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 話が終わって、周一しゅういち志津河しずかは客室に案内された。

 客室に入ってから特に会話もなく、二人は部屋にある椅子に座ってしばらくぼーとしていた。

 そんな周一は一人思っていた。

 でもありがたい、あの釜錣かまてつ ばちと戦える。

 火鉢ひばち 赤華音あかねが、魔宝師になった時にいた側近の一人。

 魔宝師になれたのには、三人の側近の存在が大きいと言われている。

 展示会を生き残った猛者。

 そして火鉢の三人の側近には、火鉢ひばち 赤華音あかねが魔宝師になる前から異名が付いている。

 その一人、釜錣かまてつ ばち緋天狗ひてんぐと呼ばれている。

 釜錣は火鉢家の分家に当たり、魔術の世界でもそれなりに有名である。

 釜錣の魔術は火鉢家のように脚部全体の強化ではない。

 足の部分に特化した強化魔術をする。

 今の俺がどれだけ戦えるのか、他の人には悪いと思うがこの人にしか今は興味ない。

 そして周一は自分の中で、気持ちの切り替えを徐々にしていく。


 暫くすると、華燐がちょっと早いけどお昼の用意が出来たから一緒に食べましょ。

 と言って、使用人と一緒に二人がいる客室に入ってきた。

 そして、三人挨拶をして一緒にお昼を食べる。

 会話は特になく静かにお昼を食べていた。


 お昼の食事が終わったころ、華燐は二人に質問をした。

「どうして、二人はそんなに魔術師になりたいの?」

 そう聞かれた時、周一が先に答えた。

「師匠に恩返しをするため」

 そして続けて周一は少し長くなるけどいいか?と聞いて、華燐からいいよと返ってきた。

「俺は師匠に会ってなかったら赤色高校にも入れないし、魔術師なんて夢のまた夢だ。さらに魔術に関われるかも怪しい、俺の魔力の素はそんなレベル。でも師匠のおかけで、魔術師を目指せるくらい強くしてもらった。師匠と知り合ったのはほんと偶然、たまたま俺に声をかけてくれた。本当に感謝しかない。俺はまだ、ただの学生で何もできないけど何かしらでこの感謝を返したい。だから俺は魔術師になる」

 次は私ね、と志津河が話す。

「私は正直そこまで魔術師に執着はないわ。でも本人の前で何回も言ってるけど、周一を魔術の世界で成功させること。そのために私は魔術で力になる。私も師匠に色々教えてもらった。その力を使って私は師匠に恩返しもする。魔術師になっても、ならなくても同じ、どんな時も周一と師匠の力になる」

 華燐は二人のその言葉を聞いて、私は人前であんな堂々として何で魔術師になりたいか言えなかった。

 母の魔術を一目見た時に、私もああなりたいと。きっかけはそんなことだった。

 たったそんなことと自分で思ってしまう。

 二人の覚悟とその信頼関係を聞いて、羨ましいと同時にそういう事を言い合える友人が欲しいと、一人思うのであった。

 二人ともすごいのね、と華燐が感想を言うと。

 二人は、別にそうでもないと、別にそうでもないよとそれぞれ返してきた。

「あと、気になったんだけど。今回なんで志津河も参加しようとしたの?魔術に自身があるなら新人戦も出ればよかったのに」

 華燐が志津河に質問をする。

「近接が苦手なのと、魔術に関しては大雑把なの。だから相手を狙うとか細かい魔術は苦手で」

 志津河は恥ずかしそうに答えた。

「そしてたら、広範囲に魔術を展開すればいいじゃない」

「そうね、でも後で見せれると思うから、その時教えてあげる」

 そんなやり取りをして昼の時間は過ぎて行った。


 昼食も済み、休憩も終わった。

 周一達は今、火鉢の屋敷から車に乗って入ってきた門の入り口に向かっていた。

 周一と志津河の評価方法の確認だが、入り口から屋敷までの距離で評価される。

 気絶もしくは、強化魔術が解除されたらそこで終わり。

 その場所からの距離で決まる。

 一応制限時間として、日の入りまでを条件に付け加えられた。

 しばらくして入り口に車が着いた。

 そして三人は車を降りる。

 車を運転していた使用人の鍵本かぎもとさんも降りてきて、皆に話始めた。

「特に合図などはございません。ここから、開始となります。それでは、華燐さま、お二人ともご武運を」

 そう言って鍵本さんは再び車に乗って、屋敷の方へ戻っていた。

 テストの開始だ。



 周一は最初に志津河の名前を呼んだ。

 そうして志津河は魔力の循環を始める。

 志津河の前には丸い水の円盤が現れた。

 大きさは両腕を広げたくらい、厚さは紙くらいでとても薄い。

 それは透き通った青色をしている。

 志津河はその水の円盤に触れる。

 すると、その触れた箇所を基準に波が発生する。

 まるで水滴が水面に落ちたようにその波は広がる。

 そして志津河は両手を前に組んで言う。

「私を導いて」

 その瞬間、彼女は青く輝きだす。

 輪洞りんどう 周一しゅういちが目指す輝きがそこにある。


 華燐は静かにその様子を見ていた。

 彼女のあの青い輝き。

 魔力の素の能力は最高に近いだろう。

 輝き、色、どれを取っても。

 志津河が水の円盤に触れた瞬間少し揺れた気がした。

 ほんと気がしただけ、実際に揺れてなどいない。

 そんな気が起きた気がする。

 水の円盤に目を移すと明らかに変化している。

 ぽつぽつと雫が水の円盤に浮かんでいる。

 それは複数の時や、一つの時もある。

 そして三つ雫が浮かんでいるところを見て気づいた。

 だいたいの予想が着いた。

 細かいのが苦手とはそういうことか、全体に無条件で魔術を使う意味ということを理解した。

 そして同い年にこんな凄い人がいるんだと実感する。

 これは魔術をある程度まで習得した身の人が見てもその凄さが分かる。

 探知系の魔術は色々あるが、ここまで明らかにする魔術はすごい。

 おそらく精度も高い。


 この水の円盤は私の住んでいる家の土地を見立ててるんだ。

 円盤にに浮いている雫は、人の位置だ。

 火鉢家にいるを表しているのだと。

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