第8話_因縁決着_
「くそっ、こんなものいくら割れても…… 」
「自分はヒーローになりたかった、誰かを守れる男になりたかった。
このザマはなんだ、子供三人を戦場に送って、俺は帰りを待つばかり! 」
重ねた5枚の瓦が割れる。
何度も繰り返したせいで、拳が赤くなっていた。
「
「
そんなに自分を
その顔を見て、
「どうやら、小粒ながら良く育った戦士のようじゃな 」
扉から姿を現したのは、腰が曲がった80歳の
「お前は何者だ?
ここに戦力は残っていないはず…… 」
「自己紹介がまだじゃったな。
ワシは
構えてもいないのに、それだけで空気の色が変わった気さえしてくる。
「冗談はよしてよ、お
ここは
「正ちゃん、後ろに跳べ! 」
その時に初めて気が付いた、いつの間にか
「
そのジジイ、歩いてお前に近づいてたんだぞ? 」
そして正一には、何故か最初の場所から、一歩も動いていないように見えたのだ。
「
今のは
ここで目の前の老人の
「そうじゃよ、それでいい。
でなければ、面白くないからのう 」
先陣を切ったのは、
遠距離からの放電攻撃、しかし
老人が避けたのではない、その放電は別の場所に命中していた。
「さっき見せた
ちっとは対応してみせんかい 」
「なら、こいつはどうだ!
プラズマによる包囲網を、
「ほう、これは中々考えられた技じゃ。
少しばかり、骨が折れそうじゃな 」
包囲網が狭まり、
それが完全に閉じる直前、
「なっ 」
人間としては速い、しかし
その遅いはずの攻撃を、
人中(鼻の下)に
「
合図に応じて、
そして伸び切った
けれども、その力に
そして
肉体的なダメージも大きかったが、権と正一はそれ以上に精神的な衝撃を感じていた。
それは何より、その技に見覚えがあったからだ。
「ゆっくり動いてるのに、余裕を持った回避と、相手の力を利用した技。
権ちゃん、これって……」
「ああ、“鎧”に対して
「お主ら、やはり
「お主らの動きは、あやつの物と似ておったでな。
奴の動きは見切っておる、あれに及ばぬ貴様らの動きも、全て見切れるわい 」
「二つほど、
このタイミングで、扉を開けて入ってくる人物がいた。
その姿を見て、三人は目を見開く。
「一つには、彼らの力はあなたに
そしてもう一つは、貴方が見切っているのは動きではなく、呼吸だ 」
「「「
そこに立っていたのは、人質として捕まっているはずの、
「お久し振りです、
政府の命令により、あなたと決着をつけに来ました 」
「ふん、あの頃よりは技が磨かれておるようじゃな。
それ、久方振りに
左手は掌を下にへその前に置き、右手は手刀の形で喉元に突き付ける、独特の構えだ。
「残念ですが、時間の余裕が無いのです。
「「「はい、先生! 」」」
「先ほど言いかけたように、あの技は攻撃直前の呼吸の変化を読み取り、最適なタイミングの回避を導き出すもの。
同時攻撃では互いの攻撃タイミングが一致してしまう、だから必要なのは連続攻撃! 」
深明が端的に、三人に指示を出す。
「ワシの技を食らってまだ動けたのか。
さて、どこからでもかかってらっしゃい 」
先に攻撃したのは、
少し遅れて、かなり低い体勢で走ってくる
右前蹴りを、
そして足を
電流を流して、行動不能にするつもりだったが、肘を軽く叩かれて
ここで想定と違うことが起きた。
先ほど潰した
そのおかげで、
腕が
静かな勝利だった。
「何故止めを刺さん?
ワシは、畳の上で死にたくない。
戦場で戦士に殺される最期が良いのだ、
「私には、貴方を殺すことはできません。
貴方に負けたからこそ、今の私があるのです 」
「そこの三人、先ほどの連携は見事じゃった。
君たちの中なら、誰に殺されても良い…… 」
救いを求めるように、弱々しく手を伸ばす
三人は見合って相談していたが、
「あんたの気持ちは俺にはわからねえけどよ、死に急ぐことはないんじゃねえの?
それこそ、先生みたいに新しい弟子を取って、育てる生き方だって悪くないさ 」
なにより、と
「誰かが殺されれば、そこに憎しみの
それを止めるためには、誰かが殺しをやめる必要があるって、俺はこの旅の中で学んだんだ 」
「殺してくれないなんて、お主らは残酷で厳しいのう 」
言葉とは裏腹に、口元は嬉しそうにほころんでいた。(第8話 終)
次回予告
ついに権たちは、天真教三大使徒最後の一人、ゼウスの元にたどり着く。
その恐るべき正体、そして真の目的とは?
そして、権は両親と真の名前を取り戻せるのか?
「Nameless Hero」、ついに完結!
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