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 今は実技の授業。

 実技の授業は室内で行われる。

 内容は循環。

 魔術を使うにはちゃんと使い方を覚えないと魔術を使えない。

 体中に血液が循環するように無意識に行うのではなく自分が手を動かすように意識的に行う。

 魔術を使うには、循環、構築、展開の三つの手順をする必要があり、その中で最も基本的なことが魔力を循環をさせること。

 魔力の素から放出されている魔力は普段体中を循環していない。

 日常的に魔力を循環することはほとんどない。

 魔力の循環そのものが難しい事ではない。

 一回魔術を使うだけであれば、長い時間をかけて一度循環をすれば魔術を構築して展開することは出来る。

 一度の循環で使える魔術は一回しか使えない。

 自由自在に魔術を使うのであれば、何十も、何百回も魔力を循環しなければならない。

 最初はみんな一緒で自由自在に魔術は使えない。

 ここでは循環の継続を学んでいく。

 一年生時の実技は主に循環に関連する授業がメイン。

 そして今日は自習。


 周一しゅういちは適当な場所に座って循環を始める。

 今はあまり集中していない様子。

 そして静かに循環を始めた。


 魔力の循環。

 ありとあらゆる魔術を行う上で最初の行為。

 魔術を展開して、物理法則を無視して、火を生み出し、操作することが出来るようになる。

 魔術は、魔力の素の能力に強く依存する。

 物理法則には従わず、魔力は独自の法則に沿って、物理法則を従える。

 魔力の法則がこの世界には存在する。

 この法則と深く関係する要因となるのが、三つの項目。

 強度、透明度、色に区別されている。


 強度。

 主に魔術の規模と影響度に関係する

 強度が高い魔術であればあるほどその魔術の威力や維持に強く影響する。

 そのため魔術同士が相対したときに、この強度の度合が強いほうが勝つ。

 循環することによって自動で発動する強化魔術の強さもこの強度に関係する。

 強度が高ければ高いほど、強化魔術により得られる強化が高くなる。

 この強化魔術は自分の肉体や五感を強化する。

 その肉体は拳や足で、岩を破壊することはもちろん、相手からの物理的な攻撃や魔術を受ける際の防御手段になる。

 最後に何らかの要因で魔力の循環が阻害された場合、この強化魔術は解除される。


 次に透明度。

 透明度は魔力の素と魔力の透明度を指す。

 これは魔術の構成速度と魔力の循環速度に影響を及ぼす。

 透明度が高ければ高いほど魔術を構築する速度が速くなるため、魔術の再構築や維持を素早く行うことができる。

 しかし強度魔法は魔術を循環した際の副産物として発生するため、強化魔術の構成には大きく作用しない。


 最後に色について。

 色はその人一人一人が持つ属性となる。

 魔術を展開する際に魔術がその色に染まる。

 特性として、赤は火、青は水、緑は風、黄は土、そして無色。

 これらを生み出して、自由自在に操ることが出来る。

 属性にも優劣が存在し、火→風→土→水→火の順に強さが変わる。

 無色は例外としてどんな属性にも優劣無く作用できるがその分弱い。

 色が濃ければ濃いほど、この属性は強くなる。

 魔術において色は魔術の原理をより複雑なものにする。

 色の濃さによって強度と透明度に影響が出る。

 強度による影響は、この色の濃さが構成した魔術の威力や維持をより強力なもにする。強度が強く、色が薄い魔術と強度が弱く、色が濃い魔術を比較した際に後者が勝るときがある。

 また、色が濃い場合は循環している魔力に色がつくためその分、透明度が落ちてしまうため、循環の速さに差が出る。

 再度循環した場合その色の濃さの分、速度は落ちることもあるが、循環によって色が濃くなり続けることはない。


 これらは一般的な魔術の基本。

 そして時に魔術はその世界をも塗り替え、法則を無視する。



「ねえ! ねえ! 周一しゅういちくん!」

 俺を呼ぶ女の子の声が横から聞こえた。

 そして、俺は顔をあげて循環を止める。

 周りには3人。

 右から制服を着崩したチャラそうな雰囲気の男の子、䬅扇きょうせん 響来 ひびき

 目にくまがある、体調が悪そうな男の子、浸渡しみわたり きょう

 そして先程、周一を呼んだ小柄な茶色い髪の女の子、土壌どじょう 結媄ゆみ

 いつものメンバーが揃っている。


 3人が順に会話を始める。

「今日はいつにもなく集中してやがる」

「ここはいつも暑苦しい、だが周一の循環はいつ見ても素晴らしい!」

「私は全然わかんなかったー」

「やっぱ俺と峡は、ちゃんと見えてるんだな」

「この暑苦しいやつと一緒とは最悪だ」

「なんか、私だけ分かんないの悔しいんだけど」

 響来は真面目な顔、

 峡は鬱陶しそうな顔、

 結媄は不服そうな顔、

 三者三様だった。


 響来が真面目な顔であることを切り出した。

「周一も出るんだな、新人戦に」


 俺はああとだけ返した。

 自分が参加する目的は話さない。

 俺は俺の目的のために参加する。

 師匠から言い渡された事だ。

 魔術師になれば師匠から直接連絡が来ると思っている。

 魔術師になったその後については曖昧にされてよくわからなかった。

 きっと連絡が来るはず。

 そうすれば師匠の手伝いが出来る。

 俺はそう思っている。

 今年は、同年代に火鉢の令嬢がいる。

 期待は薄いが、勝てばもしかしたら、魔術師になれるかもしれない。

 なれるかもしれないという薄い期待でもつい期待してしまう。

 卒業前に魔術師になれる。

 そんな願望を密かに持っている。


 俺は誰が参加するかまだ知らないため、二人にも質問をした。

「峡と結媄は出ないのか?」

「循環が遅い俺は出ない」

「私も出ないよ!午前中の循環のテストの方が心配だもん」

 と二人から返事が返ってくる。

「集中してるからまた今度な、次は新人戦の時に」

 意外と今日はあっさりしていた。

 普段なら結構絡んでくるのが響来だが、珍しく自分から話を終わらせた。

「またな」

「そうだね、ばいばーい」

 そう言って三人は去っていた。


 新人戦の日まで時は進んでいく。

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