第7話 人は全員が仲間じゃない
イザキが火を消してじゃあと言って洞穴から出て行ったあと、ボクはエビくんと顔を合わせてどうするか議論していた。
始めた時間はまだ暗かったが、数時間ほどたった後、小鳥たちが一斉に鳴き始めたため、ちょうど朝日が昇ったのだろう。
「マジでどうする? 上空や地上には軍人いるよ?」
「・・・・」
エビくんもかなり悩んでいる。いや、むしろこんな状況下で悩まない人なんているのだろうか?
それから少ししてエビくんは閃いたのかゆっくりとこちらを向いた。
「開き直って上空を通って町に行こうか」
「え、え~と不味くない?」
エビくんは考えがあるんだとゆっくりとボクに近づき・・・・・教えてくれた。
ボクとエビくんは勢いよく東に向かって飛び立った。
改めて地上を見ると辺りはボクとエビくんが戦った痕跡が残っており、地平線に沿ってじっくりと観察してみると火がところどころ見えるのが分かる。あれは恐らく新生物との争いが起きているのだろう。しかし不可解なことにボクはまだエビくんとしか会っていない。研究所なんだからもっといるはずなのに。
「こっちだ」
「了解」
ボクはエビくんに先導され、進んでいった。
あの時のエビくんが教えてくれたのは軍人が来てもこちらから攻撃してこないと意思表示すれば多分攻撃を躊躇ってくれると言いうことだ。 それは軍人たちの中ではボクたち新生物は知能が無く問答無用で人間を襲っていると判断したかららしい。
また、エビくんは実際に何十人の軍人と地上戦を繰り広げたらしく、その時では無傷で全滅させたのだ。 そのため一応地上では軍人たちは弱く、赤子同然。
だが空中戦はとても厄介らしくなるべく避けたいが地上戦と比べたらまだ衝突する確率が少ない。そのことを考え空中で移動することにした。
いや、確かに大丈夫と思うが本当にそうか?
そんなことをしていると半月型の乗り物5機がバリバリバリと弾を放ちながらこちらに接近してきた。
ボクとエビくんは抵抗の意思はないとこを見せるべくその場で止まっていたが、相手の攻撃がやまず、身の危険が近づいたと判断したのかエビくんはお構いなしに光弾を放ち、全機を瞬きをする間もなく撃ち落とした・・・・・は?
「いや、何してんの?」
「正当防衛だ」
「え、ええの?」
「・・・・・いいか、そもそも新生物は人から見れば敵だ。 友好的なものもいるが大半は敵と思え。 その中でも話が通じる敵は時によっては味方にもなる。 すべての人が優しいと思うな」
「うん」
なんとなく彼の言ってることが分かる。確かにボクらは何もしないはいくらでもいえることだけど、あっちからすれば嘘と感じたりするのかもしれない。
ボクは甘すぎる・・・・・
。
「・・・だが、チトセのその優しさはいい時もある。 何故なら人およびすべての社会的生物は友好的な生物には襲わず仲間にする傾向にあるからだ」
「・・・・ありがとう」
ボクは彼のフォローで何とか持ち直した。
それから何度も半月の乗り物と何度も衝突した。
「くそ!」
最初はさほど敵は多くなく、時折抵抗しなかったら戻ってくれるのもちらほら出だした。 だが今回襲ってきた敵は全く話が通じず、その数は100機であった。 戦闘機はとても速く、追いつくのにもやっとなのに彼らはボクたちに正確な攻撃をしてくる。 その攻撃の中にはボクについてくる弾もあり、赤い膜で跳ね返せそうにも当たれば爆発するためどうしようもない。
「チトセ! 来てるぞ!」
「え?」
後ろを向けば4機がこちらに弾を放ってる。
「まずい!」
すぐさま膜を張ったが入ってしまったものはボクの顔の着弾した。 当たったところからは熱いものが流れ出て、触手の一部は吹き飛ばされたのか上手いこと動かせない。
その以降も何度も攻撃を受け続けた。 その中で膜は攻撃を受ければ受けるほど薄くなっていき、最終的に破壊されるようで、そのおかげで顔面に鉄の破片が無数に刺さり、呼吸するのがやっとだ。
一旦敵をかく乱しながら再生したが損傷の多い顔面はなかなか修復できない。 それでも戦闘機は無慈悲な攻撃を続ける。
「は!」
エビくんはボクの身が危ないと思ってくれたのか追撃してくる戦闘機を尻尾で撃破する。 そのあと光弾を敵機に当て何機か撃ち落とせたが。 撃ち落としても奴らの攻撃はいまだに続く。 数は明らかに負けで。 撃ち落としたのもエビくんの20機だけだ。 彼らの違うとこは航空技術が高く、エビくんの必殺技の無数光弾を難なく躱してしまうのだ。 なのでこちらからぶつかる気でいかないと撃墜なんてできなものじゃない。
ボクの顔面はなんとか修復できたのかいたみはなくなった。 しかし目の前は血で真っ赤だからそれほどひどい損傷だったのだろう。
「エビくん! 一旦逃げよう!」
その時近くで爆発音が鳴り響いた。
音が放った場所を見てみるとそこには戦闘機の特攻を受け、重傷を負ったエビくんがいた。
「くそ・・・・・・」
エビくんは自分の傷が深いことは知ってるが、それでも戦闘機に突っ込んでいった。
「えびくん!」
ボクはとっさにエビくんを戦闘機の攻撃から守るべく、向かった。
しかし戦闘機はまだ50機以上あり、後ろからの追撃をしてくるこいつをまず片付けないといけない。
「しつこいな~!」
ボクは膜張った状態で試しに半月状の戦闘機に急接近しそのまま突撃した。 戦闘機は木っ端みじんに爆散し、煙の中からは苦しい表情を浮かべた真っ黒こげの何かがボクを睨んでいた。
「----!」
その表情はとてもおぞましく、背筋が凍った。
しかし、この膜を張った状態で敵に攻撃を加えたら一撃で撃ち落とせることに気づき、再び戦闘機の群れに接近し破壊を続けた。
「はーーー!」
しかし、膜にも耐久度があり、使いすぎると壊れるため、あと一発で壊れるところまで行ったら修復するまで逃げ続け、出来たら攻撃という手法を取ったが、何度もやると敵も覚えてきてきたのか、ボクが行くと逆にかく乱しようとしてきたが、そのおかげかエビくんに集中攻撃していた敵はほとんど僕の方向に行ってしまったよう。
その間ににエビくん傷を完全に治して後ろからボクの支援をしてくれた。
「チトセ! こっちはもう大丈夫だ!」
エビくんはボクが逃げている時にボクに攻撃を仕掛けている戦闘機に奇襲をかけ、これで30機の撃墜に成功。 残りはあと50機で敵はまだまだ有利な立ち位置にいる。
しかし、敵は完全に弾が尽きたのか撤退していった。
「まて! まだまだこれからだ!」
「落ち着けチトセ!」
ボクは戦闘機の罠に気づかず、真後ろに急転換した戦闘機の銃撃によりハチの巣にされてしまった。
「チトセ! チトセーー! っくそ! 」
エビは体を蛇みたいに捻じ曲げ、中心に僕を隠して攻撃が当たらないように食うしてくれた。
爆発音とともにエビくんが苦しむ声が聞こえる。 ボクはなんと愚かで弱いにだろう。 もしあそこで挑発に乗ってなかったら逃げれたのに。
「おぇ・・・・」
口からどす黒い血を吐き出した。
「無理はするな」
エビくんはそういうとボクを守るかのように攻撃を防いでくれた。
しかし、攻撃が激しく、殻が割れる音がたびたびしてエビくんが苦しむ声が聞こえてくる。
早く・・・・早く再生しないとエビくんが・・・・。 しかし、この傷はなかなか言えずとても時間が掛かった。
くそ! ボクは何でいつも仲間を守れないんだ! もしボクが強かったら・・・・!
「くっ」
エビくんは迫りくる鉄の嵐に対して光線・光弾で応戦しているが敵はどんどん増えてきている。
-----もっと想像力を使え。
頭の中からスグヨの声が聞こえた。
想像力? どういうことだ?
-----君の使う磁気はただ自分の身を守るための者じゃない。
---防御は最大の攻撃と言われているように、君が使っている磁気も時には攻撃手段となるだろう。
磁気? 膜? あぁ、体を覆っていたのは膜じゃなくて磁気だったんだ・・・・・・。
初耳。
ではどうすればいい? スグヨが言っていた防御は最大の攻撃の意味はもしかしたら膜を張って光弾を跳ね返してエビくんと戦ったやり方もそれに値するだろう。 しかし、戦闘機の攻撃は跳ね返せないが、膜だけでも機体を破壊できた。 それを利用しろということなのか? いやそれしかないだろう。
戦った彼を守るのに最適な大きさは。 ボクは磁気を出している間少し耳鳴りがした。 あれを力の強さとみて耳鳴りが大きくなればなるほどいいはずだ。
じゃ、それをするのにはどうすればいい? いや分からない、ボクは磁気の発生も意識的ではなく無意識、そう、本能だ。
だからボクはイメージの元やっていかないと絶対にできないと思っている。 なら、やるしかない。
ボクは無意識に膜ーーーー磁気を体から放出するべくどんどん磁力を蓄積していく感覚を掴もうとした。 ----どんどん体が熱くなっていき、吐き気、そして耳鳴りも起きてきた。 それは時間が経つほど強くなっていく。
その間にもエビくんの殻から激しい銃撃の振動が伝わってくる。
この時にはもう音が聞こえなくなってきていた。
そして範囲広げながらもとの強度は下がらないように限界付近に達した。
「エ、エビくん・・・!」
「どうした?」
「一回攻撃やめて・・・・」
「? 分かった」
この時自分はエビくんに攻撃をやめてくれと伝え、聞こえているか心配だったが彼の反応を見るに伝わってくれたようだ。
敵機はこれを好機と見たのか止めと言わんばかりに全機が突っ込んできた。
まだだ・・・・あと少し。
敵はどんどん近づく。
・・・・・・よし! 今だ!
ボクは蓄積していた磁力を一気に開放し、それを広大な範囲に覆った。
その時頭の奥から甲高い音が脳天を鳴り響かせ、強くなればなるほど反吐が出るほどの頭痛に見舞われた。 そして目からは暖かい何かが流れている感触を感じたがこうでもしないと敵は倒せない。
----ブチ! グチグチグチグチ!
「あぁぁぁぁぁ!」
頭の血管が磁気に堪えれなくてちぎれた音がした。 その時の反動で口から血の塊が大量に出てきた。
「チトセ! やめろ! やめるんだ」
エビくんは必死に何かを伝えてくれているようだがボクには聞こえなかった。
ボクは自分自身でも分かる、これを続けたらもう死ぬと。 しかしボクはまだ死にたくない!
お姉ちゃんとまだ再会していないからだ!!
突然の磁気の発生に戦闘機は旋回できず、ほとんどが当たって木っ端みじんとなっていった。
しかし後ろの方はなんとか間に合ったのかその場で静止した。
もう・・・・駄目だ!
「ががががが」
だ・・・まだ。 もう・・・堪えれな・・・・・・い。
「あ」
ボクは完全に脱力した。 が、意識だけは持ったようだ。
この時は音が聞こえるようになっていたため、あれは一時的な作用だったのだろう。
ボクはゆっくりと落下していったが、エビくんはボクを背中に乗せてくれた。
「・・・・・エビくん、敵機は? 敵の戦闘機は?」
「戦闘機? あぁ、あれのことか」
戦闘機・・・・・・あれ? 何でボクはそれを口から出したの?
「大丈夫だ。 ほとんどは落ちて行ったが一部はまだ目の前でいて、光をチカチカさせてる」
「そ・・・・・・う」
---ツートンツー ツーツーツー ツートンツーツーツ トンツートンツー トントントンツー トントン トンツートンツー ツートントンツー トントンツートントン ツー・・・・・・。
頭の中に信号が入ってくる。
その信号はまるで頭に着くような音を出し、タケルがボクに音を感知しているかを調べるために出していた音にそっくりだ。
音はなにやら規則的な感じでしゃべっている様だ。
まるで狼が仲間を呼ぶときの遠吠えみたいないに・・・・・・。
それが原因なのか本能的に脅威が迫ってきていると認識できた。
このままここにいたらボクらはハチの巣にされる・・・・・エビくんに伝えないと。
「逃げ・・・・・・て」
「・・・・・お前もか」
エビくんも感じたようで殻の間に入れた言われたためすぐに入った。
「よし、逃げるぞ」
エビくんは嵐の如く敵機から逃げた。
敵機はすぐにボクらの背後に追いつき攻撃を始めた。
エビくんも先ほどの激戦で慣れたのか大体は避けれるようになっていった。 たとえ当たってもボクに被害が当たらないように。
敵機はほとんど自滅したとはいえまだ20機ほどいるため、鉄の嵐の中で、自分たち以上の速度の敵から逃げていると言っても過言ではない
敵も動きから察するにボクに対して警戒しているのかエビくんの後ろをちょこまかと動きながら銃撃を浴びせていた。
銃撃の音はもう後ろまで来ておりもう当たるのところでエビくんは山の奥に入り、かく乱させた。
----ツーツーツー。
敵は信号を出しながら攻撃を仕掛ける。
エビくんは童話に出てくる竜のように体をくねらせながら銃撃を器用にかわす。 その間敵に攻撃したりとやっていたのだが、敵はなかなか腕がいいのか簡単に躱した。
戦った時は夕方前であったが今はもう日没寸前で、太陽はもう隠れようとしていた。
敵は逆光で銀色から夕日の輝きに代わり、とても綺麗であった。 その間山から巨大な影が現れ、太陽を覆った。
「?」
敵も混乱したのが銃撃をやめ、静止し後ろを見た。 エビくんもいきなりの明りの変化に驚いたのか後ろを振り向いた。
「あ・・・・・あれは?」
ソイツは空を覆うような薄っぺらい半透明な生物で、中には液体が詰まっているのだろうかタプンタプンと脈を打ち、液体の中にはアリみたいな黒く、小さな粒が無数に蠢いていた。
「-----!!」
戦闘機は即座に発進しエビくんの前に行き、翼を上下に動かした後そのまま真っすぐに進んだ。 エビくんは敵からのメッセージを理解したのか後に続いた。
----変わった・・・・・変わってしまった。
-----永遠の輪廻が打ち砕かれた!!
-----我が主よ・・・・・許してくれたまえ。
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