第2話 翌日
朝、家を出ると萌笑も同じタイミングで家から出てきた。何やらあせっているようで、髪の毛を抑えながら飛び出してきた。朝からかわいい。
「あ、萌笑。おはよう」
「あ、え……お、おはよう!」
顔を真っ赤にして走って行ってしまった。
俺は何かをやらかしてしまったのだろうか。いつもだったらこういう時は一緒に学校に行っていたのだが……
最近は俺のほうが遅くてなかなか一緒に行っていなかった。だから飛び出してきた萌笑を見たときはうれしかったんだけど……
「はあ……」
萌笑に避けられたなんて、ショックで寝込みそうだ。
………………
………
…
学校でも、話しかけると逃げられるというのが続いていた。
「俺、何かしたかな……」
「してないとおもうよー」
「ああ、木村か」
俺の独り言に返事をしたのは誰かと思って振り向くと、そこには萌笑の友人の木村有海がいた。
「…俺、萌笑に避けられてるんだよ。なんでだと思う?」
木村だったら、おんなじ女子だし、よく萌笑と一緒にいるからわかるかもしれない。
「昨日、八島君は萌笑から何か相談された?」
「………された」
俺が聞いてはいけないことだったと思うけど、一応相談はされた。
「まじかー……本気でしてたんだ、萌笑」
「内容は知ってる?」
「知ってる。っていうか八島君が萌笑に女友達に相談しろって言ったんじゃないの?」
「……そういやそうだわ」
昨日は気が動転してたから、よく覚えていなかった。
「あの後、私たちのところに相談しに来たんだよ」
「…へえ」
「それで、萌笑の感情がどういうものなのか事細かに教えてやったらさ顔真っ赤にして逃げ出しちゃってさ」
「なるほど……」
「私たちに知られただけでそうなってるんだから、八島君と目を合わせられるわけないよね」
「……確かに」
じゃあ、萌笑は俺のことを嫌ってはいない。というか多分好きだと思う。
なんせ昨日のあの出来事があったから。ほとんど告白だし。
「え、じゃあさ。どうすればいいよ、これ」
「……さあ?自分で頑張ってみな」
そう言って木村はどっかに行ってしまった。
「昨日言われたことをもとに考えると………俺、かなり萌笑に好かれてるよな」
自分で言うのも恥ずかしいし、うぬぼれみたいになってしまって嫌なのだが、これはもう確定みたいなものだろう。
「……はっず」
正直めちゃくちゃ嬉しい。
ずっと、ずっと好きだったのだ。小学生のころから気になっていた。中学生になってから、頑張っている萌笑を見て、もっと好きになった。
高校生、振り向いてもらうために、というか男子として意識してもらうためにかなり努力をした。
だからこうやって萌笑に好かれているということが分かるのはうれしかった。
告白、するかな。
今までは一度告白した時のあの反応でかなりトラウマになっていた。でも、男子として意識されているのだったら今告白してもいいんじゃないか…?
相手の気持ちがわかってから告白するなんてずるいだろうか。
でも、萌笑ともっと一緒にいたい。この気持ちに偽りはない。
告白、しよう。
………………
………
…
告白を決意してからずっと萌笑を探していた。
いつもは部活に行っているけど、今日は休みだ。一度家に帰ってそこから萌笑の家に行ったが、帰っていなかった。
少し、心配だ。
萌笑は友人と出かけたりしていない限り一人では出かけないほうだ。それは自分でも言っていた。
「どこにいるんだろう…」
木村達には確認をとった。萌笑が出かける予定はないそうだ。にやにやしながら言われたがかまっている暇はない。
「萌笑が一人でよく行く場所……か」
小さいころ、萌笑が落ち込んだり悩んだりしたときによくいた場所がある。
「行くか…」
なりふり構ってはいられない。もしそこにいなかったとしても違う場所を探せばいいんだ。時間はかかるけど、萌笑のためだ。いや、自分のためか?
まあ、いい。
不思議と、萌笑はそこにいる気がした。
俺は、萌笑を探しに自転車を走らせた。
………………
………
…
「萌笑」
思っていた通り、萌笑は小さいころ二人でよく遊んでいた神社の入り口でしゃがみこんでいた。
「柊斗、君?」
萌笑が、少し恥ずかしそうに身じろぎをして、視線を逸らす。
「前に、一回伝えたことあったと思うんだけどもっかい言いたいことがあって」
「…は、はい」
萌笑の正面にしゃがみこむ。
「ずっと好きでした。俺と、付き合ってくれませんか?」
萌笑があわあわと、焦って手を振り回している。
途中で落ち着いて、自分が何を言われたのか理解したのか顔がだんだんと紅くなってくる。
「………わ、私でよければ……よ、喜んで」
「萌笑の気持ちがわかってから、自分の気持ちを伝えるなんてずるいかなって思ったけど……」
もっと一緒にいたい。
「この気持ちを萌笑に伝えたかった」
「…柊斗君」
いまだに顔の赤い萌笑が語る。
「昨日ね、有海ちゃんたちに相談したの。そしたらね、わ、私が柊斗君を……す、好きなんだって……」
恥ずかしそうに顔を下に向けて、居場所がなさそうな手で髪をいじる。
「今までね、そ、その異性を好きになるって感覚が分からなくて……っていうか今もよくわからないんだけど………」
一度小さく顔を上げてこっちを見て、すぐに慌てて視線を逸らした。
「柊斗君と……一緒にいると胸があったかくなるの……だから……」
自分の心臓もいつもより早く音を立てているように感じた。
「私、多分柊斗君のこと……大好き………なんだと思う………」
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