第25話
それから私はプーちゃんのことを受け入れた。
受け入れたといっても始祖竜ってところにはかなりの違和感があるけれども。
なんで私が始祖竜の母親的存在に選ばれたのかはまだわからない。
プーちゃんに聞いてもなんとなくとしか答えてくれなかった。
「おおっ!始祖竜様。今日も麗しい鱗ですな。どれ、その麗しい鱗を今日こそ一枚いただけませんかな?」
「断る。痛いのは嫌なのだ。」
プーちゃんと仲直りはしたんだけれども、プーちゃんが始祖竜だとわかってからトリードット先生がかなりうざい。
って、先生に向かってうざいって言っちゃダメだった。
ええと、トリードット先生は非常に煩わしい存在になった。
って、これもあまり良くないか・・・。
じゃあ、始終まとわりついてきてうざい・・・。
って、またうざいって言っちゃった。
もう、しょうがない。
トリードット先生に面と向かって言わなければいいよね。うん。
まあ、そんな感じでプーちゃんが始祖竜とわかってから毎日のようにトリードット先生が私の元へとやってくるのだ。目的はプーちゃんだけれども。プーちゃんと私は常に一緒にいるので必然的にトリードット先生と私も会うことになる。
邪竜の卵が孵るまでは頼れる先生だったのに、なぜこうなったんだろう。
「あらぁ~ん。始祖竜様ぁ~。怪我を治してくれてありがとうございますぅ~。始祖竜様が治してくださった怪我がちゃんとに治っているか確認しませんかぁ~?」
「我がポカをしたというのかっ!?」
そう言ってこちらにすり寄ってくるのはジェリードット先生だった。
お色気ムンムンの服装でプーちゃんにしな垂れかかってくる。
が、プーちゃんは手のひらサイズの蛇なので必然的に私にしな垂れかかってきている。
こちらもうざいことこの上ない。
ジェリードット先生も邪竜の卵が孵るまでは普通の頼りになる先生だったのになぁ。
どうしたことか。
「プーちゃん・・・。先生方がなんだか怖くなっちゃったね。」
「うむ。まさかここまで影響が出るとは思わなかった・・・。」
プーちゃんが私の肩で疲れたようにガックリと項垂れた。
「ほんとね、ひどい有様だわ。見ているこっちも疲れてしまうわね。」
そう言ったのはアクアさんだった。
アクアさんと私は一緒にいることが多いので必然的に、トリードット先生やジェリードット先生と鉢合わせる回数が増えているのだ。
というか、プーちゃん今、なんて言った。
なんか、先生方の性格が極端になってしまったのには訳があるような言い方だったんだけれども・・・。
「プーちゃん、影響ってどういうこと・・・?」
プーちゃんが先生方がこんなに欲望むき出しな状態になってしまったことに関して何かしら知っていそうなので念のため確認してみる。
「ふむ。我の血を飲んだからなのだ。」
「はあ?」
「・・・理解ができないわ。」
驚いて思わず変な声が出てしまった。
アクアさんも驚いたのか、頭を抱え込んでしまっている。
というか、なぜ先生方はプーちゃんの血を飲んだのだろうか。
「えっと・・・。どうして、トリードット先生とジェリードット先生はプーちゃんの血を飲んだの?」
「ん?母があやつらの治療をするように我にお願いしたであろう?」
「えっ。もしかして、治療って・・・。」
「うむ。我の血を飲ませたのだっ。」
プーちゃんの言葉に思わず顔色が青くなる。
つまりは、プーちゃんがトリードット先生とジェリードット先生を治療するためにプーちゃんの血を飲ませたということ・・・?
えっ。ちょっと待って・・・。
プーちゃんって信じたくないけれども始祖竜なんだよね?
そんな始祖竜の血なんか飲んでしまってトリードット先生もジェリードット先生も大丈夫なのだろうか。
アクアさんも私と同じ結論に至ったのか同じように顔を青くしている。
「・・・プーちゃんの血って。先生たちを治癒させるにはそれしか方法がなかったの?」
「うむ。精霊王が治癒出来ねば我の涙か血を飲ませるしかないのだ。だが、涙は人前で流すものではないと教わったのでな、今回は血を一滴ずつ飲ませてみたのだ。」
事も無げに告げるプーちゃんに青い顔をしたままたのアクアさんがポツリと呟いた。
「・・・始祖竜の血って、不老不死の効果がありませんでしたっけ・・・?」
「えっ!!?」
その言葉に私は思わず息を飲む。
アクアさんの言葉が本当だとしたら私は知らず知らずのうちにトリードット先生とジェリードット先生を人外の存在にしてしまったことになる。
まさか、プーちゃんに治癒してもらうことが先生方を人外の存在にしてしまうだなんて思ってもみなかったのだ。
だから、あの時精霊王が警告したのか。
「ふむ。不老不死の効果があると言われている。あとはちょっとだけ欲望に忠実になる。」
「・・・げっ。」
「・・・あぁ。」
プーちゃんの血の力の説明に思わず私とアクアさんの声がハモる。
まさか、本当に不老不死になるとは・・・。
そうして、トリードット先生とジェリードット先生の様子がおかしいのもプーちゃんの血を飲んで、欲望に忠実になっているかららしかった。
私はもしかして、先生方の人生を歪めてしまったのだろうか。
そう脱力してトリードット先生とジェリードット先生を見つめた。
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