36.まだ何も決まっていないけれど
春休みに入って、出された課題も終えた。あとはもう、新学期を待つだけ。
蓮也と遥香はソファーに並んで座る。いつもの光景、いつもの日常。それは何も変わらないし、変えたくない。
「クラスメイトとも、せっかく仲良くなれてたんですけどね」
「まあ、お前ならすぐに打ち解けられるだろ」
「私はそうかもしれませんが、蓮也くんですよ」
「俺は……まあ、お前や翔斗たちがいたらそれでいい」
「よくそんな恥ずかしい台詞を言えますね」
「この前似たようなこと言ってたぞ……?」
「あれ、そうでしたっけ?」
そんなことを言いながら楽しそうに笑う遥香を隣で見ていられることも、日常になっている。これが幸せなのだから、蓮也がどれだけ単純なのかを思い知らされる。
「新しいクラスでも、一緒ならいいですね」
「そうだな」
同じクラスにならなかったら蓮也は遥香を好きになっていなかったかもしれない。遥香も、蓮也の世話なんてしなかったのかもしれない。
ことん、と。遥香は蓮也の肩へ頭を乗せる
「大学も、同じところに行けたらいいですね」
「そうだな。それに関しては俺も頑張らないと」
「私が変えてもいいんですよ……?」
「それは駄目だ」
遥香は比較的レベルの高い方の大学を目指している。それを蓮也に合わせて下げさせるのは、申し訳ない。
「頑固ですね」
「悪いか」
「いえいえ。お互いに頑張りましょうね」
「おう」
言いながら、蓮也は遥香の頭を撫でてやる。目を細めながら、ご機嫌に鼻歌を口ずさんでいる。
関係は変わっても、その距離は変わらない。蓮也と遥香の隣の距離は、近いようで遠くて、その距離が心地よくて。二人にとってその距離は日常になった。きっとそれは変わらない。
「これからどうなるかなんて、そんなこと全くわかりませんけど……」
「ん?ㅤどうした?」
「これからもずっと、私の隣にいてくれますか?」
「……おう」
その眩しい笑顔を、蓮也は直視することが出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます