第3話約束の日曜日
次の日も、俺は同じ時間にあの図書館を訪れていた。
「こんにちわー」
すると、奥の方から昨日はずっと寝ていたおばあさんが出てきて、
「あかりちゃんはぁ、まだぁ、きとらんよぉ」
と言った。
(いや!昨日は完全に寝てたじゃん!何で知ってるの!)
という言葉を何とか我慢し、
「あ、はい」
とだけ、返事した。それからあかりが来るまで、本を読んで待っていたが突然
おばあさんが、
「あかりちゃんを、よろしくねぇ」
と言われふいに言われ
「あっはい」
としか返事が出来なかった。このときのおばあさんの目はとても真剣な気がした。
*
それから少し経って、白雪がやって来た。今日も光輝く白鳥のような綺麗な髪だ。
「あ....あの、あ....あんまりじろじろ見ないで......」
「ご、ごめんつい」
そこから少しだけ気まずい沈黙が続いたが、それも時間が経てば気にならなく
なった。
それからは昨日と同じように、時々本を読んだり話したりして過ごした。
「白雪は趣味とかないのか?」
「か....可愛いものとか......」
「いやいや具体的に」
「ひ....ひみつ......」
そんな話を二人でしている時、今日は起きてるおばあさんが、
「あかりちゃんはなかなかねぇお買い物とか行かないからねぇ」
「だ....だって一人じゃなかなか....」
白雪はやっぱりというか、予想どおりというか、インドア派のようだ。
「どこかにねぇ、いっしょにねぇ、出かけてあくれる人はねぇ、
いないのかねぇ......」
どうしてそこで俺をみる....。
「だ....だいじょうぶだよ......」
まあ、白雪がいいっていうなら、俺は何も言わないが....。
というより、俺はもともと人に頼られることは避けたいはずなんだが......。
どうしてなんだろうな....。
*
その後も、俺は白雪の相手をしながら、いろいろなことについて話した。
「そういえば、この近くに新しく喫茶店がオープンしたらしいな」
「う....うん。おしゃれだったね......」
まあ、このあたりに新しい店がオープンすること自体が珍しいのだが。
「あそこの、フレンチトーストすごくおいしそうだった‼」
「お、おう。そうか」
ここで、白雪は今の発言が恥ずかしくなったらしい。顔をリンゴのように真っ赤にしている。
「い、いや、いいと思うぞ。俺は」
「う....うん」
「というか、いつもさっきみたいにはきはきしゃべればいいのに....」
よほど好きなんだろうな、フレンチトーストが。
ここで、俺はおばあさんの言葉を思い出した。
「なら、今から行ってみるか?」
「え、でも....わ....わたし....お金持ってないし......」
「まあ、それくらいなら別にいいよ」
「ほ....本当に....!」
一瞬興奮したように詰め寄ってきたが少し顔を暗くして
「で....でも、わ....わたしと出かけてもいいの....?」
「?別に構わないけど....」
白雪は、何を気にしているのだろう?
「じゃ....じゃあ、少し待ってて!....」
そういって、急いで奥の方へ走っていった。
おばあさんが嬉しそうにこちらを見ているような気がした。
*
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