第3話_研究所襲撃_
「お前は発電量が、他の雷人と比べて極めて高い。
その為に、自身の肉体に高い負荷をかけてしまっている 」
権は、数年前のことを思い出していた。
権の師である
「これはただのアクセサリーではない。
外せばお前の命が危うい、タイミングを誤るなよ」
何故、今になってこのような記憶が、思い出されたのだろう?
疑問を振り払いつつ、研究所へと足を進める。
「
「大方、政府が我々の研究に気付きおったな。
まあいい、どのみち兵器はもうほぼ完成しておる」
「データ分析と、兵器の試運転を済ませたら、この基地を
戦争を起こすには、まだ準備が足らん 」
「現在、
モニター映します 」
小林助手が起動した大スクリーン
その中ではたった二人の少年に、銃を持った男たちが倒されていく、信じ難い光景が映っていた。
「雷人共は、何故避けてもいないのに、銃弾の雨の中でも平気なのでしょうか?
よほど皮膚が硬いのですか? 」
「それは違うぞ、小林君。
雷人共ではなく、銃弾の軌道を分析してみなさい 」
言われた通り、小林助手は銃弾の軌道にフォーカスする。
「こ、これは!
銃弾の軌道が、不自然に変化している? 」
「
奴らの
銃を捨てて、逃げようとする傭兵が現れる。
権が、瞬間移動でもしたかのように、逃げる傭兵の前に回り込んだ。
「相当速いな。
今の速度、測定できたかの? 」
「計測値、秒速300m!
信じられない、
この報告には、
「クラゲに電流を流すと、3倍の速さで泳げるという論文があったな。
理屈は同じじゃろう、だがそこまでの速度が出るとは思わなんだ! 」
「我々の兵器は、亜音速の敵など想定していません。
敵の戦力を見誤りました、博士は逃げてください。 」
小林助手の進言に、
「馬鹿もの、逃げるなら老い先短いワシではない、小林君じゃろうが!
それに、確かに想定外の性能じゃが、同時に弱点も見えてきた。
やはり生のデータに触れることは、研究の発展に必要じゃな 」
「写真と同じだ、間違いない。
「いかにもそうじゃ。
初めまして、人類の敵“
研究所内部の白い部屋に、権と正一は辿り着く。
分厚いガラスと、高さのある監視部屋に、怨寺博士と小林助手はいた。
「なんで、
「貴様ら
もしお前たちがその気になってみろ、現代社会はたちまち
「今までそれが起こったことがあったかよ。
その為に俺たちを殺そうっていう、あんたの方が危険じゃないか? 」
権の問いに、小林助手が
「今まで起きなかったからと、これからもそうであり続ける保証はない!
これまでが奇跡だっただけだ、そして現代社会が崩壊してからでは遅い!! 」
「その通り、だから貴様ら
そうでなければ、人の世に
正一が、口を開いた。
「現代社会の雷人からの保護が目的なら、他に穏便な方法はいくらでもあるはず。
それに人間の死を
まるで、最初から戦争を起こすのが目的で、それに口実を付け足したみたいだ 」
博士が、初めて怒りの表情を
「黙れ、それはコラテラルダメージじゃ。
もっと多く失われるかもしれなかった、将来の人命は救われるのだ。
雷人どもとの対話など、無駄でしかなかったようじゃな 」
「そうです博士、奴らは5%も
はやくあれを投入し、
天井が開き、そこから黄色い鎧を着た、人の形をしたものが落ちてくる。
「行け、
そこの二体を捕獲するのじゃ 」
“鎧”は、博士の命令に従い攻撃動作に移る。
異様な風体に警戒した正一は、まず放電で
放電はまともに直撃した、だが“鎧”の動作は止まらない。
想定外の事態に反応が遅れて、正一はまともに被弾しそうになる。
その直前に権はわりこみ、カウンターでパンチを当てる。
権の
だが、強い弾力で攻撃は跳ね返され、権と正一はまとめて壁に激突する
「今の感触、あの鎧の素材は“ゴム”か! 」
「そう、貴様らの放電を防ぐために用意した、特別製のゴムの鎧!
これを人間に遺伝子改造を施した、超筋肉の怪物に着用させる。
貴様ら雷人どもを殺すに、十分な性能があるわい!! 」
権は即座に起き上がるが、権と壁に挟まれた正一は、ダメージが大きく立ち上がれない。
“鎧”は、追撃の為再び体当たりの姿勢を取る。
避けることは可能だった、だがそれをすれば正一がマトモにくらう。
権は、迷わず受け止める為に腰を落して前に出る。
地面との摩擦で、火花が散る。
3メートルほど滑ったが、体当たりそのものは止めることに成功した。
だが、
“鎧”は権の首根っこを
「ははいいぞ、もっとやれ
私の姉は足を
「小林君、気持ちは分かるが落ち着くのじゃよ。
今必要なのは生きたサンプルだ、そういった事は後にしなさい 」
小林助手が
「そうか、そっちがてめえらの本当の理由か 」
権が、痛む体を気力で動かして、立ち上がる。
「
そうでなければ、
「また“復讐”って言葉を使ったな?
やっぱり、正ちゃんが指摘した通り、さっきの言葉はただの口実ってわけか 」
「黙れ、
それに、身内を殺された我らの恨み、貴様らに分かるものか?
いつの時代でも、我々人間を
「分かんねえよ。
絶対に殺したいほどの恨みや、復讐したいだなんて思ったことはないからな 」
両手を組み、振り下ろしてくる“鎧”の攻撃をかわし、背後に回り込む
「だがな、俺達雷人にも、家族がいるってことを忘れてねえか?
アンタたちが失って悲しかったもの、ここまでの
密着して、“鎧”の首を絞めようとしている。
だが、さほど効果はないようだ。
「
生体サンプルは一匹で十分。
小林君の望み通り足を
博士の怒りに応じるかのように、“鎧”が暴れまわり、権を振り落とす。
権は自らの右手首のリストバンドを確認する、死のリスクがあると忠告されたリミッター。
正一を守るのと引き換えならば、と覚悟を決めようとした時だった。
「それを外す必要はない、僕たちの力だけで倒すんだ 」
正一が権の右手首を掴み、それを静止する。
「だけど、どうやって? 」
「
正一が、“鎧”の目があるあたりを指さす。
「あの場所だけは素材がゴムじゃない、
溜めの時間は、僕が稼ぐ 」
「分かった。
信じてるぜ、正ちゃん 」
権は、右掌を開けて振りかぶる。
正一は、“鎧”の注意を集めるべく、無謀な攻撃を仕掛け続ける。
「
あれはなんでしょうか? 」
「
……まさかプラズマか!
いかん、それを
“鎧”は博士の指示で、権の掌で輝く青い光に気が付く。
撃たせまいと権に標的を変える“鎧”、その攻撃から身を
権の目には、力尽きて倒れる正一の姿。
「
咄嗟に、まだ溜めの完了していない奥義を、“鎧”に向けて放つ。
激しく何かが焼ける音、そしてゴムが
光が収まったとき、“鎧”は両腕を交差しガード
両前腕は
「いいぞ!
もうそ奴らに打つ手はないはず、止めを刺せ!! 」
命令に従い、“鎧”が止めを刺そうと拳を振り上げた__
「よく耐えたね、二人とも
後は、私に任せてくれ 」
権と正一のピンチに駆け付けた人物
それは、他ならぬ彼らの師、山中 深明であった。
次回予告
権と正一のピンチに駆け付けた、深明
彼の強さはどれほどのものか?
また、権たちは無事旅に出られるのか?
第4話もお楽しみに!
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