第2話_試練決定_
「ワシらホモ・サピエンスの
では、“
ワシは、
小林助手は、熱心にノートを取っている。
「その南アメリカの地では、奴らの他にも発電を行い、攻撃手段とする生物がおる。
それがなんだか分かるかね? 」
「学名 Electrophorus electricus。
和名を、電気ウナギです。
雷人の発電方法も、電気ウナギと同じであると推測されているのですよね? 」
怨寺博士は、拍手で小林助手を称える。
「正解じゃ、流石はワシの後継者じゃ!
そして、雷人と人間との関係は、奇しくも電気ウナギと通常のウナギの関係に似ておる 」
スライドが移り変わる。
左側には、ウナギと帯電したウナギの画像。
右側には、人間と帯電した人間の画像だ。
「人間とチンパンジーの
……がなんと、人間と
やつらとわしらの姿が似ておるのは
博士は、5本の指を伸ばして、この事実を強調する。
「電気ウナギが生物的に別種なのに、見た目からウナギと呼ばれているように。
今度のスライドは、人間の男と帯電した人間の女の画像。
そして、そこには大きく赤い罰マークがついている。
「互いに哺乳類であり、性器の形も近いため、物理的に交尾は可能じゃ。
だが、
そのため人間と
次のスライドは、歴史関係のようだ。
「ワシの専門は
さて、人間と雷人との歴史的な関係は、神話などに見て取ることができる 」
写されたスライドには、ギリシャ神話と思わしき神々の画像。
「分かりやすいのは、ギリシャのゼウスじゃな。
こいつのモデルは、よほど強力な
「質問、よろしいでしょうか? 」
小林助手が、挙手する。
「言ってみなさい 」
「神話に
そのことについて、どう推測していますか? 」
「鋭い観点じゃな。
ワシは発光などの関係から、太陽神などと同一視されたと考えておる。
我が国の天照大神も、太陽神じゃしな 」
小林助手のノートに、太陽神と同一視された可能性?
と言う文字が、追記された。
「なるほど、ではもう一つ質問です。
ゼウスは好色で知られて、その子孫とされる英雄も多い。
人間と
博士はこの質問には、腕を組み悩む。
「ワシにも分からん。
だが雷人の繁殖能力の低さを考慮すると、ゼウスに子孫が多くいたとは考え難い。
好色であったことを事実としてもな 」
スライドが、次のページに移される。
「さて、質問に答えられずすまんが、時間もないので最後のスライドに戻ろう。
そろそろ今日の実験の時間じゃしな 」
スライドに移された画像は、上下に分けられたピラミッド。
その内部に、帯電した人間が上、普通の人間が下に入れられている、というものだ。
「神話で
実は、軍事的な意味ではあまりこの状況に変化はない。
国家間のパワーバランスは、核ではなく雷人の保有数で決定しておるのが真実! 」
博士は握り拳を作り、机を叩く。
「雷人共を絶滅させねば、我々人類の真の繁栄はない!
さあ、我々の復讐の兵器を完成させるぞ、小林君!! 」
「無論尽力いたします、博士! 」
二人が向かう研究所の奥、地を揺らすような唸り声が聞こえる__
「また侵入者か、近頃多いな 」
権は、前日のように、集落に接近してきた部隊を片っ端から捕まえていた。
今もまた、頭から直接電流を流し込んで、銃を持った兵士を無力化していたところだ。
あまりにも
その為だ、不幸な事故が起きたのは。
「やあ、権くn__ 」
声が聞こえた方向に、反射的に手を振るい電流を流し込む。
倒れた人間を確認すると、見知っている顔だった。
「しまった、
権は、慌てて彼を
「ごめんなさい、
権は、その人物を客間に運び込んだ後、土下座をする。
深明に叩かれた為、その頬は
「私の指導が行き届かず、
深明も、権の頭を抑えつけながら、自身も土下座をしている。
「いえいえ、私も合図をするのを忘れていたので、こちらこそ不注意でした 」
「侵入者たちはいつものように、後日私ども 自衛隊で引き取らせていただきます。
また本日は、別件でのお願いがあって来ました 」
「それは、日本政府からの命令ですか? 」
深明の問いに、
「内閣総理大臣の命令書です。
差し出されたのは、書類と顔写真。
初老に差し掛かろうかという、白いひげを蓄えた男性
そして、若く
「彼らは、政府が
しかし、禁じられた
次に出されたのは、地図と、洞窟に
「調査をしたところ、銃器で武装した傭兵100名が、内部にいることが明らかになりました。
政治的な事情から、自衛隊の出動はなるべく避けたい。
そこで、あなたたちに動いてもらうことが決定しました 」
「拒否は許さないという事ですね。
この発言に驚いたのは、他ならぬ
「正気ですか?
彼らは将来ある子供だ、本来なら義務教育を施されるべき少年たちだ!
本当は上から止められている情報ですが、対雷人兵器も完成している可能性があるのです 」
「怒ってくれてありがとう、
アナタは情に厚い人だ、その
「それが分かっていながら、何故彼らに任せるというのですか? 」
「まず一つに、政府にとっての雷人の存在意義は戦闘能力にある。
私を含めた周りの大人だって、いつまでも生きているわけではない。
ならば、長く生き抜いてもらうためにも、戦闘経験を早く積ませる必要がある 」
「一つ目、と言いましたね
他には? 」
「二つ目は、あの件についての交渉の布石だ
……こういえば、アナタはわかってくれると思います 」
「まさか、本気ですか?
……ですが、確かにこれなら、材料としては十分だ 」
屯田は何かを理解したらしく、驚いた様子を見せる。
「先生、交渉の布石ってなんの話ですか? 」
「お前たちには関係ない、知らなくても良い事だ 」
権が深明に問いただそうとするが、深明は説明を拒絶した。
聞いても答えてくれないと判断して、権は疑問を保留することにした。
屯田は、権と正一を見て、確認を取る。
「深明さんはこう言っているが、君達はどうなんだい?
行くのが嫌なら、他の
この集落からの派遣に拒否権はないが、派遣する人物まで指名されてはいないからね 」
「心配ありがとう、でも行きます。
これが旅を許可する為の
深明は、コクリと
「俺も同じく、行きます。
もう決めたんです、権ちゃんと一緒に戦うって 」
二人の言葉を聞いて、複雑そうな表情をする
「二人の意志なら、私に止める権利は無いな 」
屯田は、持ってきた命令書を権に渡す。
「これは定型文みたいなものだが。
政府は、戸籍の無い者の生死に関知しない。
そして、雷人の戸籍登録はこれを認めない 」
「雷人に人権は存在しない、だから死んでも知らないぞ、ってことですね 」
「ああ、そうだ。
……これから言う事は、自衛隊員でも、政府の
我々は、人類に雷人の存在が認められるよう努力している、その日が来るまでどうか命を無駄にしないでくれ 」
それだけ言うと、
次回予告
次なる権と正一の敵、怨寺博士。
彼の繰り出そうとする兵器は、一体いかなるものか。
二人は、それを相手にどう戦っていくのか。
乞う、ご期待!
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