SS4.after.意外な一面と、結局いつもの

 どうにも身体が痛くて、なにかが腕の中に収まっていた。見ると、それは一糸まとわぬ遥香だった。

 思考が追いつかなかった蓮也は、咄嗟に遥香から離れて頭を整理しようとする。が、どうしてか自分も全裸という非常に奇怪な状況に全く理解が追いつかなかった。


「ん……おはよう……れんやくん」

「あ、ああ。おはよう。うん」

「……どうして裸のなのですか!?」

「自分の格好も見てもらってもいいか!?」


 遥香は視線を自分の胸元へと落とすと、驚いたような表情をして、やがて納得したような顔をして頷いた。

 蓮也も、ようやく思い出した。遥香の誘惑に負けたことを。自分を律することができなかったことを。わりと、自分の遠慮がなかったことを。


「そういえばしましたね」

「記憶が飛んでた……」

「いろいろと痛いです」

「ごめん、大丈夫か?」

「ええ、大丈夫です。が、思ったよりも遠慮なくされたのでちょっとびっくりはしましたよ」

「本当にごめん。それとできれば忘れてくれ」

「我慢してたんですよね」


 よしよしと頭を撫でられて、咄嗟に逃げる。それが拒絶ではなく羞恥から来るものだとわかっている遥香は、にやにやしながら追いかけてきた。

 朝から裸で何をやっているのか甚だ疑問だったが、お互いなにかが吹っ切れたことで今まで特になかった遠慮がさらになくなったような気がして、そしてより一層遥香が可愛く見えた。


「めちゃくちゃ遥香が可愛い」

「ああ、それは一時的なものかと。本気で愛する人と、その、アレをすると、女性ホルモンの分泌がどうとかでお肌が綺麗になります」

「冷静な分析は別にいらないんだけど……」

「ここで何らかの分析をしないと私は自分がめちゃくちゃ可愛いことを認めることになるので嫌です」

「心配しなくても遥香はいつだって可愛いよ」

「黙って」


 真面目な声で怒られてしまったので黙っておく。それが本心だとわかっているからか、より一層遥香の顔は赤い。

 結局のところそういうところが可愛いのだが、それを今言ってしまったら怒られるのは目に見えている。


「……はぁ、結局なんにも変わらないものですね」

「そうだな。まあ、そんな簡単に変わる関係でもないと思うけど」

「そりゃそうです。変えてやるもんですか」

「俺が遥香を手放さなくても、遥香はずっと一緒にいてくれそうだな」

「当然でしょう」


 そうしてまた蓮也が駄目になっていくのだ。遥香曰く蓮也がいることで十分に遥香も駄目になっているらしいが、特にそんなことはないように思える。基本的に蓮也が堕落の一途を辿っているだけだ。


「安心してくださいな。これからもずっと一緒にいますから」

「知ってるよ」

「というか、蓮也くんを受け入れてあげられるのは私だけな気がします。いろんな意味で」


 それは普段の生活面のことはもちろん、どこか昨日のことも含めているような気がして、蓮也には目を逸らすことしかできなかった。

 そんな蓮也を、遥香は楽しそうに揶揄うのだった。

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