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二人の横を今バスが通り過ぎた。
道路や空から乗り物の音が町中に響き渡る。
それは列車、飛行機、バスと、馴染みある乗り物の音が聞こえる。
二人は登校の時、雨の日はバスを使う。
そして晴れた日は徒歩で行く。
今日は晴れているので徒歩。
その最中、
二人とも何時ものように話をする。
志津河も周一も気楽な表情をしている。
昨日は部屋の掃除したよとか、最近はこの音楽にはまっているんだとか、今日の運勢は最高とか、そういった声が聞こえる。
周一はそれに対して長い返事はしない。
うん、ああと短い返事を返す。
そして時折質問を混ぜていた。
別に彼女はそれで怒ったりはしない、話をするのは何時ものこと。
そして彼もあまり長くは話さない、その話を聞くのは何時ものこと。
これが二人の今の日常。
二人が通う高校は魔術師になるための高校。
魔術師の中にも、もちろん優劣は存在する。
魔術師の評価は魔力の素の能力で決まる。
評価の項目は強度、透明度、色。
強度は5段階、透明度は10段階、色は23段階で評価される。
生まれた時から決まっている変えようのない評価。
基本的にはこの項目が高ければ高いほど、優秀な魔術師として将来を有望視される。
強度はその魔術の規模と力。
透明度は魔術を構築する速さ。
色は魔術による属性の濃さ。
魔力の素の評価によって将来や進路が決まってしまう。
何事も例外というのは存在するが、基本的にこの色が付く高校に入学が出来なければ、魔術という世界を諦めなければならない。
魔術とは違う普通の生活を送るため、娯楽以外ではほぼ魔術と触れ合う機会はなくなる。
魔力が支配する世界で魔術師は非常に優遇されるているこの世界。
才能という二文字で魔術師なれるか、なれないかで、魔術人生がその瞬間決まる。
志津河が周一にある話題を振った。
「もうすぐ新人戦だね。準備は大丈夫?」
「うん、大丈夫。絶対勝つから」
「じゃあ、心配ないね」
そうしてまた他愛のない会話が始まる。
新人戦はこの高校で行われる独自の取り組み。
評議会の魔術師と
一対一で行われる戦い。
ここでは、単体での戦い方や魔術の使い方が評価される。
魔術の素だけで評価できない部分を見るのが主な目的なのと、実戦での強さを見る。
ルールは
・強化魔術の維持が出来なくなること
・気絶すること
可能性は薄いが、この結果次第では魔術師になれる場合がある。
周一も魔術師になるためにこの新人戦に参加することを決めている。
そして特に今年はある一人に注目が集まっていた。
気づけば、二人は校舎の中にいた。
それぞれの教室の前でじゃあねと言って別れの挨拶をする。
周一は教室に入って、窓際の自分の席に着いて、一息つく。
ふと窓から外を見ると校門近くに一台黒い車が停まった。
黒い車から運転手が出て後ろのドアを開ける。
車から出てきたのは、赤い髪を肩まで下している、すらっとしたスタイルの女性が降りてきた。
周一はその一連の動作に見惚れていた。
横顔が見える。
凛とした表情の女の子。
そんな彼女の名は日本中に轟いている。
彼女の名前は
日本において色を付けられた、最強の一族。
優雅に登校してくる華燐を周一は見て、その後すぐに視界から外した。
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