第8話 新たな出会い

 「チトセ! しっかり掴まれ!!」


 時は黄昏、空は薄暗くなっていき太陽が落ちた先は赤紫色になっていた。


 エビくんは”あれ”を見るや全速力であれの進む道から外れるために敵であった戦闘機と共に遠くに逃げていた。




 戦闘機からすればこちらは敵であるのに背後を見せると言うことは攻撃しないと信じているからか?


 ボクはエビ君の殻に綺麗に挟まって吹き飛ばされないように対策した後、あれは何なのかエビくんに聞いてみた。


 「ねぇ! あいつは何なの?」


 「いや、わからない。 けどなぜかあれのことを知っている感じがする」


 エビくんは声を荒げながら答えてくれた。




 ・・・・・何か知っているのか? いや、なら答えるはずだ。


 答えないということは本当に知らなーーーーーーいや、彼を疑ってどうする。 正直に僕に教えてくれているのに・・・・・。


 ・・・・・こんなことよりどうするかだ。




 このまま止まれば必ずボクたちが死ぬのは確実だが逃げようにもあれの方が速い。 


 「----試しに磁気で守れるかやってみようかな」


 「磁気?」


 そうだ! エビくんには教えてなかった!


 「磁気はボクが普段使っている膜の本当の呼び方ーーーーって頭の中の人が教えてくれたんだ」


 「そうか」


 エビくんは満足したのか話さなくなった。 


 ・・・・・いや、そうじゃなく!!




 「その、この磁気であれを倒せるかなーーーて」


 「やめとけ」


 エビくんは即答した。 


 即答されたのはショックだったが、よくよく考えてみたら仕方ないだろう。




 相手は未確認生物だ。




 もし何かあったからでは遅い。 それにボクたちは戦闘機との戦いで負った怪我は完全に回復とは言え疲労が重なって動きたくても動けない。


 何だろう、ボクは何にも役に立ってない気がする・・・・・少しは役に立たないと。


 そうだ! あれの動きを見てエビくんに報告しよう!


 ボクはそう思ってあれをじっと見て動きを観察した。 






 あれは本当に半透明なのか?




 最初に見たときは半透明だったんだけど、そうしたら空の風景は少なかれ見えるはず。 けど見えていないと言うことはあれは半透明だったのではなくただ、それっぽい色であった可能性が高い。




 あれの中にはうようよと動き回る粒があるが、多くはなく、さっきまで見えていた空が見えなくなるとは考えにくいのだ。


 考えられる原因としたらあれの体液が光を吸収している可能性だ。






 それ以外にも何かあるのかと言えば、あれの大きさは地平線の端から端までと頭がおかしくなるぐらい大きい。




 ・・・・・・お姉ちゃん・・・・・死なないで。


 あれは、名前を付けるなら超巨大半透明未確認生物。 略してーーーーー何にしよう?


 「チトセ」


 「何?」


 エビくんは悲しそうな声で話しかけてきた。 空は先ほど言った黄昏時からさほど時間が経過していない感覚であったが、もう周りは真っ暗で何も見えない。


 「今何処か識別できなくなった」


 ですよねー。


 むしろボクはたちはこんな長いこと飛行していたっけ?


 「-----何か嫌な予感がする」


 その嫌な予感は早く的中した。




 ---オォォォォォォン!!!!




 ボクはもしかしてと思い真上を向くとそこには・・・・・。




 未確認生物がいた。


 さっきまでなかったはずの無数の赤黒い眼が現れ、空全体を覆い、こちらをぎろりとにらんだ。 ボクは一瞬腰が抜けそうになり、パニック状態になった。




 「やばいやばい」




 「----大体察した」




 うん、ありがとう。 あれを見たらどんなに肝が据わっててもビビる。 むしろビビらない人は存在するのかな?


 ----あ、戦闘機は?


 「エビくん、戦闘機は?」


 「戦闘機?」


 「うん、さっき戦った半月状の奴」


 「それか、物知りだな。 戦闘機は見えないが音で今目の前にいるのは分かる」


 「うん、ありがとう」


 物知り・・・・・え? いや待って。


 よくよく考えたら戦闘機って? ------なんでそれをボクが?








 何でボクは知らないことを知っているの? ボクにはわからない。 でも、頭はそれらを理解してるのになんでわからない?


 「まずい、背筋が凍ってきた」


 「・・・・・ボクも」


 あれはボクらの真上に張り付きながらじっと見てる感じがする。


 ボクは少し気になって奴をじっと見つめてきた。 何故なら暗闇を見る行為は生物からすると天敵にばれずに餌をとることから夜行性になった。 ボクはタケルから突然変異の速度が速いって言ってたから暗闇も対応するだろう・・・・・・いや、あとにしよう。 お腹が減って集中できない。




 「-----」


 エビくんは何故か降下を始めた。


 「ねぇ、どうしたの?」


 「---戦闘機の音の発信源が下がっていってる」


 「------」


 本当にエビくんは頼りになる。 それに比べてボクは本当に何もできない。


 エビくんはそのまま降下していき、地面に着陸した。








 辺りは深淵に包まれたどんよりとした森。 ・・・・・戦闘機が降りれる場所はどこにも存在していないのにどう降りたのか?


 ・・・・・とりあえず現状を確認しないと。


 「----ここは・・・山?」


 「・・・・・・こっちだ」


エビくんが向いた先にライトを持っている男の人が手を振ってる。 あの戦闘機に乗っていた人かな?


 「おーい! こっちですよー!」


 「・・・・・・いくぞ」


 ボクはエビくんと一緒に彼のもとに行った。








 手を振っていた人は一人であったが後ろにもう一人いた。 


 手を振っていた中年の男性はヤスケと同じ服装をしている軍人さん。 特徴としては髪の毛は茶色で短く、爽やかな感じだ。 眼は黒色で、身長は平均的だ。


 「……君たちは」


 「私の名前は武彦。 ウガヤ空軍特殊部隊に所属するものです。 この子は新生命体討伐作戦時に研究所にいた子です」




後ろにいた子とても幼い子で多分女の子。 彼女の服はぶかぶかな防寒着だが成人男性が切るサイズの為、裾が膝まである。 髪は銀色で腰位の長さだ。そして最も特徴的なのは目が赤いこと。 それ以外はいたって普通の女の子。






 「--お前、もしかしてだがニブァルじゃないか?」


 エビくんは突然よく分からないことを口に出した。


 女の子は何も答え黙秘した。


 「ねぇ、エビくん。 この子と知り合いなの?」


 「あぁ、そもそも我と同じ研究棟にいたはずだ。 それに我と同じ部屋にいたからな」


 「……なるほど」




 とりあえずそのあとボクとエビくんはタケヒコと女の子に自己紹介し、お互いの自己紹介が終わった後エビくんはタケヒコに近づき、二人で話を始めてしまった。


 女の子はタケヒコさんの娘じゃなくある任務の途中、訪れた場所に一人でうずくまっていたらしく、それを見つけて保護したらしい。




 小さな子はというと・・・・・とても可愛く、そして内気な感じな子のため、守りたいという気持ちが湧いて出てくる。 これがお姉ちゃんが言っていた母性本能なのかな?


 ・・・・自己紹介したほうがいいのかな? いや、しないのはお行儀悪いってタケルが言ってた!


 まずはとりあえず話しかけてみよう。




 いやでもボク何か話題はあるのかなえ~と。 とりあえず適当なことでいいか。


 「君の年齢は?」


 「-----女の子に年齢聞くなんて最低。 しね。 それか黙れくそだこ」


 「ひどい」


 何この子、いきなり暴言言ってきたんですけど!?


 会ってからずっと下を向いているからてっきり内気な子で、親を亡くしたんだろうと思っていたが以外にも強気な子なのか?


 でも、悪口言われたのは素直にショック。


 「こら、素直に名前を言いなさい」


 「ちっ」


 タケヒコに指摘された女の子は舌打ちをした後ボソッと名前を行ったくれた。




 ーーーーーチカ。




 うん、可愛い名前だね。 でもそれを言うとまた暴言言われそうだからやめておこう。


 じゃ、ボクの年齢を行ったらいいのかな? そしたら話題が弾むかも!


 「ボクは半年! 君は?」


 「6歳。 くそだこより上だから言うとおりに死ね」


 「えーーーー」


 ひどい、泣くよ? 本当に泣くよ? ていうか6歳なんだ以外。 結構幼い子供かと。


 「チカ、そんなことを言ってはダメでしょう?」


 「はぁ」


 タケヒコに怒られたチカは文句を言いたそうな顔でこちらを見てくる。


 「------」


 「やぁ」


 舌打ちされた挙句逆方向に顔を向けた。


 うん、泣いていいかな?


 それはそうとボクたちがどこに向かっているのかというとここから30分ぐらい歩いた先に軍事基地があって、そこに行くらしい。 


 まぁ、辺りは暗闇に包まれているから途中で無理そうだったら野宿するみたい。




 -----ぐぅーーーー。




 お腹すいたなー。


 多分ここ三日食べてもない寝てもないからもう限界だよーーーー。




 ----ていうかあれから三日経過したのか。




 「ん」


 そんなこと思ってるとチカが防寒着のポケットをゴソゴソとあさり、何かを渡してきた。


 え! 聞かれてた!?


 は、恥ずかしーーよーー!!


 「これ・・・腹の足しになると思うから・・・・その」


 あぁ、この粉を棒状にくっつけたみたいなのは食べ物なのか。 でも本当にいいのかな?


 「・・・・食べてもいいの?」


 「・・・・・お腹が空いてそうだったから」


 や、優しい!!


 「ありがとう」


 「----お礼なんていらない」


 「・・・・うん」


 せっかくチカが譲ってくれたんだ、美味しくいただこう。


 いや、待って。 もしかしたらチカはお腹が空いて食べようと思ったけどボクの腹の虫の音を聞いて可哀そうだからと譲ったのでは?


 ・・・・もしそうだとしたらボク最低やん。


 半分こにしよう。




 「チカちゃん?」


 「---なに、ちびはげ糞だこ」


 「はい! 半分こ!」


 「---!!」


 チカは一瞬幼い子にぴったりの嬉しそうな表情を見せた。


 可愛い!!


 「あ、ありがとう」


 チカは顔を真っ赤にして半分を手に取って食べた。


 「ふふふ」


 さてボクもたーべよ。




 美味しい!




 ---これただの粉を棒にしたのではなく、れっきとした食べ物なんだ。




 まぁ、ボクは歯なんて無いからひとのみで終了だけど。


 ボクがチカと会話している最中にエビくんとタケヒコは2人でこそこそと話している。


 ・・・・・・今更だけどエビくん人間のことが嫌いって言ってたけど何だかんだ優しい子なんだね。


 「君は何でアノマロカリスなのにエビなんだ?」


 「知らん」


ーーーいいのかな?




 ・・・・・・でも・・・・。




 ヤスケさんを殺したことは絶対に忘れない。




 ・・・・・はぁ。




 お腹が少し膨れたからか眠くなってきた。 あの棒状の食べ物一本の半分を食べただけ何のに意外と満腹感が湧いて出てくる。


 ----寝たいけど自分より年下の子にだっこをお願いするの何故か罪悪感が湧いて出てくるからお願いしずらいし。


 エビくんの方は背中に乗せてくれそうだけど硬いし冷たいから少し苦手。




 「ふぇ?」


 誰かに体を掴まれ、何かに目元を押し付けられて前が真っ暗になった。


 「----別に・・・・」


 チカの声がボソッと聞こえる。


 あぁ、チカが抱いてくれてるんだ・・・・・温かい・・・・もう限界・・・・おやすみなさい。


 ボクは少しの間眠りについた。






 ---スグヨ、まだ眠るの?


 -----君か。


 ここはあの時の夢みたいな空間であるが、違うところがあるとすれば”風景と声の主の姿が見える”ということだ。


 ”僕”に声をかけてきた女の人は冷たい銀色の髪を持ち、赤眼のメイぐらいの年齢の女性で、服装は白と灰色と言った単純なのをベースとした巫女服を着こんでいた。


 ----本当にお寝坊さんなんだから。


 -----仕方ないだろう、忙しかったんだから。


 彼女は仕方ないなーと、僕を膝に載せてくれた。


 ----ねぇ。


 --どうした?


 ---もし私が私じゃなくなったら、貴方は迎えに来てくれる?


 ----何を当たり前のことを聞いているんだ。


 本当にこの子は・・・・・。


 僕が君を見捨てるはずがないだろう。 だって君は僕の大切な人なのだから。




 ーーたとえ君が黄泉に堕ちて、死者となっても。 僕はかならず日ノ本より伝わる境の石を破壊し、死の大君を浄化させてでも君を生き返らせる!!




 彼女は少し悲しい眼をした後・・・・・・。




 ----表が裏となれば、表は裏になり裏は表となる。 偽りと真も同じように、偽りも真になるし真も偽りとなる。 もしこの世から真の”神”がいなくなったら偽りの”神”が真になるのかな?




 その時”ボク”は”カノジョ”が何を言っているのか理解できなかった。




 「むにゃぁ」


 「---!!」




 「あぁ、寝てたのか」


 ん、さっきの夢は・・・・・・何だろう。 頭から何も出てこない?


 ・・・・ていうか何か柔らかい感触が・・・・ん。


 「あ、チカおはよー」


 「--うん」


 チカは何かご機嫌が悪いみたいでそっけない挨拶を返してきた。 ちょっとショック。 そんなとき聞きなれた声が聞こえた。


 「おい、チトセ」


 「何エビくん」


 「早いな」


 いや、うん。 エビくんを怒らしたらなんか怖いんだもん。 それにちょっと怒ってるような声だったんだもん。


 ボクが目を覚ますとそこは木で覆われた空間だった。


 「ここは?」


 「ここは登山者とか旅人が使う、休憩用の小屋ですよ。 まぁ、ここにあったのは何ともありがたいですね」


 「ふーん」


 タケヒコはそう笑顔で教えてくれた。


 エビくんはそろそろ本題に入らしてくれと言った後、体をくねらせ、頭を乗せ、話し始めた。


 「・・・・まず最初にだが・・・チカと言ったか、お前に聞きたい」


 「・・・・なに? アノマロカリス」


 「・・・・なぜ我を見ても怯えない?」


 「-----」


 「その位の年の者なら怯えてもおかしくないはずだ」


 「-----」


 チカは黙秘を貫いている。


 「そっとしてあげてください」


 タケヒコはチカの尋問をやめさせた。


 「なら君はなぜ自分より上と認識している人を怖がらない?」


 「自らの手で殺し、我より弱いと認識したからだ」


 「あ、うんごめん。 間違えた」


 タケヒコはそういって話をそらそうと策を練っていた。 エビくんはそこを質問攻めすればいいのに素直に待ってる。


 いや、いい子過ぎか。




そんなとき足が限界に来たのかチカが震えだした。


 「あ、ごめん降りるーー」


 「馬鹿にしてるの? 私は強いから何ともない……!! 分からないのこのタコ!!」


 チカは顔を真っ赤にしてボクにまたタコと言ったがそんなことよりいやとてもきつそうなんだけど。


 ボクはふわっと宙に上がって彼女の前に着地した。


 「・・・・君、ボクをタコタコ言ってるけど触手4本だからタコじゃないよ!」


 「5本でしょ」


 「・・・・え?」


  いやいやいや待って!? 5本!? ボクの記憶上では4本だよ!?


 「エビくん! ボクの触手最初は4本だったよね?」


 「5本だったぞ?」


 「え!?」




 まって、ということはエビくんと戦い始めたころに5本のなった? いや、そうとしか考えられない。 だって本当に4本だったんだもん。


 「まぁ、もしかしたらお前ずっと浮遊しているだろう? もしかしたらそれで5本目が生えたんじゃないか? だって尾びれみたいなのが付いてるからな」


 エビくんは面白そうな口調でいったくれたけど表情が出ないから結構笑ってるのかが分からい。  


 そうか・・・・触手5本なのか。


 -----!!!


 「きゃ!」


 「あ、ごめん!!」


 さっき後ろに生えた5本目の触手に力を入れたが、あの触手は意識的に動かそうとすると暴れるみたいで、間違ってチカをはたいてしまった。


 「ごめん、大丈夫?


 「ううん、大丈夫」


 ・・・・・どうしよう・・・・多分許してないと思うし・・・。


 ならお姉ちゃんがいつもしてくれてたことをしたら許してくれるかな?9




 「あの・・・・これは・・・うん」


 何ていえばいいのだろう。 お詫びによしよしさせては流石になめてると思う。 でも、これしか思い浮かばなかった。


 「・・・・・・ちょ、やめ」


 「・・・・大丈夫・・・ずっとそばにいるから」


 「・・・は・・・恥ずかしい」


 「・・・・・・怒ってない?」


 「だから怒ってないって」


 「ごめん」


 こわ! こっわ!!


 真顔で怒ってないって言われても説得力ないんですけど!?


 ・・・ていうかさっきからボクとチカの会話しか聞こえーーーー。


 タケヒコはエビくんを枕にして眠っていた。 そしてエビくんも眠っていた。


 「いや」




 「話し合いするんちゃうんか」


 ボクは2人を叩き起こした。




そのあとチカの堪忍袋が切れた。

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