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久しぶりに見るな志津河の魔術。
志津河の固有魔術「
今実際にやったように、水の円盤に彼女の手が触れた時に出る波が魔力に反応して水の円盤に雫として浮かび上がる。
水の円盤はその有効範囲にある魔力を探知する。
やろうと思えば世界全体を探知することが出来るらしい。
なぜそんな反応が起こるか気になって本人に聞いたところ、私がそういう世界を作ったの。当たり前のような顔をして言う。
だが、そういう世界を作って魔術を使う人が身近にいたから納得した。
師匠もその一人だから。
師匠も言っていた言葉を思い出す。
「その世界を作るには、この世界の法則には逆らえない。そこで魔術を使って無理やりやる。その瞬間だけ一瞬でもいい、そういう法則を作る。作るって例に上げたけど、法則は書き換えるなり、騙してもいい。魔力の素の強度と色が大きければ、大きいほどより世界に干渉しやすくなる。魔術で世界を飲み込むことが出来れば、それは魔術として成立する。この世界の法則を無視出来るほどにね」
志津河の魔術は水滴が水面に落ちた時に発生する波が魔力に反応する世界を疑似的に作って行ってる。
志津河の魔術の素の強度、透明度、色どれをとっても最高に近い数値にある。
最高の原石を師匠の下で磨いた結果、あり得ない魔術の展開速度で世界に干渉出来るようになった。
まだ、この魔術を師匠の所以外では使ってないのと、仕組みまでは分からないはず。
でもこの魔術を近くで見ただけで分かってしまうだろう。
凄い魔術だと。
世界にも百人未満しかいないと言われている魔術の頂点。
そんなやつが俺の相棒として横にいる。
俺も魔術の準備を始める。
開始の合図があった時に、魔力を循環して強化魔術を発動する。
志津河が終わったよ、と声をかけてきた。
「不自然なところがあった。そこだけ人の配置が少ないの。多くても九人しか会うことないからこの方向に進んでみよう」
と提案してきた。
別にとどまってる理由もないし、俺は行こうと言った。
火鉢もいいわと返してきた。
火鉢家の屋敷の周りは森に囲われている。
整備されていたのは車が通る道だけだった。
志津河が示したのは森。俺たちは志津河に従って屋敷へ進んでいく。
***
暫く歩みを進めると、志津河がそろそろ一人接触するように二人に伝える。
周一は魔術の準備をする。魔力をいつものように十本に分けた。
そうして待つこと、二三分。
目に見える所まで一人の男がやってきた。
周一に焦りはない。
その強化魔術を見て、循環にむらがあることを見抜いていた。
タイミングを見計らって、周一は走り出す。
周りは木に覆われていて、地面も平らではない。
だが、そんな場所でも周一は普段通りに進む。
相手は魔術を展開して周一に攻撃するが、周一はそれを冷静に横にずらす。
そして手が届くほどの距離に詰め寄った。
周一は相手の強化魔術を見て一つの感想を抱いていた。
意外と火鉢の魔術師と言え、循環、強化魔術に隙がある。
循環のタイミングが微妙にずれているし、強化魔術の編み込みもそこまで丁寧じゃない。
あの二人を基準にするのはまた違うのか。
新人戦の時に出ていた、同級生の
その二人の循環を見た周一の感想は循環、強化魔術が上手い。
移動しながらでも循環の間隔が変わらない。
強化魔術はしっかり編み込まれている。
二人とも固有魔術持っているというのもあるかもしれない、それでも周一は上手いと思っている。
周一は少しだけ魔術師の見方を変えるのであった。
周一は相手の循環が弱くなると同時に、殴りつける。
とても短い隙だが、周一は見逃さない。
拳を握りこみ、丁寧にそのタイミングを狙う。
周一の拳が、魔術師の顔面を捉える。
そして、相手はその場に倒れた。
華燐はあまり驚いていない。
新人戦の時に直に触れて分かった。
あの時は全然わからなかったけど、二回目なら分かる。
なんであんなに弱い光、強化魔術だけで倒せるのか。
循環の隙、強化魔術の隙間を狙って打っている。
それを実行できるほど実力にも差があるということ。
倒れている相手の強化魔術も見事である、だがそれは彼から見たらまだまだ甘いのだろう。
そんなことを思いながら、周一に声をかける。
「さすがね、あの時の魔術は見せてくれないの?」と質問をした。
周一は素っ気なく答える。
「待ってくれ、今は準備中だ。そんなこと気にしないで、先行くぞ」
華燐の疑問はまだ晴れない。
確かにあの体を巻くように出てきた光の輪はまだない。
私が最近習い始めた「
華燐はそんな適当なことを思いながら、周一の後ろをついていった。
***
ほとんど会話はしなかった。
俺は徐々に魔力の本数を三十に増やして、相手と戦った。
山場という山場には遭遇していない。
あの後に三人、六人と戦ったが、苦戦はしなかった。
ほぼ、循環と強化魔術の隙を突いて倒して行った。
魔術を使って倒したのは一度だけ、一人で対応した。
志津河に従って進んでいくと森を出て開けた所に着いた。
華燐がもうそろそろ屋敷に着くわね、と言った頃一人の男が俺たちの行く手を阻むように立っているのが見えた。
中年の男、黒い短い髪に、赤い瞳。
体格は良く、背も高い。
その男が名乗った。
「早かったな。俺は
その後、撥は空中に飛び魔術を使う。
いきなり、自身の固有魔術を。
彼の足元に炎が現れて、次第にその炎に体が包み込まれていく。
その炎は顔に、足に集中していく。
やがて炎はある形に纏まった。
顔は天狗の面のような形に、そして足は下駄の形に。
それは、天狗の面と赤い下駄。
火鉢の三天。
固有魔術、
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