エピローグ 始まりの図書館で


 今の季節は7月。もうすぐ夏休みが待っている時期だ。


俺は、いつものようにあの図書館に向かっている。この道もなれたもんだ。


見慣れたドアを開け、俺は部屋に入る。


「こんにちは」


そういって、部屋の中を見まわすと、意外にもきれいに本が整頓され埃っぽかった空気もきれいさっぱりなくなっている。


 そのまま、俺は奥に進んでいく。そこには、ゆりかごに揺られうとうとしているおばあさんがいて。


 その奥にいる白く輝く透き通るような髪を持った女の子に声をかける。


「よっ。部屋、きれいにしたんだな」

「うん....!」


 あかりは、あれから学校には行っていない。それでもこうして図書館には毎日来ている。


「もうすぐ、夏休みなんだよな」

「そうなんだ....!」


最初は、なかなか話せなかったあかりも俺と二人だけならこうやって話せるようになった。これも前を向いた結果なのかもしれないな。


「そういえばさ。もうすぐ夏休みだからみんなでどこか出かけたいなって話をみんなでしてたんだよ」


あかりには吉田と赤井の二人には、あかりのことを話したことは伝えた。

 

 そして、今回も懲りずにあかりにこういって問いかける。


「俺達と一緒に、行かないか?」


俺はこうして、たまにあかりに出かけないかと誘っている。もちろん、白雪はなかなか承諾はしてくれないがそれでも二人と出かけるときにはなるべく誘ってみるようにしているのだが。


「ねえ、ゆうすけ....?]

「ん?」

「わたしが行っても、本当に迷惑にはならないかな....?」


 俺は、その言葉に驚いた。あかりがそう言ってくれたことが初めてだったから。


 これも、前に進もうとした結果なのかもしれない。


「一緒に出掛けるか?」


少しだけ迷うようなそぶりをみせた。そりゃあそうだ。あかりだって誰とでも話せるようになったわけではない。それでも、あかりは行くそぶりをみせたのだ。


 ......あかりが急に心変わりしたきっかけは、わからないがそれでも一緒に行く気になってくれただけで大満だ‼


おずおずとだが、それでもしっかりとした声でこう言った。


「うん!!」


その声は、彼女のまっすぐな心を表しているかのような声だった。





 あの時から、俺が完全に変わったかは微妙だ。でも、あかりが自分なりに前に進むと決めたんだ。俺も少しずつでいいから、変わっていけるといいな........。

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