起床後の小話
枕のとなりに置いてあるスマホを見ると、画面に7:45と表記されていた。
「んんー……」
起き上がり、ベッドの上で伸びをする。
本当はこんなに早くに起きる必要はない。今日は高校の入学式があるけど、それも午後からだ、
だけど、目が覚めてしまったから仕方ない。
ベッドの棚に手を伸ばして眼鏡をとる。
「いってきまーす」
下の階からにいさんの声が聞こえたから、
「いってらっしゃい」
私は、そう返事をする。
まだ頭の中がボーッとする。ていけっとうってやつなのかもしれない。
そんなことを思いながらあくびをしていると、ふいに、外から声が聞こえて来た。
「っておかしいでしょ!なんで入るの!」
あの女の声っ……!
瞬間、意識が覚醒した。
その後に、ガチャリとドアが閉まる音がした。
……絶対なにかあった。
私はベッドから出て、階段へ向かう。
そこでちょうど、ふぅと溜息を吐き出しているにいさんが見えた。
「……どうしたのにいさん……学校行ったんじゃないの……?」
出来るだけ平静を保ちながら、私はにいさんに声をかける。
「いやちょっと忘れ物があるのに気づいてさ」
「ふーん……?」
そんなバレバレな嘘ついて。ばかにしてるのか。
「だから一回取りに戻って来――」
その時、玄関のドアが開かれる。
「忘れ物って、私のこと?」
「おっおま!なんで勝手にドア開けてんだよっ」
「鍵、開いてたから」
いやそれ普通に不法侵入だけど?
「別に良いじゃん幼馴染なんだから、ほら行こっ!」
「あっちょっ待って!うわぁー!」
……あの女、強引ににいさんの手を引いて行ってしまった。
何事も強引にするのは良くないって学ばなかったのか。
一応だけど、私は強引になんてしていない。うん、まったく。
そんなことよりだ。
これはかなり想定外の出来事が起こってしまった。
正直、こんなに早く接触してくるなんて思ってなかった。だから、もう少し時間をかけて来ると考えていた。
「これは、緊急事態かもしれない……」
もしかすると、このままずっと二人で登校するようになるかもしれないし、関わりを持つ時間が多くなるかもしれない。そうなると、お互いの想いがいつか通じ合って――
ううん、それはなんとしても避けなければいけない。
この恋を邪魔されるわけにはいかないのだ。絶対に。
「あの女を叩き潰す……」
静かになった玄関で、私はそう呟くのだった。
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