第28話 勝ち進め

 ベンチに戻った北村を、セイバーはにっこりと笑って迎えた。

「北村君、いい判断でしたね」

「いや、ヒットなしで得点するのって、なんだかお得ですね」

 相手をここまで引っ掻き回せば、攻撃している方は楽しいだろう。


 打率を上げることなく、得点力をアップする。セイバーの理論は今のところ、完全に機能している。ダッシュの練習を繰り返したため、タイム自体は速くなっていなくても、メンバーの自信は増している。

 そもそもダッシュを繰り返すことは、野球の基礎練習の中でも最も重要なことだ。

「打率の低い下位打線はバントの構え。まあ普通に打つよりも、相手の考えることは多くなりますからね」

 プレッシャーとは、こうかけるものなのだ。


 七番もバントの構えをするが、すぐにバットを引く。

 二死の下位打線なので、素直にバッター勝負でいいのだが、キャッチャーが混乱している。

「監督も動揺していますね。もう一度タイムを使うか、いっそキャッチャーを替えた方がいいんでしょうけど、代わりのデータがないことから、控え捕手の経験は少ないことが分かります」

 ピッチャーを叩き潰して、キャッチャーを機能不全にし、監督を混乱させる。

 これでもう、勝負はもらったも同然だろう。


 七番を結局四球で歩かせたところで、ピッチャーとキャッチャーの意思交換が上手く出来なくなっていた。

 まともには打たれていない交代したピッチャーと、裏をかかれすぎたキャッチャーでは、精神状態が違う。

 キャッチャーは必要以上な怖れでボール先行のリードを行ってしまう。

 ピッチャーはそれに不満を抱き、何度も首を振る。ボール先行のリードなど、ピッチャーが嫌うのは当たり前なのだ。


 ただでさえ劣勢であるのに、内紛を起こしたらもう終わりだ。


「キャッチャーのサインは、ピッチャーの納得する範囲内でしか出せなくなります。そしてあとは、投げる確率の高そうな球種を選んで打つだけ」

 レフト前へのヒット。これで四点。

 九番が凡退したところで、ようやく一回の表が終わった。




 16対1。五回コールド。

 圧倒的な勝利である。


 心配であった守備の方も、鈴木が五安打一失点と好投。

 四球を出さず、スクイズも冷静に一塁でアウトを取り、充分な投球内容だった。

 最後の大介の、満塁場外ホームランは、やりすぎだとセイバー以外からも叱られていた。

 現在の白石大介のホームラン数は、高校通算24本。そのうち10本が公式戦である。


 応援の皆さんが、母校の快勝に気分を良くして帰って行くが、野球部員はミーティングである。

 集まったミーティング小屋で、着替えたセイバーが話し合いを開始した。


「それでは皆さん、今日の反省点ですが」

「はい! 監督の命令を無視した大介君が悪いと思います!」

「既にコールドだったのに大人気なく本塁打数稼いだ大介君は、鬼畜だと思います!」

「大介君はもう、高校中退してプロに行くべきだと思います!」


 超真顔で糾弾してくるチームメイトに、思わず大介も苦笑いである。

「いや~、それほどでも~」

「誉めてねーっ!」

 笑いながらの一同。どうにも締まらない。


「ただ、本当に問題はありますよ。彼が敬遠された時、後ろが打てないと点になりませんから」

 セイバーは野球の勝負を、選手として体験していないから、冷静な判断が出来る。

 大介の打率とホームラン数を考えると、歩かせた方が絶対にいい。


「彼の前の選手は塁を埋めること、彼の後の選手は彼を帰すこと。それを考えて、練習してください」

 そもそも勝敗を大前提と考えるなら、大介は間違っている。

 いや、これがプロの世界なら問題ないのだが、トーナメントなので間違っているのだ。

「もう今更遅いかもしれませんが、白石君は一試合に、二本以上ホームランを打たないように」

 そんな無茶な、と言いたくなるような命令である。

「勝敗を左右するには、相手よりも強い戦力を保有するより、相手に戦力を把握させないことが大事ですよ?」

 先発させてない投手力はともかく、打撃陣はかなり印象に残っただろう。

 足を絡めて得点を稼いだので、そちらの方が印象に残ってくれるといいのだが。

「白石君は野手の間を抜く打球や、フェンス直撃の打球を打つ練習を――」

「ちょっと待った!」

 珍しく北村が、真剣な顔で制止する。

 しかしその後の一言は、なるほど彼らしい気遣いに満ちていた。

「大介の打球を内野が至近距離で受けたら、人が死にます」

 ありえなくはないのが恐ろしい。


 セイバーはその言葉を反芻し、確かにそうだと判断した。

「そうですね、ではどうしましょう」

 部員一同の頭の中には、いくつかの野球の情報が詰まっている。

「そもそも大介相手とは言っても、全打席敬遠とかしますかね?」

 そのすぐ後の打席で、かなりの得点を上げている北村は、大介の敬遠はなんだかんだ言って、ヒット一本以上の価値があることを認めている。

「昔、甲子園で五打席連続敬遠ってのがあったよな」

「あ~、松井か」


 一同が生まれる前の話であるが、野球をやるからには知っている出来事である。

「私なら迷わず敬遠です。ルールの上で許されているなら、失点の期待値が一番低くなる方法を考えます。プロならともかく、アマチュアですから」

 セイバーはそう言う。まあ、勝敗を計算するならそうなのだろうが。

「俺も基本的にはありだと思いますけど、全打席ってのはちょっと。その後どうなったのかを考えると、失敗だったと思う」

 松井を敬遠したことによって、チームは確かに勝った。

 だが対戦相手に対する、その後の無関係な人間の嫌がらせや、松井の後ろで凡退した打者への非難を知っているジンは、それを語る。

 自分がキャッチャーで、大介を敵として迎える。

「一発同点までなら、勝負するかなあ」

 自分のリードなら、単打で抑えられるかもしれない。


 実際の試合では、一発出ていれば同点、逆転という状況であり、試合結果は一点差であった。つまり、敬遠は正しかったのだ。

 ルール上許されているのだから、過剰な演出を期待している観衆などには構わず、勝敗に拘る方が正しい。

 だが興行上の理由で、ルールの外でそれを強要されるのは面白くない。

「つーか、大介を敬遠しなかったから、勇名館は負けたわけだしな」

 結果論だが直史の言う通りである。

「そう、ですが白石君の打力が明らかになってしまったので、今後は敬遠される場面は増えるでしょうね」

 本当に大事なところでこそ打って欲しい。だから今は、あえて凡退や四球を選んでほしいのだが。

「そうは言っても、春日山の上杉兄ぐらいのレベルだと、俺だって打つのは難しいぞ」

 大介が投手をリスペクトするのは珍しい。まあ普段からことさらバカにしているわけでもないのだが。

 あの試合の上杉勝也の投球は、大介をして攻略は難しいと言わせるほどのものだった。

 そもそも上杉は今年のドラフトで、複数球団から一位指名確実の、超高校級投手なのだが。


 今日の試合自体は楽勝であったが、ジンとしてはセイバーの言いたいことも分かる。

 トーナメントの短期決戦用の論理を用いるなら、隠しておきたいことはあるのだ。

「次の三回戦は先発田中君、リリーフとして白石君を試します。ここもコールドを目指しますよ」

 冷静に強気なセイバーであった。




 白富東の二戦目、三回戦となる試合は、平日に行われたため公欠の取れるブラバン以外の応援が少ない、少し寂しい試合となった。

 しかしここでも白富東は実力を発揮し、12対2で五回コールドで勝利する。

 予定されていた大介への交代はなかった。ホームランは一本打った。


 この試合に勝てばベスト16となる四回戦、先発は実質的なエースの岩崎。

 参考記録ながら五回をノーヒットノーランで抑え、11対0で勝ち進む。大介はやはりホームランを一本打った。


 五回戦は裏のエースとも言える直史。キャッチャーは前の試合に続いてジン。

 2ストライクまでは打たせて取り、追い込んだら三振という配球で、散発二安打の完封。9対0の七回コールドであった。一回に大介のスリーランがあったのが効いた。


 かくしてベスト8が出揃った。

 事前の予想通り、準々決勝の相手は蕨山、それに勝てばおそらく準決勝は上総総合である。

 逆の山は東名千葉が勝ち上がり、若干の番狂わせは、ノーシードであった勇名館が、東雲を倒して上がってきたことぐらいか。だが実力的には意外とまでは言わない。

 吉村をそこそこ温存出来ているらしいので、準決勝で東名千葉と戦うかもしれない。争え……もっと争え……。

「俺はトーチバが来て欲しいな。春の借りを返したい」

 岩崎はそう言うが、春の敗北はシード決定後の消化試合であったし、ジンによるリードがなかった。また岩崎自信も格段に成長している。

「そんなことより準々決勝からはマリスタで試合だぜ。テレビで流れるんだぞ、テレビで」

 大介は東名千葉のピッチャーから打ってるので、それほどこだわりはない。

「いや、まずは目の前の蕨山のことを考えような」

 北村は苦笑して、さすがに興奮している一年生を抑える。


 だが野球部の快進撃は、全校レベルで有名になっている。

 既に夏休みに入っているので、一二年生を中心に全校規模で応援しようと盛り上がっている。

 さすがに受験を控えた三年は動員しないのが、進学校の所以であるが。

 生徒とその父兄、OBなどを合わせると、1000人以上は応援に来ることになる。

 テレビの地方局で放映され、当然ながら研究されることとなる。そこは不安であったが、セイバーとジンには成算があった。




 そしてここまで来ると、マスコミの取材や練習の見学なども、周囲を騒がせてくる。

 実際に地方紙の新聞社が、普通に取材にやってきた。専門誌のライターや、フリーのライターもやって来る。

 注目されるのは、ここまで一試合に一本は必ずホームランを打っている大介。そして監督のセイバーである。


 セイバーはその監督就任の経緯が特殊なため、高野連に確認をしてもらった。

 本人は野球どころか、キャッチボールさえ出来ない人間だが、経歴的にはMLBに関連している過去がある。

 そのあたりを厳しく尋ねてくるマスコミもいるのだが――セイバーには個人で雇っている、通訳やコーチだけでなく、ボディガードがいる。

 その気になればいっさいの雑音をシャットアウト出来るのだが、ジンがそれを止めた。


 マスコミというのは、基本的に寄生虫である。

 それ自体は何も産みださないのに、勝手に期待を煽って、それが満たされなければ叩き出す。

 セイバーはそれこそ日本よりタフなアメリカのマスコミを知っているだけに、最初は完全に無視するつもりでいた。

 しかしジンはそれこそ、父親から日本の野球マスコミについて叩き込まれている。セイバーの容姿や経歴も考えると、話すべきところは話し、マスコミを味方につけた方がいいと進言したのだ。

 深く溜め息をついたセイバーだったが、以降はマスコミの利用を考えるようになる。

 さすが、進学校白富東の中でも、全生徒を差し置いて最も頭のいい人間なだけはある。


 マスコミの中には、大活躍の大介に質問する者もいる。

「白石君は、どうして中学まで無名だったのかな?」

 そんなもん勝手に想像しろ、と言いたくなる大介。彼も相当にマスコミ嫌いである。

 だがさすがにそこまでは子供ではないと言うか、ジンに言い含められている。

「まあ、チーム自体が弱かったですしね。このタッパじゃなかなか中軸は打たせてもらえませんし」

 大介は無難に返したが、相手はまだ突っ込んでくる。


「お父さんもプロ野球選手だったんだよね? 野球をやり始めたのは、やっぱりその影響があるの?」

「俺が生まれた時には引退してたんで、関係ないですね。別に止められもしなかったし、薦められもしなかったし」


 この話題は大介の逆鱗に近いところに触れるのだが、それを恐れていてはマスコミは勤まらない。


「その身長も考えると、すごく努力したのは分かるんだ。お父さんの夢を叶えたいとかは思わなかったの?」

「親父が元プロだったのを知ったのは中学の時だったんで、全然関係ないですよ。お袋は、今スゲー喜んでますけど。あ、もう練習なんで」


 こんな大介に対して、直史はずっとマイペースである。まあ大介に比べれば、ずっと成績が大人しいからであるが。


「七回を二安打完封。春には勇名館と光園学舎相手に、いいピッチングをしてたよね」

「いや、ピッチャーの力をちゃんと評価するのは、被安打とか完封とかは、関係ないと思うんですよ」


 マイペースであるがゆえに、逆にこんな事態にもなる。


「へ、へえ。防御率とかには関心がないと?」

「ピッチャーの評価をするなら、ホームラン、四球、三振の三つが確実だと思います。他の数字は相手の打撃やバックの守備力に関係してますから」

「ほう、どういうこと?」

「ホームランは、打者が確実に得点出来る唯一のものですよね? つまりどれだけヒットを打たれても、逆に打たれなくても、守備力でその数は変わると思うんです」

「それは、確かにそうかもしれないね」


 直史のめんどくさい部分が発揮された。


「それと四球は、打者の選球眼はともかく、守備に全く過失のない出塁です。三振は全く守備を必要としないアウトです。この三つの要素が高いのが、本当のいいピッチャーだと思います」

「ああ、言いたいことは分かるよ。同じ一年生として、岩崎君と競うという意識はあるのかな? 勇名館の後半と光園学舎の試合では、君の方が活躍してたようだけど」

「それは単に、シニアで組んでたキャッチが負傷したからで、あと変化球主体の投手の方が相性がいいと判断されたからですよ」

 後に『最もマイペースな男』と呼ばれる直史であるが、やはりこの時も自己本位であった。悪いことではない。


 直史のマイペースさに対して、ジンは岩崎にはかなり付きっ切りであった。

 良くも悪くも直史は、周囲に影響されないか、周囲を無視する性格だと思ったからだ。

 それに対して岩崎は、周囲の雑音が気になるタイプだ。もっともシニアの頃と比べると、かなり精神的に成長したと思えるのだが。


「準々決勝の蕨山は強打のチームだけど、君が先発するのかな?」

「すみません、作戦に関連することはちょっと」

 こうやって岩崎を守るのである。

「進学校の白富東に進んだのは、大田君が誘ったと聞いたけど」

「ああ、うちは親も野球やってたので、旧来の野球強豪校のやり方には、ちょっと違和感があったんですよね」

 絡んでいくのはジンも同じである。ある意味一年生の中では、最も性格が悪い。

「新しいやり方で野球をしてみたい。キャプテンの北村さんの人柄とか、顧問の高峰先生のやり方とかを見て、ここなら楽しくプレイ出来るんじゃないかな、って。あと他の部も協力してくれたりしますし」

 野球に関してはいくらでも話せる。ジンもそういう人間だった。




 北村にも取材はあったが、ちょっと毛色の違う接触もあった。

「……東名大学の、スカウトさんですか」

「これから戦うかもしれない学校の上だけど、まあ基本的には関係ないからね。北村君は大学でも野球は続けるのかな?」

 北村はこれまでが無名すぎたために、この時点でもプロから注目されてはいない。ジンも父には言っていない。

 だがこの大会では打率四割を超えていて、ホームランも打っている。盗塁もしている。守備もいい。

 プロのスカウトはともかく、大学レベルなら育ててみたいと思う大学があるのはおかしくない。


「君ならセレクションは免除して入部出来るけど」

「お話は嬉しいですが、一応大学は東大を目標に、早慶を滑り止めにしようかな、って」

「え……」


 白富東は偏差値68の、県内有数の進学校であるのだ。

 今までにプロはもちろん、大学野球で活躍する選手も出していなかったので、大学側が知らなかったとしても不思議はない。

 ちなみに北村の直近の期末試験の順位は学年七位で、二年の手塚が五位であるのに続いて勉強が出来る。

 この下には三年と二年のベンチから外れたメンバーが学年20位以内をキープして、一年ではジンが九位、直史が13位といったところまでが優秀なゾーンである。

 シニア出身メンバーは、とりあえず誰も追試にはならなかった。


 またシーナにも取材があった。

 シニア時代にベスト8入りしているチームの中で、唯一の女子選手。

 それが今は、躍進した公立高校のマネージャーである。

 おっさん記者連中は、久しぶりの南ちゃん登場かと期待している。

 直史は認めないが、シーナは世間一般の審美眼からすると、割と可愛い顔立ちなのだ。

「甲子園に行けるかどうかとは、今は全然考えてません。目の前の試合に全力ですから」

 ユニフォームを着てバッピを務めるシーナのコメントであった。


 そして直接の接触はないが、真剣な目で練習を見つめる、プロフェッショナル。

「な~んであの子は、あんな体で飛ばせるんやろな?」

 関西弁のおっさんは、隣に立つ商売敵に聞こえるように言った。

「まあMLBにも170ないスラッガーとかいますけどね」

 大京レックスのスカウト大田鉄也は、本来自分とは違う担当エリアである関東に、この日はやってきていた。


 千葉県大会は準々決勝の後は、もう過密スケジュールである。

 その中でも調整の練習は行われ、投球練習が行われるこの日に、鉄也が連れて来たのは大阪ライガーズの関東地区担当スカウト服部であった。

 スカウト同士は球団が違えばもちろん敵同士なのだが、利害が一致したり、貸し借りの清算で、こういった同行があったりする。


「普通あんな弾道でホームランにならんで?」

「実際なってるんだから、仕方ないでしょうが」

「そんでまあ、打撃ばっかり目が行ってるけど、このチームさりげに投手もええんやんな? あの二人まだ一年やろ?」


 調整のために全力投球はしていないのだが、それでも熟練のスカウトの目は、才能を逃さない。

「左やったらもっと良かったんやけどなあ」

 直史が左で投げられることまでは、さすがに教えない鉄也である。


 まだ一年生である存在だが、スカウトは逸材を見つければ、中学生からでも動く。

 プロアマ協定があるので、むしろ中学生の方が、接触はしやすいのだが。

「そんで、お前が借りを返す理由はなんや? レックスは打てるショート欲しいやろ?」

「あいつについてはレッドソックスと密約があるんすよ。うちで取っても日本では四年しか使えないんで」

「なんかなあ。最近はええ選手がおっても、すぐアメリカ行きおるからなあ」

「ただあいつは母子家庭で育ってるんで、母親攻めたら上手く行くかもしれないっすよ」

「ほうか」


 声に感情を乗せない服部は、また視線をブルペンに戻した。

「細い方の子、ええな。腕がようしなっとる。なんぼぐらい出んの?」

「135ですね」

「一年でそれならいいなあ。肉つけたら三年の夏には145ぐらいまでは伸びるやろ」

(あいつはうちが狙ってるんだよ、クソが!)

「左の方はどうです? 実質はあっちがエースですけどね」

「ん……ちょっと時間をかけて見たいな」




 他にもスポーツメーカーの営業が来たりもした。これに対してはセイバーが、そつなく対応した。

 専用スパイクの製作や、バットやボールの供与などは、セイバーも実は行う予定だったのだが、それは来年度以降にする予定だった。

 しかしやがて自分がアメリカに戻ることを考えれば、ここは日本のメーカーとのつながりを作っておくのが、学校へも筋が通ることになる。

 セイバーはあくまでも冷徹に、長期的な運営を考えている。


 なお芸能関係やゴシップ関係に関しては、全てシャットアウトした。

 見た目は完全に白色系人種で、アメリカの企業に勤めていた彼女について追及された場合は、全て高野連に丸投げした。

 許可を出したのは高野連なので、責任も全て高野連にあるのだ。


 周囲が騒がしくなる中で、セイバーは高峰や北村、ジンと打ち合わせて、とにかく無関係な部分で選手に影響が出ることを心配した。

 なるほど高校野球とは、単に試合の中だけでは決まらないものであると、痛感した四者であった。

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