第50話 白い軌跡のプロローグ

 八月一日は登校日である。

 右手を吊った直史は、自宅の前からマスコミに囲まれつつ、セイバーの用意してくれた車に乗り込み、優雅な気分で学校の前まで到着した。

 マスコミは学校の敷地で完全にシャットアウトされたが、今度は生徒達の集まりが凄い。

 嘘か本当か、球場かテレビのどちらかで、生徒の全てがあの試合を見ていたらしい。視聴率も地域局だが30%近くあったとか。

 直史はぶっきらぼうながら、簡単に答えられることは答えていた。


 しかし声をかけてくる皆が、ナオだとかナオ君だとか、名前で呼ぶのはどうなのだろう。

 こちらは名前と顔も一致していないクラスメイトもいるというのに、慣れなれしすぎる。

 準々決勝と決勝の二試合を投げただけで、しかも最後には負けて甲子園も逃して、どうしてここまで盛り上がるのか。


 伝達が終わり放課後となっても、直史の周りから人が消えることはない。

 俺を名前で呼ぶんじゃない。そんな気分にもなるというものだ。


「佐藤君」


 だからそう呼ばれると、逆に嬉しくなってしまうのだが。


 人混みを掻き分けて進むと、そこに瑞希がいた。

「野球部だよね? じゃあ案内するよ」

「お願いします」

 そして歩き出す二人。

 学校一の有名人と、その隣を歩く少女の背中に、視線は釘付けである。


「あれ、三組の佐倉さんじゃん」

「地味系美人のな。どういう接点?」

「知らねえけど」

 ささやかなゴシップになりそうな雰囲気であった。




 一人だと気安く声をかけてきても、二人だと案外難しいらしい。

 しかも片方が女の子であればなおさらだ。

「……肘はもう、大丈夫ですか?」

「うん、まあ骨も筋も腱も、問題なかったしね。安静にしてたら10日で100%治るって。実際にもう、動かさなければ全然痛くないし」

「でも無理はしないでくださいね」

「散々言われたよー。まあ新人戦にも余裕で間に合うから、無理はしない」

 関節の炎症。スポーツドクターで念入りに診てもらったが、その診断である。

 鍛え方が足りなかったのに、アドレナリンがどくどくと出て、無理をしてしまったというわけだ。

 やはりスポーツで無理をしてはいけない。


 しかし、10日間の完全安静。

 直史のような毎日の調整を行う選手にとっては、勘が鈍る可能性は高い。

 後遺症はなくても、完全復活には少し時間がかかりそうだ。

「100%後遺症なしって言われてるけど、日常で右手が使えないのって、やっぱり不便なんだよね」

 直史は両利きに近いが、箸まで左手で使えるほどに器用ではない。

「でも大きな怪我でなくて、本当に良かったです」

「勝ってても甲子園で投げられなかったかもしれないしね。まあ変な言い方だけど、負けてて良かったよ」

 あの大舞台。おそらくあんな経験は、甲子園にでも行かないと、もう体験できないだろう。


「そういや瑞希さん、最後に観客席で、何か言ってなかった?」

 実は微妙に気になっていたのだが、電話ではなんとなく訊けなかったことだ。

「え、マウンドの上から見えてたんですか?」

「目が合った気がしてたんだけど、最後のボール投げる前に、何か言ってなかった?」

「すみません、応援してたのは確かですけど、何を言ってたか……」

 憶えていない。まあ、そういうこともあるだろう。




 二人が野球部のミーティングルームに入ると、他の部員は全て既にいた。

 直史も別に特別遅れたわけではないのだが、とにかく右手への震動に注意し、瑞希の歩幅にも合わせていたため、遅くなったのは確かだ。

 シーナのやつは先に行ってしまっていた薄情者だが――単にジンがまだ死ぬほど落ち込んでいたらしいので、そちらが心配だったのだ。


「佐藤、そっちは誰だ?」

 本日をもって正式にキャプテンを引退する北村が問いかける。

「文芸部の佐倉瑞希さんです。野球部の記録をつけたいということで、もう監督には話してあるんですけど」

「はい、ちゃんと聞いてますよ」

 問題なく認められた瑞希は、直史の隣にちょこんと座った。


 野球部員たちが、珍しそうに――でもなく、瑞希の姿を普通に見る。

 文化系体育会部活の白富東の部員には、他の文化部を掛け持ちしているメンバーも多い。

 たとえば科学部員や、映像文化研究会、光画部、あそ研、城址探索部などに所属している者がいる。

 白富東の野球部は、単純な体育会系ではないのだ。


 それはそれとして、北村がキャプテンとして、最後の仕事をしようとしている。

「え~、先日の決勝戦は残念な結果に終わったが……本当に残念だったと思ってる三年生、いたら手を上げてくれ」

 他の四人の三年は、上げなかった。

「まあ……二日たっても全然悔しさが湧かないのは不思議なんだが、正直最終回近くなんて、死ぬほど練習していた野球部を倒して、甲子園に行っちゃうのなんていいのか、本当に疑問だったんだよな。別に手を抜いてたわけじゃなく」

 決勝の得点が北村の打点だけだったので、それは間違いない。

「だから二年生以下の部員は、甲子園に胸を張って行きたければ、少なくとも今よりはもっと練習、研究することだな。で、その新チームのキャプテンは、手塚ということで」

「はい、消去法というか、譲り合いでキャプテンになった手塚です」

 北村のような頼りがいは全くない、新しいキャプテンの誕生であった。


 先頭打者でそれなりに結果を出し、野球知能も高い。無難な選択だ。

「で、それとは別に改めて、一年のまとめは大田なわけだが……」

 直史がこの部屋に入ってからずっと、ジンは俯いたままである。真っ白な灰になっている。

「黒田との勝負を唆した俺が罪悪感感じるから、本当に立ち直ってほしいんだけどな」

 散々言葉を尽くしてきたが、ジンが立ち直るには、しばらくの時間が必要そうだった。




 わずかな沈黙の間に、直史は立ち上がる。

 うな垂れるジンの前に立つ直史を、周囲はハラハラして見守っている。直史が変なことを言えばすぐ止めようと、岩崎も腰を浮かしていた。


 この中でジンを明確に責めることが出来るとしたら、直史だけだろう。

 相手の四番打者を打ち取り、自責点は一、三振は18。この投球をして負けたのだから、さすがにエースとして何か言う権利はある。

 だが直史にはもちろん、そんなつもりはなかった。

「あ~……ごめん」

 ぺこりと頭を下げた直史に、ジンはわずかに顔を上げる。

「その、悪かったとは思ってる。俺もいっぱいいっぱいだった。反省してるから、もう怒らないでほしい」

「……なんでお前が謝るの?」

 逆にジンが問いかける。最後のパスボール。あれは捕手の責任だ。死んでもせめて、前に落とさなければいけなかった。

 それが捕手だ。


 だがもちろん、投手の直史の考えは違う。

 それに彼もまた、捕手経験があるのだ。

「あんな失投……ごめんって言うしかないだろ。なんなら土下座ぐらいはするけど、それで済む話じゃないし?」

 ジンの表情が、困惑で占められる。

「世間ではお前のパスボールなんて言われてるけど、初めて、しかも相談もなく投げられたキャッチャーが、逸らすのは仕方ないだろ。俺だってキャッチャーやってたから少しは分かるけど、ストレートしか投げられないやつがいきなり変化球を、しかも試合で相談なく投げられたらぶちきれるよ」

 まあ、確かにそれはそうだろう。

「いや、でもあれは、キレのいいスルーだったろ? あそこでボール球のカーブとか投げられたとかならともかく、俺は捕らなきゃいけなかった」

「あれ? お前、親父さんから聞いてないの?」

 そう、病院に付き添ってくれたジンの父鉄也は、最期のボールについて直史に説明してくれていた。

「あの最後の球、球速が135kmあったんだ。俺のスルーは130km弱の速度で、減速が少ないからストレートと同じに見られるわけだけど、最後の球はアドレナリン全開で肘までやっちゃって投げたから、スルーじゃない球になってたんだよ」

 鉄也はスピードガンで計っていたし、映像も解析したので、わざわざ直史に電話までして教えてくれたのだ。

「最後のあれは高速高回転スルー。わかりやすく言えば、130kmまでの普通のカーブしか投げないはずの投手が、いきなり140kmのものすごく曲がるカーブを投げたってこと。プロでも弾くような球を、よくもうちの息子に投げてくれたなって笑ってたよ。まあ笑ってたけど怒ってたのも確かだと思う」

 もちろん直史にも、弁明の余地はある。

「でもあんな球が投げられると、自分でも分かってなかったんだ。だから肘を痛めたわけだし」


 部室内が困惑の雰囲気に満ちた。

 ジンのパスボールを、責める人間などいない。だがパスボールの事実自体は誰もが認める。

 だがあれを、失投だったというのか。

「でもあれを捕れなかったのは俺だ……」

「いきなりそんな球を投げたのは俺だ」

 責任の取り合いが起こりそうになったところで、ぱんぱんとセイバーが手を叩く。

「二人とも、完璧主義者だから、こういう食い違いになるのですね。Facebookを立ち上げたマーク・ザッカーバーグが、完璧を目指すよりまず終わらせろと言っていますが、それを少しもじって、私は二人にこの言葉を送りたいと思います」

 アメリカのビジネスマンらしく、セイバーはなぜかジョジョ立ちを決めて言った。

「完璧を目指すのではなく、全力を尽くせ」

 それは、確かに正しいのだろうが。


「大田君は全力を出して捕れませんでした。佐藤君は全力を尽くしすぎて、相談の余裕もありませんでした。つまり力量に余裕がないので、負けたのです」

 その理屈は――単なる力不足だったということだ。間違いなく正しい。

 極端な話、直史が完全試合をするなり、チームが三点を取るなりしていたら、ジンの記録上の失策は問題にならなかった。

 だから理屈上は、正しいのかもしれない。納得するのは難しいが。


 セイバーは大人の余裕を見せた表情で続けた。

「皆さんはまだ学生なので分からないかもしれませんが、若いうちの失敗というのは、ほとんどが栄養になるものです。ダメなのは二度と失敗したくないと思って、挑戦することを諦めることだけですね。大田君もたぶん、三年もすればむしろ、あの大号泣が黒歴史になっていますよ」

 こちらの言葉には、もう少し説得力があった。確かに、ジンはまだやり直せる。北村を甲子園に連れて行けなかったことは確定した事実だが、彼にはまだ、甲子園を狙う機会が四度もあるのだ。


 顔色が良くなったジンを見て、ようやく北村はほっとした。

 試合が終わればそこでノーサイド。野球ではないが、その精神でいいではないか。

 力が足りない者はいたが、ベストを尽くさなかった者はいなかった。




 そしてセイバーには、実のところ懸念していることがあった。もちろん対処は既に打っていたが。

 コンコンとノックがあった。おそらく報せが届いたのだろう。

 ドアを開けて入ってきたのは、元生徒会長の篠塚である。

「監督さん、正式な通達がありました。佐藤君の行動と白石君の言動には、厳重に注意すべし、ということです。まあつまり実質的には処分なしですね」

 そう、マウンドに寝転がった直史の姿と、マスコミに対する大介の言動は、高野連などでは問題になりそうになっていたのだ。

 それで問題ではあるが、大目に見ようというのがこの通達であった。


 セイバーは笑った。

 高野連などと言っても、権威や外面に縛られた、権力団体に過ぎない。

 ならばプロ野球や、野球をその一部とする大学、そして教育機関にコネまである族議員などに手を回せば、この程度の不祥事は揉み消せる。

 彼女的には、決勝の誤審への報復とさえ言えない行為である。

 日本の御綺麗な教育機関の体裁をしている高野連が、ドラッグやドーピングと熾烈な戦いを演じるMLBの力を使える彼女に、勝てるわけがないのだ。


 別に札束を火種に委員会の人間の家を放火しても良かったのだが、さすがにそれはMLB的に考えてもスマートではない。


 かくして直史と大介の問題も解決したのである。




「それで、引継ぎは終わったの?」

「ああ、これでもう、元キャプテンだな」

 そう言った北村を見つめた篠塚は、にっこりと笑った。

「も~う、やっとだよ~。受験勉強はしないといけないけど、一日ぐらいはちゃんとデートしようね♪」

 そう言って篠塚は北村に抱きつくと、頬を胸にすりすりとした。

「悪かったよ。ありがとうな。こいつらが頑張るから、俺が頑張らないわけにはいかなくてさ」

 北村も篠塚の頭を、ぽんぽんと叩いている。女子の憧れの、頭ポンポンである。

「しんちゃんは昔っからそうだよね。今日はうち来る?」

「そうだな。もう予定もないし。ゆーちゃんとこはまだ小母さん出張?」

「そ。だから久しぶりに、あたしがご飯作るからね」


 ……え?


「あ~、北村、お前に言ってた推薦の件だけどな」

 実は部屋の隅にいた顧問の高峰が、これは言っておかないといけないと判断をする。そう、一言も発言しなかったが、いたのである。

「大学の推薦枠、たぶん使えるから。キャプテンやってて良かったなあ。その代わり野球部の不祥事……はもう関係ないか。不純異性交遊は……禁止とは言わないが、変なとことかでは見つかるなよ。大丈夫とは思うが、あとはまあ……シモのことはな」

「ミネセン、大丈夫ですよ~。あたしピル飲んでるから」

「おま、恥ずかしいこと言うなよ!」


 ……ええ?


「じゃ、お先に! 他の三年もまあ、あんまり後輩の邪魔すんなよ」

 そしてドアの向こうに去っていく二人。いちゃいちゃとした会話が、しばらくは室内に届いた。

「……ええ、生徒会長って、あんなんだったん……」

「キャプテンとは犬猿の仲って、あれ、なんなん……」

 呆然とする二年生であるが、三年生は人を殺しそうな目をしていた。砂糖を吐いている者もいる。

「あいつら一年の頃はあんなんだったよ」

「篠塚が生徒会入ってからは変わったけど、隠れて付き合ってたしな」

「家隣だし、共働きだったから、まあやり放題つーか、親公認だろ」

「へへ、俺あいつの持ってたコンドームに、針で穴開けてやったことある」

 極めて物騒なことを言い出す三年。特に最後のやつ、お前は完全にアウトである。


「あ~あ~、俺たちも帰ろ」

「そんじゃ頑張れよ、後輩たち! 甲子園には応援に行くぜ!」

「つ~か俺は夏休みまで城研の活動あるけどな」


 次々と去っていった三年の背中を見送る、ジンの姿がいたましい。

「お、俺の必死の……あれはなんだったんだ……」

「ま、恋愛も青春のうちだろ。ほれ、一年キャプテン、しっかりしろ」

 岩崎に肩を叩かれ、ジンが正気を取り戻す。

「じゃ、じゃあまあとりあえず新人戦だけど、ナオが投げられ……ないよな?」

「ギリかな。調整期間考えると無理だけど」

「それじゃ新キャプテン!」

「え~、まあ北村さんの跡を継ぐので、基本は同じ方針です。練習も強制はしないけど、あれだけ凄い舞台を見ちゃうと、頑張った方が面白いと思う。それに今回の実績で、野球で大学行ける道も出てきたかも。そんな打算でキャプテン引き受けました」

 新キャプテンは隠さない腹黒のようである。


「じゃあもう、これまでの練習時間増加は終了ってとこか」

 直史は確認する。どちらにしろ彼は怪我人なのだが。

「お前は仕方ないだろ。まあ春までに、球速5kmは上げようぜ」

「え、俺、これからは勉強に集中したいんだけど」

 直史の言葉に、部屋の中の空気が凍った。

「おま! マジでほんと空気読めよ!」

 大介がマジギレしていた。




 直史は勤勉な人間である。

 別に練習が嫌いなわけでも、野球に飽きたわけでもない。

 優先順位の問題なのだ。

「いや、俺マジで勉強しないとダメなんだよ」

「んだよ。大学行くなら推薦で行けよ。つーかお前の成績で千葉大なら、普通に入れるだろ。プロに興味なくて大学野球にも興味がなくても、普通に野球しろよ」

「いやそうじゃなくて、野球の成績なんて全然意味ないんだよ。あと学校の成績とか推薦も関係ない」

 そう、直史は決めたのだ。

「俺、弁護士になるために司法試験を合格するつもりなんだけど、調べたらかなり難しいみたいなんだよな」

 直史の長文に、アホ組のシニア出身は、既に理解出来ない。

「俺の場合家庭の事情も考えると大学四年以内で合格を目指すから、大学三年までに四年分の単位を取得した上に、めっちゃ難しい予備試験合格して、その後に司法試験に受からないといけないんだ。それでも司法修習を終えた後、また国家試験があるから、本当に今から勉強しても可能かどうかすら分からないんだ」


 直史の説明を理解出来る者は、この場に二人しかいなかった。

 一人は実際の過程を知っている瑞希。だが彼女は直史の口にした未来の実現度の低さが分かっている。

 直史の学力は低くないというか高いのだが、前提条件がシビアすぎるのだ。

 もう一人はセイバーである。

 東大現役合格者の彼女が断言する。それは、東大に合格するよりもはるかに難しい。

「……私の友人にも弁護士はいましたが、東大の超天才に、一人三年で国家試験まで合格した人がいましたね。友人の彼女は法科大学院を利用して、五年かけたはずです」

 なるほど、ものすごく難しいということだけは分かった。


 直史は、価値観が違うのだ。

 お金を持たずに生活をする部族に、100億円を与えても、意味がないのと同じである。

 説得の材料が、ジンにはない。岩崎は説得することが正しいのかも分からないし、大介にはこれが、説得できることなのかも判断出来ない。

 だが、ここに一人だけ、直史を説得可能な人物がいた。

「すると佐藤君は、野球に専念できないということですか?」

 瑞希の問いに、答える気力のある者はいない。

 だがセイバーは客観的な現状を説明できる。

「全国制覇をするためには、それなりの練習時間が必要となります。私も法学の国試は受けたことがありませんが、かなり専門性の高いものでしょう?」

「じゃあ、私が協力します」


 そう、この中で直史と一緒に歩めるのは、瑞希しかいない。

「幸い私は父が弁護士で、法曹関連の人たちにも知り合いが多いので、効率的な勉強が出来ると思います」

 瑞希の提案は、確かに直史にとってもありがたいものではある。

「それなら、野球は出来ますよね?」

「それはすごくありがたいけど、瑞希さんは大変じゃないの?」

「忘れてませんか、佐藤君。私が書きたい野球部は、佐藤君も活躍する野球部なんですよ」

 微笑む瑞希に、野球部員のみならず、高峰やセイバーも同じことを思った。

(ああ、ええ娘や……)


「じゃあやるか。野球推薦で大学行くわけにはいかないから、ちゃんと勉強もしないといけないけどな」

 あっさりと判断を変える直史。まあ彼の中では、この変心は全くおかしなものではないのだが。

「やっぱピッチャーってめんどくせえ……」

 ジンは呟いたが、それは間違いである。

 もっと純粋に、佐藤直史という少年個人が、めんどくさいだけなのである。




 夏の大会編・完







 ――『白い軌跡 ~白富東高等学校野球部の日々~』  ノンフィクションライター、佐藤みずきの代表作。

 内容は登場する人物達の監修を受けて、完全に事実に基づいて記されている。ただ個人の記憶からの記述があるため、実際の記録とは異なる部分があり、そこには注釈がある。

 白富東高等学校野球部の、約二年間を詳細に記録したノンフィクション作品。序盤の新キャプテン手塚が指名された前後に、添削があると著者自身が述べている。


 白い軌跡は当初、白富東高校野球部の記録として、OBや地元向けに出版社を通さない自主製本で作られていました。

 後にプロや大学野球で活躍した選手の高校時代の第一級資料となりえるということで、改めて三年後に出版社から販売され、活躍した選手が長く球界にとどまったため、かなりのロングセラーにもなっています。

 著者の「佐藤みずき」はペンネームで、現実の彼女は法曹界の弁護士であり、本名で国際弁護士として活動し、プロ野球選手の代理人を務めることが多いことでも知られています。




×××


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