第三回 初めて興味を持ったこと、それが℮スポーツだったの。


 ――とはいっても、この頃はまだ『℮スポーツ』というワードはあまり知られず、格闘ゲームで収まっていた。プレーするソフトは『ヒーローストリート』……もう定番だ。



 実は、ゲームは初めてではない。


 いじめっ子と一緒にゲーセンで、ゲームをさせられる。それは、お小遣いを狙った所謂賭けゲー。対象は中学生や高校生。僕が負けたら……WCの個室、僕の裸が拝める。これまで三回……でも勝ったら、お小遣いが貰える。……でも全額いじめっ子のものだ。


 ――でも、


 それを見られたのだ! グイッと手首を掴んで離さない。……幾ら「痛い」と涙目で訴えても「いいから来い!」と怒鳴り、連れて行く、鍵っ子のお家に。中に入るなり、


「お前、自分が何やってるのか分かってるのか?」


「……援交じゃないもん」と、言うと。――太郎君、僕のこと思い切り引っ叩いた。


「お前、それ以上言ったら、マジぶん殴るぞ」


 僕は……涙を流すよりも、キッと睨みつけていたようで、


「お前じゃない! 千佳ちかだよ。君は、女の子を引っ叩いた上に、まだぶん殴るの?」


 すると、太郎君の目に、

 涙が浮かんでいた……ことに気付いた。


「お前……いや、千佳子・・・、もうやめろよ、あんなことは……な? ゲームするなら俺と一緒に、ずっと俺と一緒にいろよな。お前を……千佳子を守ってやるからな」



 ――いじめから、千佳子が辛いと思えることから、……少しでも。


「ごめ……ごめんね、霧島きりしま君……ううん」


 ――太郎たろう君! 千佳が『千佳子』になっていてもいい。それ以上にもう大粒の涙で、彼の胸に飛び込んでいた。とても力強くて、温かい胸の中。そしてこの日、ここではまだ私だけど、……もっともっとゲームが、太郎君とのゲームが大好きになった。



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