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今年の新人戦が終わった。
豪華な服を着た女性が競技場に降り、俺に話しかけてくる。
「おめでとう。そして、やってくれたね。景品や賞はこの試合では特に用意していない。だけど、魔術師として君を導くことは可能よ。この場ですぐに魔術師にしてあげるとは判断できないけど心配しないで。後日またあなたに会いに行くわ。またね」
そう言って、俺の横を通り、
彼女はもう意識が戻ってるみたいで、豪華な服を着た女性と一緒に競技場を出て行った。
俺が競技場の控え室に戻った時に、新人戦の終わりのアナウンスが聞こえた。
表彰式とかは特になく、流れ解散。
今は傷の手当てのため保健室にいる。
保健室には、
響来が俺に気づいて、こっちに向かってくる。
意識は戻ったみたいだ。
それに続いて後の二人もついてきた。
「勝ったんだな、おめでとう」
「おめでとう!」
「
「ああ、ありがとう」
響来が話を続ける。
「それにしても、よく勝てたな」
「まあ、なんとかな。勝ったはいいけど見ての通り傷だらけだ」
「お前の魔術を見れなかったのは残念だったが、戦うときのお楽しみにしとくぜ。じゃあな」
「じゃあね、周一君」
先に響来と結媄の二人は保健室から出ていった。
二人が出て、しばらくして俺の手当てが終わった。
志津河は俺の手当てが終わるまで待っていてくれた。
簡単に魔術で傷を治してもらった。
青色の魔術は治癒の効果がある。
今回は応急処置みたいなもので、火傷の方はまだ完全には治りきってはいない。
俺が志津河に帰ろうというと、うんと言う言葉が返ってきて、俺達も保健室を出た。
マンションに戻ると俺の部屋に志津河も入ってきた。
「傷まだ全部治ってないでしょ、ちょっと部屋入るよ」
ああと返事して二人同じ部屋に入る。
俺が手を前に出すと、両手で志津河がその手に触れた。
傷があった火傷の部分が徐々に治っていく。
「治すのも久しぶりだね、今回の試合はどうだった?」
と志津河が聞いてきた。
「ぶちゃっけ、いつ負けてもおかしくなかった。色じゃ勝ち目ないから、早い段階で相手の魔術を使われていたら負けてた。なんとか運よく粘り勝てた」
「そうだったんだ、直接応援できなくてごめんね。でも周一が魔術使ったのは分かったから、そこで勝負がついたと思ったよ」
「なんだよ、見てなかったのかよ」
「周一の魔術は強いから大丈夫」
そう言って笑った。
治癒が終わると、志津河が夕飯どうするのって聞いてきたので、冷蔵庫に何もないことを伝えた。
志津河がじゃあ今日は一緒に外で食べようと誘ってきたので、いいよと答えた。
「じゃあちょっと準備してまた戻ってくるね」
そう言って志津河は部屋を出て行った。
こうして新人戦が終わって俺たちの日常が始まる。
***
夜のとある場所の屋敷の部屋。
一人の女性が魔術を使った通話機で話をしていた。
女性の名前は
新人戦の時に豪華な服を着ていた人物。
今は、部屋着に着替えている。
火鉢 華燐の母で、火鉢家の当主。
「あなたから預かった二人について話があるの、特に男の子について」
「僕の秘蔵の子たちすごいでしょ、どうしたんだい?」
と男性の声が返ってくる。
「あの子あの実力でまだ魔術師じゃないの?」
「そうだよ、だから魔術師にしてもらうために君にお願いしたじゃないか」
「いいの? うちの所属に入れて」
「いいよ、君のところにいる間は君の自由にしてくれて。学生生活は楽しんでほしいからね」
「分かったわ、うちに入れちゃうからね、じゃあね」
そう言って通話を終わりにした。
通話が終わったタイミングでドアをトントンと叩く音がした。
入ってと赤華音が一言。
中年の男性が部屋に入ってきた。
「お茶持ってきましたよ、誰とお話に?」
「とあるイギリス人よ」
「そうですか。あと華燐様が負けたことがいまだに信じられないのですが、新人戦でいったい何があったのですか?」
「その子の魔術を直接見た。魔力操作に関しては超一流。娘の成長見れたのもよかったけど、それ以上の衝撃だわ。しかも、あれで魔術師ではないんだからね」
「赤華音様が褒めるなんて珍しいですね、その子何者なんですか?」
「今言えるのことは、『
その答えを聞いて男性は驚いた表情を見せる。
そうして夜は徐々に深くなっていく。
***
新人戦が終わった最初の登校日。
火鉢 華燐はクラスの部屋にいた。
今は自分の席に着いている。
まだ朝のホームルームまで時間はある。
負けたあの日から、彼のことが頭から離れない。
対戦した日のことを思い出す。
魔術の展開速度、見事な強化魔術、洗練された魔力操作。
魔術に関してどれを見てもすごいと思った。そしてあの魔術。
魔術の修行でどんなことを普段しているのか気になった。
周りを見ると、皆友達と話しあっている。
私も勇気を出して彼に話しかけてみようかなと思ってた時、自分の苗字を呼ぶ声が聞こえた。
目の前には、彼こと
そうして彼が続けて話す。
「もう知ってると思うけど、改めて、俺は輪洞 周一よろしく」
彼はちょっと照れ臭そうに簡単な自己紹介をした。
「私は火鉢 華燐よろしく」
私も簡単に自己紹介をする。
よかった。
話が出来た。
これからもっと仲良くなれたらいいな。
華燐は内心嬉しそうにしている。
そして周一が会話を始める。
こうして、それぞれの学生活が始まっていく。
真紅に輝く脚、終わり
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