第9話

「それが本当なら、今この時代に生まれてきた、俺の子がいるんだな」

「そうだけど、受け入れが早いね」

「まあな」


驚かない。


「で、もし俺が『この時代では、我が子は幸せになれない』と言ったらどうなる?」

「今、君のいるこの未来は、消去される」

「消去?」

「うん。未来にはいくつもの選択肢がある。そのひとつが消えるだけ」

「じゃあ、その水子の妹はどうなる?」

「まだ、あの世に留まる事になるかな・・・でも、いつかは君の子として転生するよ」


そうなのか・・・


「まさかとは思うが・・・ゼル」

「何?」

「お前がその、妹というオチはないよな?」

「残念ながら、ないよ。私は天使だもん。死や転生という概念はない」

「不老不死?」

「死はない。その代わり・・・」


それ以上は訊くのをやめた。


「なら、俺もいるんだよな」

「そうだよ」

「そっか・・・」


未来は知らない方がいいだろう。

いい事も、悪い事も・・・


「で、どうする?この時代は・・・」

「俺の子が、幸せになれる時代かどうか?」

「うん」

「時代は関係ないだろう」

「どういうこと?」


間を置いて答えた。


「幸せになるのに時代は関係ない。どの時代も善し悪しはある。

『昔はよかった』は、美化に過ぎない」


ゼルは、笑顔で頷く。


「そういうと思ったよ。もっと詳しく見てみる?この時代」

「いや、もういい」


例えどんな世界でも、俺が守る。

巣立つその日まで・・・


「じゃあ、決まりだね。帰ろうか?」

「ああ」


こうして、俺とゼルは、元の世界に戻った・・・

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