感想『オーバーライト ブリストルのゴースト』
池田 明季哉 著(電撃文庫)
あらすじ
イギリスのブリストル大学に留学中のヨシ、彼はバイト先の店頭にされたドクロの落書きをみつける。それはグラフィティとよばれるブリストル発祥の落書きアート出会った。おなじバイト先に勤めるブーティシアとともに落書きの犯人を探しに行くのだが……それはグラフィティアーティストたちと市議会の対立、そしてブリストル市全体を巻き込んだ大きな事件へと彼らが足を踏み入れるきっかけとなるのだった。
感想など。
グラフィティといえば最近だとコロナウイルスの関係もあってTwitter上でブリストル出身のグラフィティアーティストのバンクシーの作品の解釈が話題になっていたこともあり、非常にタイムリーな話題だ。
グラフィティライトノベルっていうと後にも先にもまぁ出てこないだろうなっていうぐらい独自性のある題材。しかしその裏には、アートが体制と戦ってきた歴史、人々はなぜ絵を描くのかなど、ある種の芸術全体に言える普遍的なテーマが見えてくる。
電撃文庫は定期的にアートを題材にした作品をだしてくる。電撃文庫のなかでも、かれこれ10年前の作品だが、私の好きなものに『ヴァンダル画廊街の奇跡』という作品があり、芸術が禁止された世界で有名絵画の模写を世界中で描くアートテロリストたちの物語であった。
やはり、芸術の持つ力というのは強大であり、物語の中心にすえるテーマとしても力強いものなのだろう。
今作はその力強いテーマも魅力だが、やはり海外舞台ラノベ独特のキャラクターの言い回しや、文章も魅力だ。
一人称で描かれているが、感情移入しながら読むと言うより、そのリズムを外から楽しむという感じが強かったように思える。交錯する人間関係とその会話を楽しむ、まさしくヒューマンドラマと言ったところだ。
主人公のヨシが冷静な性格だというのもあり、グラフィティライターのもつ熱量や、自分たちのアートを信じる気持ちみたいなものを主人公と同じ文化の外側という視点で見れたこともあり、これまでの主人公自体が熱い思いを剥き出ししていた「熱い系ラノベ」と全く違う楽しみ方で熱さを感じられたも思う。
2巻も発売決定しているらしいので、これからが楽しみな作品だ。
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