超鈍感幼馴染が恋愛初心者すぎて困ってます
二歳児
第1話 恋愛相談
俺──八島柊斗には、好きな人がいる。
楠原萌笑という幼馴染だ。ずっと一緒にいた、というわけではないのだが親同士の付き合いがよく、小さい頃もたまに遊んでいた。
小学校に入ってからはどちらの家族も忙しくなってしまってそういう機会は減った。
そのまま中学生も流れるように消えていった。萌笑とは仲良くはしていたのだが。
一人で部屋で過ごすときに、いつの間にか萌笑に会いたいと思うようになっていた。夜寝る前に思い浮かぶのは、あのはじけるような笑顔だった。
その感情が恋慕だと気が付くのには時間はさほどかからなかった。でも…………
「……はあぁぁぁああぁあ……………」
萌笑、超鈍感なんだよなあ…
中学生の時に一度告白したことがある。断られもしなかったが、私も好きだよ!と言われた。
嫌な予感がして確認したら友達としてだった。
いや、違うだろ。そういうことじゃないんだよ。なんで高校生にもなって恋愛というものを微塵も理解してないんだよ。
思い出しているだけで悲しくなってきた。
あれがトラウマで三年間、告白するのもされるのも経験していない。おかげで俺も彼女いない歴=年齢だ。
ま、萌笑が彼女じゃなければ意味はないんだけど。
………とりあえずこんな不毛な話をしていても仕方がない。生産性のある話をしよう。
まず、萌笑の魅力についてだ。この議題だったら一週間は語り続けられる気がする。
一つめ、笑顔が可愛い。萌笑は自分が好きなことをしているときに浮かべる笑顔がとても自摸なく魅力的だ。小さい子供のあどけなさを残しながら、JKの可憐さを表している。
二つめ、優しい。友達から相談を受けたり、誰にも分け隔てなく良心を分け与えている。
え?長くなるかって?
なるに決まってんだろ。
………………
………
…
「……つっかれた…………」
学校で、地獄のように長い授業を受け終えた。まだ疲れてもうろうとしている頭に抗いながらだらだらと帰りの準備をする。
「あ、あの……柊斗君…ちょっといいかな」
聞きなれた声が聞こえて顔を上げると、顔を少し赤く染めた萌笑がいた。
「いいよ」
萌笑に呼ばれたんならほかにどんな用事があってもほっぽり出していく。
最近なぜか目を合わせたりするとそっぽを向かれたりしていたので少しうれしかった。
「だ、大事な話があるの」
「なんの話?」
もしかして、やっと萌笑も恋心というものを理解してくれたのだろうか。
そうしたら、前の告白の返事をしてくれるのだろうか。断られるのだったら嫌だな。
「……恋愛相談、かな……多分そうだと思うんだけど…………」
俺に相談するってことは………そういうことだろうか。
胸の内を鋭い痛みが刺す。嫌だ。聞きたくない。
ずっと、ずっと好きだった。ずっと萌笑のことを見てきた。それが、こんな形で裏切られるなんてな………萌笑は悪くない。勝手に期待した俺が悪かったのかもしれない。
でも、萌笑が困っているのなら……仕方ないか。
覚悟を決めて萌笑に向き直る。
「さ、最近ね……柊斗君のことをいつの間にか見つめちゃってることが多くなってきてね……」
ん?
「そ、それでね……そうしてると、胸がきゅーってして、顔が熱くなってきて、恥ずかしいけど幸せな気持ちになるの。でも、すっごい苦しいの……私おかしくなっちゃったかな………」
俺は、何を聞かされているんだ?理解が追いつかなくて頭の中がぐちゃぐちゃになる。
「ちょ、ちょっとまってくれ!!!多分それ俺に話しちゃダメなやつだと思う!!」
「え……だめ…なの?」
悲しそうに眼を潤ませて上目使いで聞かれる。
「だめじゃな……違う違う。そういうのは友達に相談したほうがいいんだよ」
「柊斗君は………友達じゃないの?」
より一層悲しそうな顔をしないでくれ。罪悪感が膨れ上がりまくって大変なことになってるから。
「と、友達だ!でも、そういうことじゃないんだよ。女友達ってことだよ」
「……わかった。ちょっと聞いてみる」
萌笑は、まだ納得していない表情だがそう返事をした。
萌笑がさっき言った内容を思い出す。いつの間にか、俺の方を見てる。そうしていると胸の奥の方が締められるらしい。
これってあれだよな?ちょっとは期待していいやつだよな?
……でも、なんでよりによって俺に相談したんだろ。
「…なんで俺に聞こうとしたんだ?」
「い、一番……仲がいいから…」
萌笑は少し恥ずかしそうにしながらそうつぶやいた。
俺は、萌笑の中で一番……
「ありがとう。嬉しい。じゃあ相談してきな」
「うん。柊斗君もありがと」
ぱたぱたと足音を立てて走っていく。
かわいすぎだろおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉぉ!!!!!
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