第16話 チホ
さっき研究所で上がっていた煙は一体……。とにかく、早いとこチホさんが話していた基地に向かわないと。
僕はチホさんの遺言に従い西に飛んで向かう。それからだいぶ進んだ後小さな点が見え、やがてそれは巨大な全貌を見せた。
その巨大なものは五稜郭の大要塞で、周りに住居が無いことから国の裏をいかにも知っているかのような秘密基地みたいだ。
ここ、僕が来ても良かったのかな?
その時、五稜郭から狼煙があげられる。
「ん? あれは……」
すると大きな爆発音が聞こえたと思ったら僕目掛けて無数の砲弾が一斉に襲い掛かって来た。
「……はい?」
僕はそれをかろうじて躱し、現況を確認する。
そして砲弾が放たれている場所は当たり前だけどあの要塞の上にある砲台から。
それにしても砲台の数が尋常じゃない。本当にこの大要塞はその名にふさわしいほど軍備が整っている。
本当に当たり前だけど。
で、これは流石に反撃しないほうが得策かな。
変に刺激するより避けているだけの方が自身の消耗が無いし、逆に消耗するのは相手の方だ……増援が来ない限り。
そして相手の方が弾が尽きた場合はそっちから話を聞いてくれるかもしれない。
「ん?」
今一瞬屋上の陰に兵士兵士がいた気が……いや、普通に堂々と見てる!!
よし、一旦あの人に接触できるか試そう。
僕は砲弾を躱しながらその兵士のもとに降りる。
陰にいた兵士は僕が降りてきたのを確信して無線を取り出し何かを呼ぶ、すると屋上の扉が開き、兵士がずらずらと上がってきた。
「へ?」
その時その兵士は腰に掛けていた刀を抜くと僕に斬りかかってきた。
「あっぶ―――!!」
危ない……。一体どういうこと?
さっきのはなんとか躱せたけど他の兵士たちも参入したら本当に逃げるしかない……!
「待って、話を聞いて!!」
「もう大丈夫よ」
僕の声と被る感じ兵士の群れの奥から女性の声が聞こえた。
その女性の声にこたえる形で兵士たちは道を開け、声の主……あの殺されたはずのチホが僕に近づいて来た。
……へ? 死んだはずだよね?
チホさんはあの研究所にいたときと同じような格好をして僕を見下ろす。
「確かチトセ……さんだったよね。研究所では私のクローンがお世話になったね」
チホさんはそういうと僕の頭を撫でる。
クローン……? 一体どういうこと?
「ふむ、ならこれで終わりか」
刀を抜いた兵士は鞘に直すと顔に着けていたゴーグルを取る。
そこに映った兵士は老いぼれで、それはケミといたアテルさんだった。
――――まーた情報の大洪水だよ。
でも、だったら反撃しないで良かったね。
少しほっとする
アテルさんは僕とチホさんに近づき交互に見た。
「ここで話すのもあれだ。来客用の個室に案内しよう」
アテルさんはそういって案内してくれた。
本当に何が何だかもう訳わからないよ……。
僕は案内された来客用の部屋に入り、チホさんとアテルさんとで対になる形で座った。
アテルさんはしばらく僕を見るとし始めた。
「で、まず私の紹介だが
「……」
あの時の『神よー!!』とか言っていた爺さん(アテルさん)の絵面を思い出した。
正直こんなにカッコイイなんて想像もしていなかったよ。
「それで、お前さんの名前は?」
「僕の名前はチトセ。とりあえず神の使いかな……て、チホから聞いているでしょ?」
「ふっ。このご時世に神の使いか。あぁそうだ。もちろん聞いているぞ。お前が研究所にいた“チホ”からカードを受け取っているのもな?」
「――それなら話が速そうだ」
僕はそう言うと手を伸ばしてきたアテルさんの手の平にカードを吐きつけた。
もちろんそんなことされたアテルさんは僕にゴミを見る目を向けている。
「――――汚いなお前」
アテルさんは僕を軽蔑の声を発する。
だってしょうがないでしょ。逆に聞くけどね、僕の収納ケースは口だけなんだよ。
そう言いながらもアテルさんはカードをハンカチで拭いた。
「ま、そんなことは言い。で、チホから常世計画について何か言っていたか?」
「うん、そうだよ。チホがここで常世計画に話せば大体理解してもらえるって話してくれていたからね」
「ま、俺はその計画については色々聞かされてはいるが。主に作戦内容のみ。詳しくはここのチホに聞いたらどうだ」
チホはそういわれると嬉しそうに笑う。
「――――ふふっ、確かにその計画の立案に関わりましたが、私が担当していた分野は“新生命体”だけですね」
「新生命体? ―――それは……」
「―――アテルさん。少しチトセさんと二人にしてください」
「……分かった。それと丁度良く今から視察だからな」
アテルさんはチホさんの言葉に従う感じでどこか視察に向かった。
「で、話を戻しますがこの新生命体の研究には私の子供たちも携わっているんです。と言ってもメイだけですか……」
「はい。私の娘であるメイです」
「……メイ?」
「はい……。チトセさんが一番ご存知じゃなくて?」
「――――! どういう―――」
すると誰かがドアをノックした。
「チホさん。メイさんがご面会に来ております」と男性の声が。
チホさんは「メイ? あー言ってわね。入れても大丈夫よ」と返してメイを中に入れた。
メイってあのメイお姉ちゃんだよね絶対。だってチホさんはメイお姉ちゃんとタケルお兄ちゃんのお母さん。
それにあのメイお姉ちゃんが研究に加担? タケルお兄ちゃんならなんとなくわかるんだけど。同じ大学に通ったりチホさんのお仲間と接触したから。
そしてドアがゆっくりと音を立てながら開く。
「お母様。お久しぶりです」
すると体格に合わない大きな白衣を着ている少女が中に入ってきた。
その少女はまさにあの因幡研究所でもう一人のチホさんを殺した張本人だった。
「―――!!」
「あら、メイもご苦労さん。今日は何しに来たの?」
「今日? 今日は因幡研究所での成果の報告かな。一応チホ弐号の殺処分は完了したわ」
「そう……。それはご苦労さん。ご褒美に抱きしめてあげようか?」
「いらない」
メイは首を横に振る。するとメイは僕の顔を覗き込む。
「もしかしてだけどこのタコがチトセさん?」
「そうよ~。もしかして何かしちゃった?」
「……」
メイはチホの言葉を聞くと頭を下げた。
「あの時は撃ってしまってごめんなさい。てっきりチホ弐号が外に連れ出した新生命体と勘違いしてしまったの」
これは許した方が良いのかな……。
「あ……」
チホさんも唖然としてしまっているし……。もしかしてというか絶対連絡ミスだよねこれ。
でも、許さないと話が進まなそうだし……しょうがない。
「ううん。もう気にしてないから良いよ」
本当に嫌だ、これ。
メイはそれを聞くと嬉しそうな顔をする。
「あ、ありがとう」
……本当にメイお姉ちゃんなんだね。それに可愛いから良しとしよう。
連絡ミスで攻撃は……。僕も色々としちゃっているからね。主にエビ君と移動している最中に戦闘機を落としたり。
するとメイは気持ちが整ったのか明るい顔を僕に向ける。
「それでは改めて。私は徳田メイよ~」
メイはそのまま一回頭を下げ、挨拶をする。
「先ほどのお母様を銃殺したのはきちんと理由があるのよ~。……ね、お母様?」
メイはそういってチホさんに視線を向ける。
チホさんはその視線を受け取るとまず自身の横の空いた席を叩き「メイも座ったら?」と言い、メイは分かったと返して隣に座った。
「で、二人は何の話をしていたの?」
メイは首を傾げる。
「あーうん。常世計画の新生命体の話―――」
「まって、それもそうだけどチホとチホ弐号についてさらっとスルーして話を進めるのやめない?」
「あぁ~やっぱり私が二人いた理由ですか?」
「うん。それが知りたい」
チホさんはしょうがないな~と言わんばかりの顔をする。
「まぁ……簡単に言うと目くらましです」
「目くらまし?」
「はい。これ自分で言うのもあれですが私は少し権威が高い研究者で、その分やはり一部の人たちに嫌悪されていたのですが常世計画に加担した話がどこかしら漏れたみたいで裏の人たちに殺される危険が出てきたんですよ」
「裏の人たち?」
「そうですね。例えば悪徳な政治家なら分かりやすいでしょう? 自身の利権のためならどんなことでもする。私も被害にあいかけていたんです。それを防ぐための目くらましに私を完全に模した調整がいらない完全なるクローンを作成したのです」
「なるほど。クローン自体は目くらましのつもりに開発はした。ならそのクローンを殺処分した理由は…‥どうして?」
チホさんは少し不気味な笑みを浮かべる。
「そんなの当たり前じゃないですか。計画を妨害するものを早いとこ消そうと常世計画の推進する一派が私のクローンを殺して私が死んだことにして、その犯人をその妨害者に押し付けて消すと言う手段でね」
チホは話し終えると少し一息つく。
そうか……。あのチホは偽物……あ。
「けど、これは私の勝手な意見ですが私の中ではあの子はもう妹みたいなもので愛情をこめていました。これは先ほど話した事とは矛盾しているのですがあの子は……あの子で自身が死ぬことを主張しました。そして因幡研究所の所長にそのことを話したようで決行したんです……」
チホはそう言うとメイを抱きしめた。
「本当なら私が殺してあげたかった。でも、私はここから出てはならないと命令されて……出たら子供たちの安全を保障できないと――」
「それで私がチホ弐号を殺すことになった」
メイは悲しそうに話す。
「メイは辛くなかったの?」
ボクがそう言うとメイは首を横に振る。
「そんなはずがない。私だってそのことを話されるまで知らなかったし」
メイがそう言い終えると空気がかなり重くなった。
……そうか。あの因幡研究所でのチホさんもといチホ弐号にもちゃんとした思いがこもっていたんだ。
自分の姉に危害が加わらないように自分自身が犠牲になる。そしてメイも母親に危害が加わらないように自分自身が実行。
で、そのタケルお兄ちゃんも妹が苦しみ悲しまないようにずっと努力していた。
やっぱり、この親子はみんな似ている。
「あ、それでは新生命体に付いて話しましょうか?」
「……そうだね」
「では、少しついてきてくれますか?」
チホはそう言うと立ち上がった。
「この計画が生まれる大元となった存在。そして時空補完型コンピュータと呼ばれる突如現れた未知のからくりを生み出した存在と私が推測している今まで存在してすらいなかった新生命体“スグヨ”と呼んでいる、生命を自由自在に生み出すことが出来る肉塊」
「―――!!」
『邪神と思われる肉塊―――――――』
その時一瞬ケミが話していた内容が入ってきた。
え……それは――――。
「詳しくは地下で話します。メイはどうする? 確かそろそろ帰宅だったよね」
「うん。早くしないとお兄さんが私とお母さんの両方を失ったと思うもの」
メイはそう答えると扉を勢いよく開けた。
「ではお母様とチトセさんまた機会があれば」
と、メイは言い残すと帰宅した。
「……ということは迎えの人がいる感じ?」
「はい。近所ノタナカさんです」
「……突っ込まないでおく」
「では、私たちも行きましょうか」
「――――――分かった」
僕はチホに連れられて地下へ向かった。
――――――――――。
――――――。
―――。
地下室はとても薄暗く、中央のぼんやりと輝く大きな培養液の中にチホが話していたであろう肉塊があった。
その肉塊の見た目はまるで心臓のように脈打っていた。
「これがその肉塊で合ってる?」
「はい。そうですね。これが新生命体に関するすべての始まりの物です」
チホは培養液に近づく。
「で、この肉塊について分かったのは?」
「そうですね。これをDNAプログラミングと呼ばれる生物を創造するツールで解析して分かったことが一つ」
するとチホは培養液の蓋を開け中から肉塊を取り出して地面に落とす。
肉塊は空気に反応してか徐々に姿を変え、僕にとても似た姿に変貌した。
「この子は貴方と同じ存在ということですね」
「……へ、へぇ~。でも、それは解析したと言うより僕を見て関係性に疑問を持ったが正しいんじゃなくて?」
「―――そうですね。間違っていませんよ。それに実のところあなたのことは時空補完型コンピュータ『淡路』が教えてくれました。前の世界。αの話も全て」
チホはその肉塊であったものを抱き上げる。
「さて、新生命体について簡単に話しましょうか?」
「――――――そうだね。たっぷりと聞きたい。それから常世計画とはどういったものかもね?」
「もちろんです……教えますよ全てを」
チホはそう言うと不気味な笑みを浮かべた。
「で、最初はどこから知りたいのですか?」
「そうだね、まず新生命体とその肉塊の関係性。それから常世計画とかいろいろだよ。でも、確か知っているのは新生命体の分野だけだったよね?」
「はい。私は常世計画の立案に関わりましたが全貌何て誰も知りません。何故なら私含め立案者はこの肉塊から『聞いた』ものを元に作っただけで意味もきちんと理解何てしていませんよ。ただ、分かっているのはこの国に大昔から封じられている邪神を完全に消滅させると言うことだけ」
「なるほどね。邪神の消滅か。確かにそれはいいと思う。けど、それは本当に可能?」
「まぁ……そうなりますよね。けど、今の科学では不可能じゃありません。何故なら霊力と呼ばれる者や邪気と呼ばれるものを科学的に証明できたので」
「科学的にって……。本当に証明したの?」
「はい。霊力を構成する物質はソフィーと呼ばれる邪気を中和するもの。で、邪気を構成のも同じくソフィーですが、違いは霊力の場合のソフィーは正の値ですが邪気は負の値をソフィーは示しているのです。分かりやすく言うと正のソフィーが霊力、負のソフィーが邪気と覚えておいてください」
……本当に解明したんだ……。
やっぱり何を言っているのかがサッパリで理解しがたい。
チホは話を続ける。
「なるほどね。要するに霊力が邪気を消すと言うのは負の値と正の値が同数だからお互い消し合えるという理論なのかな? 僕も数学はあまり理解していないけど」
「まぁ、そんなところです」
「では常世計画はこの地に封じられている邪神を構成する邪気と同数の霊力をぶつけて消滅させる計画で間違いはない?」
「はい。むしろ花丸をあげたくなるぐらい大正解です」
チホは嬉しそうに笑う。
「となるとその新生命体とはどう関わりが?」
「はい。新生命体たちは邪神を完全消滅させるための不足分を補う代わりです。その不足分は別途にアテルさんのクローンであるタケヒコ。それからイザキと呼ばれる勇者のクローン集団の開発をしています」
「タケヒコとイザキ……。この二人が新生命体というの?」
「はい。これは対邪神用生命体ですが邪神というのは一個体があまりにも強すぎて困る場合がありますよね? その対策として新たに開発したのが邪神を人工生物に入れて弱体化させる技術です」
「……弱体化って……あ、ソフィーを入れて人にでも殺せるようにしているの?」
「まぁ、そういうことです。人も邪神もというかどの生物にも邪気は存在します。で、通常の人でも消せる邪気は人と同数の邪気ですので」
「なるほどね」
「では、これが私が話すべき全てです」
チホは話がこれで終了と判断したのか肉塊を培養液に戻した。
「……で、結局あの肉塊との関係は?」
僕は肉塊に指をさす。
「あぁ……。あの肉塊は研究して分かったのは邪気を入れてDNAプログラミングで新生命体を創造するとかなり弱い邪神しか出来ないのです。なので私が新生命体を作る大元と言ったのですよ」
「……けど一応話しておく。邪神は全ての生命が滅びない限り生まれ続けるよ?」
「えぇ……知っています。その時は貴方が……お願いしますね。では、戻りましょう……」
その時肉塊……いや、僕にそっくりはものが眼を開けて笑っていた。
「……もう少しここにいてもいい?」
「……どうしてですか?」
「ちょっと気になってね」
「容認しましょう……。けど、約束してください。もし貴方がこの計画に反対であるのなら別にここの設備を破壊しても構いません。でも、その時は責任取ってくださいね」
「分かってる。その時はその時ね」
チホはそれで納得してくれたのかそのまま一人にしてくれた。
僕的に少なくともあの肉塊は僕と同じ波長を感じる。
それはどう考えてもスグヨとしか言えない存在。
「ねぇ、君スグヨでしょ?」
そういうとその肉塊は口を開く。
すると頭の中に懐かしい声が響き渡る。
「うん。正解だよチトセ。よく気づいたね」
「当たり前さ。僕は神の使いなんでしょ? なら、僕と同じ姿の奴なんて一人しかいないのだから分かるよ」
「そうか。なら話が早い」
スグヨはそう言うと笑い出す。
「なら、彼女――チホが話していた常世計画の全貌。そして今後の君がどう動くべきか教えるよ」
―――――こうして僕の戦いは最終局面に突入した。
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