第二回 糸を結ぶと、光とともに現れる僕のウルトラマン。


 ――この頃はまだ、僕の一人称は『私』だった。



 児童を守るための集団下校なのに一人ぼっちの帰り道……転んでもいないのに、薄汚れたワンピース。白かったはずだけど、今は灰色に近くて……涙を拭いていた。


 今とは遥かに違う通学路。

 クラスメイトと名乗る人々に、今日もいじめられた。昨日も一昨日も、その前も。


 何時からだろう? きっかけは? それらも分からないまま、この時、小学六年生の秋を迎えていた。つまりは二学期……これからもきっと、このまま……


「おい、なに時化た面してんだ? そんなんだからお前、いじめられてんだろ?」

 と声を掛けられ、俯いていた顔を上げると、そこには、


「帰ってもどうせ『ママ、ママ』って甘えられずに一人なんだろ? 俺んち来なよ、一緒にゲームしようぜ」……って、ランドセルごと背中をバンバン、少し怖い。この頃の、僕の台詞はないに等しいほど少なめで、……それでも、普通の子と同じように話しかけてきてくれるの。毬栗頭のやんちゃな男の子は、普通のお友達のように、


 ――女の子の、しかも一人称が『私』の、僕に対して普通に……



 彼の名は、……そう、彼こそが霧島きりしま太郎たろう君。


 六年生でクラス替え。それによって同じクラスになった子。席は一つ後ろ。……みんながWCに行かしてくれなくて、授業中におもらししちゃって、太郎君だけが「行くぞ」と言って保健室まで連れて行ってくれて……それがきっかけで何かと話しかけてきて。


 彼も『鍵っ子』


 帰ってきても一人ぼっち。……で、言うの。「ゲームの前にシャワーだな。お前せっかく可愛いのに台無しだぞ。見ないから着替えも出しとくから、さっさと入って来いよ」


 ――僕のこと、初めて『可愛い』と言ってくれた。


 その後、一緒にプレーするゲームは『格ゲー』……℮スポーツへの道程が始まった。



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