第8話あの日の言葉


 あのデート以来俺は白雪とあっていない。


「ゆうすけ~。今日暇~?」


俺は教室で吉田に声をかけられたがどこかで遊ぶ気にはなれなかった。


「わるい。今日は用事」

「そっか~じゃあしょうがないね~」


少し悪い気がするが今はいかないといけない場所があるから。





 今日も変わらずおっれはあの図書館に来ていた。


「こんにちは」


そういって、図書館に入っていったが返事はない。中に入っていくと、そこにはいつものようにゆりかごの上で寝ているおばあさんだけだった。


 椅子の上でいつものように待ってみる。そうして、一時間、二時間と過ぎていった。そして、またいつものように家に帰る。こうしたことが、もう一週間たとうとしていた。


「くそ、何があったんだよ」


あのデートの日、確かに最後雰囲気が変わったような気がしたが俺はあのときおかしなことは言ってないはずだが、どこか気に障るようなことを言ってしまったのか?


「くそ、モヤモヤするな」


どうして白雪は何も言わず急に来なくなってしまったのか。どうして、どうして......





 俺は、いつもどおり学校に来ていた。


「おはよ~最近元気ないね~」

「吉田」


最近の俺は、そんなに元気がなさそうにみえるのか。


「なんだよ」

「まあまあ!そんなにケンカしないの」


赤井もなんだよ。今の俺の気持ちもわからないくせに。


「なんかさ~ゆうきぼくたちに、言ってないことない?」


すこしだけいや、いつもよりもずっと真剣な声のような気がした。


「そうそう、あんまり放課後集まらなくなったしね」

「別に、もともとこんなんだろ。俺は」


そうは言ったものの、少しだけ二人に罪悪感があった。


「ゆうすけは~ぼくたちのこと、どう思ってるの?」

「!......」


俺は、すぐに「友達だよ」と言えなかった。なぜだかわからないが、自分の気持ちを正直に伝えられなかった。

 

 そういえば、思えばあの時も......


 白雪は、真剣な目で俺に意見を求めていた。でも俺は、ありきたりの、自分じゃない別の誰かが考えたことばを言ってしまった。


そのとき、ちょうどよく担任が教室に入ってきた。二人が席に戻る姿を俺は見ていることしかできなかった。


あの時の俺は、なんて言いたかったのだろう。

今の俺は、なんて二人に伝えたいのだろう。


その答えは、一日考えても空っぽのままだった。





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