第36話 挑む者たち

 準決勝第二試合、最後の大きな山場は、七回の裏であった。

 一死から上総総合の四番伏見が、三塁線を破る二塁打を打った。

 足のない伏見を、確実に三塁に送って二死。

 三塁にいれば、何かが起こってもおかしくはない。相手のミスを期待するプレイではあるが、ヒットが出れば確実に一点は入る。


 しかしここからも、岩崎は粘った。

 速球を低めに集めて、最後の球は勇気の必要なチェンジアップ。

 この遅い球で三振を取って、完全に流れを断ち切った。


 九回の表には、四打席目の大介が、本来の左打席に入り、痛烈な一二塁間を破るヒット。

 そこから追加点が入り、結局3-0で白富東は勝利した。




「まあ、力負けだわさ」

 整列し、挨拶が終わり、応援への感謝の言葉。

 勝者たちの姿を背に、上総総合はベンチに入る。

 鶴橋の言葉に、選手たちは言葉もない。

「……一点も、援護出来ませんでした」

 不甲斐なさに俯く伏見の背を、ぽんぽんと細田が叩く。

「まあ、俺がなかなか上手くならんかったから~さ。甲子園は無理だったけど、神宮で頑張るさあ」

 高校野球の聖地が甲子園であるように、神宮球場は大学野球の聖地だ。


 この試合まで、細田が己の進路を語ることはなかった。

「だからよ~う、同じ大学行こうさ~あ。そんでバッテリーまた組めばいいさ~」

「おま、どんだけ偏差値違うと思ってんだ!」

「そりゃどっちかが合わせて、頑張ってセレクション取るって」

「そうだな~あ、上にもな~あ、教え子いっぱいいるから、上でやりたいやつは言えよ~お」


 高校野球は終わっても、人生から野球が消えるわけではない。

 鶴橋の教え子の中には、直接プロになった者はいないが、大学や社会人野球を経てプロになった者も数人いる。

 野球関連と広げてみれば、その伝手はかなり広がるのだ。


 細田は、上でやる選手だ。

 ようやく身長の伸びが止まり、これからトレーニングをしていくのだ。

「……うっす!」

 深く頭を下げた伏見は、高校野球最後のベンチから退くために、荷物をまとめるのだった。




 後に気付かれたことだが、夏の大会における白石大介の連続試合本塁打記録を止めたのは、上総総合の細田である。

 もっともそれが改めて注目されたのは、後に細田がNPBにおいてごくわずかな、白石大介と勝負が出来る投手と言われてからだったが。




 群衆の中を白富東の選手たちは、バスに乗って学校への道を進む。

「なんつーか、いくら準決勝だからって、うちのガッコの応援多すぎないか?」

「まあ話題性も高いしな。それに創立100年過ぎてるし、卒業者には色々お偉いさんもいるし、休日だからこれぐらいはまあ……って、やっぱ不思議だけど」

「つーかあと一つ勝ったら甲子園って、現実味ないんですけど」

「俺ら声出してるだけだしな」


 はしゃいでることもなく、どこか他人事のようにさえ語るのは上級生達だ。

 そもそも甲子園など全く夢にも思わなかったので、ここにきても良い意味で緊張感がない。

 試合に出る機会さえなかったメンバーも多いのだが、グラウンド整備などは率先してちゃんとやっている。

 俺たちは、脇役だ。

 しかし登場人物ではあるのだ。

 それになんだかんだ言って試合には出ている少数の上級生は、変なエラーもないところが、地味に凄いところである。

 セイバーの見る限りでも、緊張しているのはむしろ、実力では上回るはずのシニアメンバーだ。


 選手たちの精神的なケアは、セイバーの得意とするところではない。

 だから彼女は、目の前の勝利に向けて最善のデータを出す。

(九回を投げて被安打三、四球一、失点0、奪三振12、球数が119球……)

 終盤でも球威は衰えなかったが、相手の攻撃が粘り強く、球数を放らせることになった。

 それは確かに岩崎を疲労させたのだろうが、その状態でも四球を出さずに相手を封じたのだから、セイバーのデータの岩崎の期待値を、はるかに上回る内容である。

 つまり、試合の中で岩崎は成長している。

(それでもやはり予定通り、先発は佐藤君ですね)

 エンターキーを叩くと、先発のメンバーが表示された。




 今日の試合の反省は、とりあえず軽く流す。

 岩崎が頑張った、と、細田も凄かった、で意外に特筆すべきことがない。

 問題は明日の決勝戦である。

 シードもなく、途中で強豪との延長戦を制し、今日も接戦をまさに投げ勝った。

 勇名館。春の大会で勝った相手だが、あれは奇襲成功と考えていい。

 もちろんこちらも大きく成長しているが、あちらも対策は取っているだろう。

 こちらにとって有利と思えるところは、吉村がある程度消耗していることだろう。


「今日の東名千葉との試合ですが、まず先制したのは勇名館で、四回の表、四番黒田君のソロホームランでした」

 まさに突出した個人の力。それを象徴するかのような、得点の仕方である。

「東名千葉も六回の裏、この試合で唯一の連打で一点を取り、両者は拮抗、あるいはやや東名千葉が有利かという場面もあったのですが、九回の表、二死から三番の吉村君がヒットで出塁、四番の黒田君が敬遠され、五番の東郷君と勝負します」

 ここまで東名千葉は三人の投手で継投し、黒田のホームランを除けば被安打一の四球一と、完璧に近い内容なのである。

「この東郷君のタイムリーツーベースで二人が帰り、二点を奪取。その裏を吉村君が抑えて、結局3-1で勝利しました」

 吉村は131球、被安打五、四球三、失点一という内容である。

 平均値であれば、東名千葉が勝っていた。まさに吉村と黒田の力が発揮された試合だと言えよう。


「つーか東郷も打率高いし、満塁にした方が良かったんじゃねえの?」

「それだとエラーとかでも点が入るからなあ。考えにくいけど四球押し出しとか」

「代打攻勢ってのもあるしな」

「まあ黒田の打率は五割ぐらいだし、微妙な判断だな」

「単打に抑えられることを考えれば、勝負しても良かったのかもな」

 しかしそれは全て、試合の中でしか感じられなかったことだろう。

「まあ黒田君はこの試合、一打席目もヒットを打ってますからね。三打席目も割りといい当たりで、つまり黒田君以外を完全に封じてたので、勝負を避けたのも仕方ないでしょう」

 三打数二安打一ホームラン。確かにこれと勝負は出来ない。

 しかしそのぎりぎりで、よく東郷も打てたものだ。

「どうせなら延長で、もっと吉村に球数放らせてくれたらなあ」

 そんな本音に、ハハハと乾いた笑いが出る。


「さて、では先発メンバーを発表します」

 セイバーはホワイトボードに、メンバーの名前を書いていく。


一番 (中) 手塚(二年)

二番 (捕) 大田(一年)

三番 (遊) 白石(一年)

四番 (三) 北村(三年)

五番 (二) 角谷(二年)

六番 (右) 岩崎(一年)

七番 (一) 戸田(一年)

八番 (投) 佐藤(一年)

九番 (左) 中根(一年)


 上位はほぼ固定だが、下位はややいじっている。

 岩崎は肩や守備範囲、打力を買われてスタメンなのだろう。

 三年が北村だけというのは笑えるが、残りは偵察要員と弱小相手用のバッテリーなので当然である。

 直史は投球専念ということでこの打順か。中根はシニアの外野メンバーの中では、一番上手い野手だ。足も速いので、手塚と並べておくのも納得だ。戸田は守備力重視のシニア組の中では、比較的打力が高い。

 なんとも一年頼みのチームであるが、今更である。

「シミュレーションの結果だと、ほんのわずかですが勝率はうちの方が高くなる傾向にあります。まあ精神的な問題が重要とも思いますので、ベンチメンバーも全員が出場すると考えて、準備をしておいてください。ではキャプテン、他に何か?」


 前に出た北村であるが、こんな時でも変に威張ったところはない。

「なんと言うかまあ、世の中には変な事件が起こるけど、これもまあ、それに自分が巻き込まれた感じかな」

 緊張感のない、苦笑いを表情に浮かべている。

「さすがに甲子園が目の前にあってだな、そしてプロ野球が行われるような球場で、100年間の間に築かれた学校の縁故まである応援。これ絶対に、誰かガチガチになってエラーすると思う」

 笑みが全員に広がっていく。北村はこのチームに、闘志とか根性だとか、そういったものを求めていない。

 今更求めても、そう簡単に身に付くものではない。変にまとえば重たく動けない鎧になるだろう。


 彼が気にしていたのは、ある意味試合の行方とは全く関係のないものだった。

「それとさ、ナオのあの球、名前決めないか?」

 その提案に、誰もがきょとんとした顔をする。

「いや、スライダー系に分類出来るし、縦スラって言っても間違いないんだろうけど、あれまだ一回も打たれてないだろ? 他の変化球と思わせておいた方が、敵が勝手に勘違いしてくれていいと思うんだ」

 これも一つの情報戦なのだろうか。

 しかし『魔球に名前をつける』という行為は、選手を夢中にさせた。

 あるいは甲子園に行くよりも、魔球に名前を付けるということは、貴重な体験であろう。


 何人かの部員が、それなりの案を出す。だが、それではダメなのだ。

 球の本質を表した名前では、そこから相手が理解してしまう。特徴をつかんでいながら、本質を惑わすような名前がいい。

「難しいな。こうするーっと沈んでいくんだよな。原理的には縦スラなんだろ? 真っスラとかいう言葉もあるし、落ちスラでいいんじゃねえか?」

「大介、それだよ」

 適当に言った大介に対して、直史はびしっと指をさした。

「え? 落ちスラか?」

「いや、そうじゃなくてスルー」

 スルー。

 確かに球の特徴を掴んではいるが、本質にはかすりもしていない。


 スルー。それでいいのだろうか。

 ……スルーしてください。

「つーか試合前に気分転換で始めたはずなのに、いつまでもこれに時間かけてたら本末転倒でしょうに」

「まあ、確かにそうなんだが」

 北村も、自分でも夢中になっていただけに、罪悪感がある。

「それでは本人もそう言ったので、あの球の公式名称は『スルー』ということで」

 セイバーがそう締め、直史の魔球の名前は決定した。


 後に『魔球投手』とも『超変則投手』とも『超絶技巧派』などとも呼ばれる直史であるが、結局最も効果的で、最も多用したのは、この球である。




 直史のスマホには親しい人々からメッセージが入っていたが、急激に高まった彼の知名度に比して、その数は圧倒的に少ない。

 高校に入ってからは野球漬けだったので、クラスメイトとの交流も進んでいない。簡潔に言えばボッチである。

(二学期になったら、ちゃんと人間関係を構築しないと……)

 中学時代の友人や野球部員からは、さすがにメッセージが入っていた。まあ驚いているのが大半だ。

 親戚が多いので、そちらからも色々と連絡がある。面倒だが、さすがにそちらには連絡しておかないと、盆や元旦が面倒だ。


 親族以外からのメッセージは、どうせ明日の結果が出てからでいいだろう。

 ただその中で、一つだけ。

『試合見ていました。応援席の熱気がすごかったです。明日の決勝も見に行きます。怪我に気をつけて、頑張ってください』

『ありがとう。見ていてください』

 他に何か付け加えるべきか考えたが、頑張るのは当たり前だし、試合後のことを今から考えるのは判断にノイズが走る。

 結局それだけのメッセージを、直史は瑞希に送った。




 勇名館古賀監督は、野球部員を宿舎に集め、最後のミーティングを行っていた。

 60人からいる部員には、もちろん既に実質今年の夏が終わった、三年生達もいる。

 千葉県の八強を選ぶとすれば、まず選ばれるであろう勇名館は、そもそも創立してからまだ10年しか経過していない若い学校だ。

 しかし古賀は、この年を逃せばまたしばらく、機会はないだろうと計算している。


 勇名館の二枚看板は、言うまでもなく黒田と吉村だ。そして吉村にはもう一年ある。

 だが黒田が抜けた場合、その穴を埋める強打者の獲得は、今年ももはや不可能であろうと言われている。

 そして他の打者を鍛えたとしても、黒田の穴は埋まらない。


 それに捕手の東郷もだ。世間では投打の要である二者に注目しているが、彼もキャッチャーとして全ての能力が高いレベルにあり、さらには今日のようなチャンスに打てる。そんな東郷の代わりに、吉村の力を引き出せる捕手が育っていない。

 つまりこの夏が終われば、打力もそうだが投手力も、そして守備への指示を与えるということで守備力さえ落ちるのだ。

 良いキャッチャーの不足。それはある意味、球数制限のある投手よりも重要な問題だ。

 春日山の上杉がわざわざ昨年、今の一年捕手を勧誘に行ったという話も、頷ける話だ。

 新潟県の代表は春日山高校が既に出場を決め、上杉は弟とマウンドを分け合いながら、ノーノー二回、全イニング無失点という人間離れした成績を残している。


 白富東もいいキャッチャーが入ったものだ。タイプの違う一年生のダブルエースを、ちゃんと使い分けるリードをしているのだから。

「まず言っておく。春の大会ではこちらの油断や情報不足などがあり、白富東に足を掬われる形になった。だがあちらの戦力の成長は、こちらをはるかに上回っている」

 そう、この現実を選手に認めさせなければいけない。

「今日先発した岩崎も良くなったが、問題は佐藤だ。春も好投手ではあったが、もう別人と言っていい」

 春の印象では、粘り強いピッチングをする、打たせて取るタイプであった。

 しかし変化球主体という形は変わっていないが、打者を三振で切ることが出来ている。

「吉村、お前、蕨山相手にパーフェクト出来るか?」

「調子が良かったら出来ますよ」

 一年坊主と一緒にするなと、吉村は強気を崩さない。

 やる前から負けていたら話にならない。確かにこの気の強さは、吉村の投手としての長所である。

「七回で14個三振取れるか?」

「調子が良かったら出来ますよ」

 古賀は頷き、今度は黒田を見る。

「黒田、お前と白石、どっちが上だ?」

「言うまでもなく白石です」

 黒田は即答した。


 打率、出塁率、本塁打、打点、勝負強さ、塁に出てからの足、四球を選ぶ選球眼、三振の極端な少なさ。

 全てにおいて大介が優っている。いや、おそらく打者として見るなら、日本の高校生でも最強格だ。唯一弱点かもしれない部分を挙げれば、高校での試合経験の少なさになるだろうか。

「次の北村も好打者だ。東郷とほぼ互角だな。幸いキャッチャーの腕は、こちらがかなり上だろうが」

 しかし春の大会では、負傷退場するまで、あの一年のリードで完封されていたのも確かなのだ。

「一年が多いメンバーだが、エラーらしいエラーもない。打率はともかく、打席で粘って出塁する率が高い。相手が違うから単純には言えないが、今日の準決勝を除いては全てコールドで勝っている得点力がある」

 そしてよりにもよってその準決勝で、それなりに緊迫した試合を経験してしまった。圧勝ではない勝利の経験は、一年生にとっては大きなものだ。

 白富東は春とは比べ物にならないチームだが、この夏の大会の始まりと比べてさえ、大きく成長している。


「いいか、相手は一年生が多いチームだが、うちよりも格上のチームだ。まずそれを認めろ」

 古賀の言葉に、勇名館の部員は静まり返る。

「投手力は互角、打撃ではあちら、守備はややこちら、戦術はややあちら、監督の質は、タイプが違いすぎて分からん」

 肩をすくめる古賀に、ここでわずかに笑いが洩れた。

「つまりうちは上級生だとか名門とか強豪とかじゃない」

 勇名館の部室に掲げられた横断幕には「挑め!」と書かれている。

「お前達は、いや、俺たちは、挑戦者だ」




 具体的な対策は必要だ。

「まず、白石。正直こんな打者は見たことがない。ヒットもホームランも左右自在に打ち分け、バントまで出来るスイッチバッター。変化球で通用するものがないかとも思ったが、今日の試合を見る限りでは、すぐにアジャストしてくるな」

 歩かせた方がまだマシとも言えるが、その次の北村も好打者な上に、大介の盗塁成功率は極めて高い。

「極端な話、ホームランだけは避けるために全打席敬遠という手もあるが、それで納得するようなピッチャーは、うちのエースじゃないしな」

 吉村が肉食獣のような笑みを浮かべる。

「全打席勝負しろ。その代わり、次の北村を絶対に抑えろ」

 格上相手に強気でいかなければ、勝つことなど出来ない。


 そして投手の攻略だ。

「単純に、まず速度が上がってるな。MAXが135kmで、春からおよそ10kmも上がってる」

 この成長速度で行けば、やがて160kmも投げられる計算ではあるが、さすがにそれはないだろう。

「変化球で目立つのは……色々あるがまず大きいカーブだな。春にはキャッチャーの問題かほとんど投げていなかったが、夏はそこそこ投げている。カウントを稼ぐ時も決め球としても使える球だ」

 語りながら古賀も嫌な気分になってくる。このカーブだけでも種類が多く、しかも変化量やスピードを調整してくるのだ。

 カーブだけで七つの変化球があると言ってもいい。

「あと右打者の内角にはシンカーだ。これもまた鋭い変化のシュートと組み合わせて使ってくる。普通に膝辺りにスプリットを決めてくることもあるが」

 それだけでももう、ほとんど無限に近いバリエーションがあるのではないだろうか。

「そんなうんざりした顔をするな。さらにここに、緩急のバリエーションが増えている。春もスローカーブを使っていたが、どうやらチェンジアップを複数種使い分けているらしく、ゴロを打たせるのに使えるようだ」

 打てない剛速球を投げてくるわけではない。

 だがこれだけのバリエーションがあれば、ヤマを張っていても攻略は運次第となりそうだ。


 ここからまだ更に、古賀は告げなければいけないことがある。

 これは、ある意味認めがたいものなのだが、自分一人ではどうしようもなかった。

「そして蕨山との試合で使った縦のスライダー。ただどうも、春の縦スラとは違うタイミングで投げているのか、振り遅れて三振しているのが目立つ。特にクリーンナップには、これとカーブを組み合わせてストライクを取っているな」

 スライダーも横と、縦が二つで三種類ある。そう思われた。

「特に問題なのは、二種類ある縦のスライダーのうちの、速い方だ」

 これに気付いた時、最初は絶望した。おそらく初めてカーブやフォークを目にした人間も、同じ気持ちになったのだろう。

「どうもあれは違う球種なんじゃないかという情報があった」

 これは直接勝負した蕨山の打者が、監督に報告したものを又聞きしたものだ。

「実際に対決した打者曰く、ボールがバットから逃げていったり、すり抜けたり、完全に振り遅れになるそうだ」

 選手たちが顔を見合わせる。

 かつて野球マンガにおいて、バットの風圧によってボールが逃げていってしまうという魔球が存在した。

 もちろん実際はそんなわけはない。バットの風圧で動かないボールをわずかに動かすということは考えられるが、それならティーバッティングの球だって逃げていくことになる。


「このボールは魔球だ」

 古賀の言葉に、室内が沈黙した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る