われていた。
期待の新生現る。
そこには、蒼く白い体毛のようなものに覆われた狼が移っていた。
その狼が魔術師達を蹴散らすシーンが流れる。
狼の姿をしている魔術師は若干、十八歳にして魔術の高校に通う男子学生。
そして、四名家の一つ
デビューする前から取り上げられていた。
そして今日、
第一戦は
世間が注目するのは勝敗ではない。
国内戦での勝敗はほとんど着かない。
代表者が負けることが滅多に起こらないためである。
その特性上、派手な結果は残りにくい。
注目するのは、新規に参入した魔術師が生き残れるのかどうか。
初出場の魔術師は非常に狙われやすく、複数人の魔術師がその相手をする。
大体の魔術師は生き残れずに姿を消してしまう。
しかし彼は違った。
普通の魔術師でも生き残る事が難しい国内戦で、向かい来る魔術師を倒して彼は生き残った。
そんな派手なニュースは日本中に広まった。
魔術師が戦い合う明確なルールが存在する競技、それが国内戦。
評議会の魔術師が特殊な会場を用意して行う大規模な催しである。
団体戦で行われ、各一人代表者を立てる。
勝敗はどちらかの代表者が倒れた時に決まる。
人数は最低二十人、対戦する際はどちらも同じ人数に合わせる。
世間でも広く知れ渡っており、魔術の世界から離れてしまっても、国内戦や展示会を見る人は多い。
開催中は解説付きの特別番組が組まれるほか、自分自身が魔術を使って視界を共有することで直接見ることも出来る。
日本の国内戦は毎年行われている。
全部で九回。
四名家自体が管理している
ホーム&アウェーでそれぞれ一戦ずつ。
その市に住む魔術師なら誰でも参加可能である。
五月に始まり、八、十一、二月でシーズンを終える。
年に八回行われるが、戦わない組み合わせもあるので、一シーズンで全部の対戦は実現しない。
そして大晦日に魔術師なら誰でも参加できるのが一回。
ルールは周一達が行った新人戦に、国内戦のルールが追加される。
・制限時間が一時間であること
・魔術の循環が出来なくなること
・書き換えられた世界のルールにより死なないこと
魔術師達は己が技をここで磨き合い、競い合う。
国内戦に参加する魔術師の目的は様々だ。
目立ちたい者、国内で最強を自負する者、本番の展示会を見据える者、自分の実力を知りたい者。
ここで結果を残した者は後のスターとして期待される。
そんな戦いは世界中でとても人気がある。
もちろん日本でも。
なせそこまで魔術に人気があるのか。
それは十二年に一度行われる評議会主催の展示会にある。
評議会の本部がある魔術師の島で行われる。
十二個の門を通り抜けた者に与えられる魔宝師の座を掛けた戦い。
世界から名のある魔術師達が集結する。
そこには浪漫がある。
魔術師として生死を掛けた戦いが行われる。
勝者には最強の座を、敗者には死を。
ルールはあるが現実は甘くない。
展示会に出場する魔術師達は後悔がないように覚悟して参加する。
展示会での人の命は丁寧に扱われるが魔術は別だ。
生き残れなかった魔術師は、魔術師として死ぬ。
二度と国内戦にも、展示会にも参加することは許されない。
人によっては死より重い。
この戦いで負けた者は、生涯魔力の循環が出来なくなる。
それは事実上の引退宣言でもあり、魔術師にとって死そのものだ。
最強の座を巡り、日々新たなスターが生まれ、そしてこの展示会で散っていく。
そんな戦いに人々は魅せられ、酔いしれる。
そう、この世界は評議会と魔力が支配する世界なのだから。
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