感想『魔女と猟犬 』

『魔女と猟犬』カミツキレイニー著(ガガガ文庫)



あらすじ

魔術師という最強戦力をもつ王国アメリアからの侵略の脅威に対抗すべく、小国キャンパスフェローは各地で恐怖の対象とされている魔女を味方に引き入れる策を打ち出す。そんな中、隣国レーヴェが魔女を捉えたとの知らせが入り、キャンパスフェローのバルドは自らレーヴェに向かい取引を持ちかけることに……。


そんなキャンパスフェローの一団の中に本作の主人公「黒犬のロロ」がいる。彼は領主の娘を護衛するのに着いてきたのだが……彼らは国家を取り巻く大きな渦の中に足を踏み入れてしまう。(ネタバレになるので詳しく説明出来ない)


バトルあり、政略ありの息をつかせぬ展開が魅力の大河ファンタジーだ。




感想

まずは、物語全編を通しての緊張感が凄い。話の展開が特段早いわけではない。しかしながら緊張感を常に感じたまま読み進めることが出来た。他国に足を踏み入れ、なおかつそれが自国の存亡をかけた作戦であるからだろう。お姫様と街に繰り出すシーンでさえ表向きの楽しさの裏にジリジリとした緊張感を感じた。例えて言うなら映画『パラサイト』を見ている時の「いつかバレるとわかっていても、いつバレるか分からないから常に緊張感を感じている」という感じと近いだろう。


その緊張感が心地よい。そして、その緊張感が解き放たれる瞬間はもはや清々しさを覚える。


キャラクターについても主役級の2人はもちろん他のキャラクター達も魅力的だ。多分、僕が「大河ファンタジー」って言ったのもこの部分があったからだと思う。確かに魔女と猟犬の物語ではある。だけど世界を動かすのは彼らだけではない。領主とその部下、他国の人間……物語に登場する全ての人間が世界を動かすのに関わっている。まるでひとつの世界の歴史を見せられているかのようだった。世界と登場する人物全てが繋がっている感覚は他の作品よりかなり強いと思う。




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