第6話 方向音痴なタコと有能なエビの大冒険
山々から火山でもないのに煙が上がり、時々小さいながらも爆発音が聞こえる。 空は地上では悲惨なことが起きているのにもかかわらず、平和な輝きを保ち。 空気は空気のくせに空気が読めないのか血なまぐさい味など一切せず、とてもおいしい。
「ねぇ」
「何だ?」
「絶対、違う道な気がするんだけど」
ボクは疑問に思っていることをエビくんに話した。
ボクらは飛行してからかなりの時間がたっており、太陽も沈もうとしていたがなかなか道という道が見えない。
こんなことになった理由はボクにもある。なぜなら飛んでる最中エビくんがボクのように流暢にしゃべれるようになりたいって言ってきて、ボクは初めて頼られた!って嬉しくなりすぎてずっと教えていたらこの通り。
本当にボクらどこ行ってんの?
エビくんは記憶能力が高く、教えた単語もすぐ理解し今ではボク並みに言葉が理解できる。
エビくんは間違えたのかなって、今もう一度確認してくれている。
「いや、我ら逆に行ってるぞ? 東は太陽が昇る方向で西は沈む方向だぞ?」
「今の僕らは?」
「沈む方向に行ってるぞ」
まじか、逆に行っていたのか。 今更だけどエビくんは太古の生物の頂点らしくこういう方向の感覚も鋭いから結構役に立ってる。 それに比べてボクは何の役にも立っていない気がする・・・・・。
なら今からでもボクは役に立つ人と思ってもらえるように頑張ろう!
「なら昇る方向はこっちだね!」
「太陽を見ろ。その逆だ」
「・・・・・・泣いていい?」
「-----」
やだ恥ずかしくて死にそう。
二回もだよ!?間違えたの。 これは生物としてどうなのって自身に問いたい。
ていうかボクは何で毎日お姉ちゃんと一緒に日の出見てるのに何で理解してないんだろう。 これもしお姉ちゃんがいたら笑われてるよ~。
「ほら、我についてこい」
「うん」
エビくんはボクを馬鹿にすることなく優しい声で語り、背中にボクを乗せて東の方向に連れっててくれた。 本当にごめんねエビくん、この恩は絶対に忘れないよ。
「チトセ、ちょっといいか」
ボクの名前を呼んでくれた!? いやいや落ち着け。
「どうしたの?」
「・・・・・人に見つかるのはやばくないか?」
「あ」
確かに見つかるのはやばい。 現に今ボク達は上空にいるがもし見つかったらもうそこまでだろう。なら山に隠れながら進むしかない。 でもヤスケさんのように軍人が入って戦闘が起きてる危険性があるかもしれないから行こうにも行けない・・・・・どうしようか。
山だとボクは小柄だから移動しやすいけどエビくんはかなり大きいから逃げるときは不利だ。でも上空に行けばいいかと言われればそうではなく軍人に見つかったら多分終わりだ。倒せばいいかもしれないがボクは人を殺したくない、どうすればいいのか・・・。
そんなときエビくんが大きい体を曲げ、顔をボクに向けた。
「もう日が暮れるから洞穴を探さないか?」
「うん、そうしよう」
とりあえず東に向かう手段は明日にして今日は寝場所を探そう。
あれから何時間かして日が沈み、ボクたちはなんとか寝場所を発見した。 そこは古代人が住んでいたであろう洞穴何だろうか地面を掘ったら貝がたくさん出てくる。 しかし奥には藁が落ちておりこれは見た感じつい最近まで人がいた後なんだろう。 そんなことを考えているとエビくんは先に丸まって眠っていた。
いや、早すぎだろう。
そんなことを思いながらもボクもエビくんの隣に眠ろうとしたとき足音がするのに気が付いた。足音はだんだんボクらに近づいて来た。 見つかるのも時間の問題だと感じ、ボクはエビくんを起こそうとしたがなかなか目を覚まさなかった。
まずい見つかるーーーーー。
「誰だ?」
そこにいたのは神話に出てくる神々の服に文様が描かれた赤色の衣と茶色のたっつけ袴を穿き、長靴ほどの大きさのわらぐつを身に着けた青年で剣を右手に握りながら左手のライトを僕らに当てた。
やばい、死んだ。
今この状況でもエビくんは気持ちよさそうに寝息を立てていた。
あ、もう駄目だこれ・・・・・・謝ったら許してくれるかな?
「いや、あの・・・・・・すいません」
「何故謝る」
青年はボクの前に座り、薪に火をつけた。
「あの・・・」
「何だ?」
「ボクたちを殺さないの?」
「なぜ殺さないといけない?」
青年は刃が黒い剣を取り出して拭きながら話した。
「お前たちは無理やり人間に生み出されたんだろ? そうなったら人を恨み、殺すのも仕方ない。 しかしその中でもただ人が怖くて襲っているクマみたいなものもいる。 人だってそうさ。人が新生命体を作りたがるのも在来の生物では太刀打ちできないと判断したからだ」
彼はそういうと上着を脱いでボクの上にかけてくれた。
「・・・・・人は今から80年前シンギュラリティとかいう特異点に執着しすぎたあまり、人工知能の反乱を引き起こした。 それからトラウマになったのか指導者共は技術者を皆殺しにし今まで嫌悪感を抱いていた新生命体の開発を奨励した」
シンギュラリティ? 彼は何を言っているんだろ?
「ねぇ、シンギュラリティて?」
「シンギュラリティか・・・・・それは人工知能によって引き起こされるとされる第四次産業革命の言わば特異点だ」
「そう・・・・・」
今更だけど彼はなぜこんな話題を突然始めたんだろう。 もしかしたらボクたちを殺さないという話をしているんだろうけどもしそうなら最初の話だけでいいはず。 まって、もしかしたら心に闇を抱えてるからそういう行動に出ているのかもしれない。 よし、彼に聞いてみよう。
「君の名前は?」
「名前? 聞いてどうする」
「君とか貴方じゃ失礼かなって思って」
「・・・お前の主人はいい人なんだな」
彼は少し間を取って。
「俺の名前は神記誘君忠彦カムキイザキノタダヒコ、ウガヤ王朝の王統から反逆罪で追放された第15皇子だ」
・・・・・・彼は皇子だったのか・・・ん?
「ねぇ、皇子って?」
「あぁ、説明抜けてたな。 ウガヤ王朝。 正式名称はウガヤ皇国で君主の称号は大君。 妃は皇后。その子供が男なら皇子で女なら皇女と呼ばれる。 また、生まれた順番に第何々皇子、または皇女と付けられて俺の場合は第15だから15番目に生まれた男児ということだ」
「なるほど」
この国って結構めんどくさそうな感じがしてきた。 いや、国名自体はお姉ちゃんに教えてもらって知ってたけど以外に単純な国と思ってた。 聞くまでは。
彼、イザキは説明が終わるとまた剣を磨き始めた。
何だろう、ものすごく暇だ。
寝ればいいと思うけど今まではお姉ちゃんの胸に抱かれてその感触がまるで言葉にできないけどとても暖かく、ぬくもりを感じながら寝てきたからいきなり違う環境で寝ようとしても本能で寝れない、どうしよ!
「寝れないのか?」
イザキはボクが寝れないことに気づいたのか話しかけてくれた。
「う、うん」
「よかったら話し相手にでもなるぞ?」
本当に!?やった! なら色々と教えてもらおう!
「じゃ・・・お言葉に甘えて。 早速だけどなんで反逆罪になったの?」
「最初っから重いの来るなー」
イザキは頭を片手で掻きながら何ていったほうがいいのか考えてるそぶりをし、仕方ないと言って口を開いてくれた。
「それはだな・・・なんというか数十年前にシンギュラリティ派の重臣たちの中で新生命体の制作の奨励は倫理的に侵してはいけないという流れになってその中で・・・徳田・・・・千穂か忘れたが女性研究者がDNAプログラムを提唱してこれは世論の中でも倫理的にこんな簡単に作れるようにしていいのか? という流れになって重臣はこれを利用して再度シンギュラリティを引き起こし低成長の流れを脱却しようとーーーー」
「ごめんちょっと待って」
徳田千穂・・・徳田・・・・。
タケルがボクにしてくれた母の話と一致してしかも苗字も一緒・・・。タケルのお母さんは政府に消された?・・・聞いてから判断しよう。
「ごめん、いいよ」
「あぁ。 80年前から続いていた低成長に歯止めをかけようと再びシンギュラリティを引き起こす一環としてマスコミに大金を払い彼女を叩かせた。 そのあと彼女は研究所を去り、この研究に関係した者たちを一斉に消しにかかった。 俺はこの時まだ6歳だったがシンギュラリティ派の重臣の動きが怪しく映っていた」
彼はそういうと一回息を吸って心落ち着かせた。 多分胸糞悪い話なんだろう。 彼は少し拳が震えていた。
「マスコミが彼女を叩くのをやめたあたりにDNAプログラムの研究に携わっていた研究者と教授が不審死し始めたのだ。 これはばれないようにしたつもりなのかこの事件は一年に2回は起きていた。 警察は調査すると言っていたが一切せず、大君もこれの怪しさを十分に理解をしていたが、脅されていたのか言い出せずじまいだった。 そして今から9年前に事件が起きた。
彼女が道路上で黒ずくめの男に灯油をかけられ燃やされ、自殺として取り扱われたことをーーーー」
は?
いったい何を言っているんだろう。 別にイザキが悪いわけではない・・・、なんか・・・・・。
体の中がどんどん熱くなってくる。
ボクはなんとか自我を制御して話を聞いた。
「その時の重臣たちがシンギュラリティ達成の邪魔ものはこれで最後だ。 大金を出したかいあったよなぁ~。 と言ってたんだ。 それを聞いた俺は今手元のあるこの剣で重臣どもを全員切り殺したんだ」
イザキはそういうと剣を上に掲げた。 彼の表情は後悔してる顔ではなく完全にすっきりとしている表情であった。 普通同族を殺した生物はサイコパスでなければ後悔したりするのもいるが彼の場合は憎しみで殺したのだろう、だとしたらこんなにすっきりとした顔にならないはずだ。
「理由はないわけでもなく、シンギュラリティ派の重臣たちが怪しい行動をした日から一週間からひと月の間で研究者たちが死んでるのを聞いて感づいた。 そして彼女が殺されたあたりで確実と判断して斬った」
なるほど。イザキは6歳なのに奴らの怪しげな行動を監視していたのか。
「この事件は流石に公に出すのはまずいと大君は判断して死刑の代わりに俺が自らの意思で皇族から降りたということにしたのだ」
イザキはそういうと体を伸ばしその場に立った。
彼は話を聞いた感じとても正義感に溢れ、本当に国のことを考えてくれているのが分かる。 もしこの時にイザキがお兄さんとお姉ちゃんの母を殺したのが奴らだと気づかなかったらボクはここにいなかったろう。 イザキには感謝しないと。
「まぁ、そのあとDNAプログラムが認められて、生き残った研究者の活躍で飛躍的に向上したのは良かったのがこんな事態になるとは思わなかったな」
「そうか、我らを生み出すよう奨励したのはお前たちだったのか・・・」
後ろを振り向くとエビくんがこっちを見ていた。
「あ、おはよう」
「あぁ、おはよう・・・・・。 人間、お前が言っていたことは全て本当か?」
「あぁ」
まってエビくんいつから起きてたの!? この言動を見るに彼と出会ったあたりから起きてると判断してもいいだろう。 でも起きてたら少しは反応してほしかった。
イザキはエビくんをじっと見つめ近づき、彼の冷たい殻を撫で、優しい声で。
「お前を作り出した研究者は始末した、だから安心しろ」
イザキは小さな声で何かを言って再びボクの前に来た。
「俺はもう行くがお前たちはどうする?」
「もう朝?」
ボクは出入り口を見てみるとまだ暗かった。
「あぁ、今の季節じゃ太陽は遅くに上る」
そういってイザキはその場から立ち上がった。
ボクたちか・・・・・・。
もちろん、答えは決まっている。
「ボクは家族を探しに行くよ」
「・・・・・捨てられたのか?」
「ううん、エビくんと戦って別れてしまったんだ」
「エビくん?・・・・・」
「あ、この子のことだよ!」
ボクはそういってエビくんに抱き着いた。
「あぁ・・・アノマロカリスのことか」
「うん!。 ところで・・・イザキさんは何してるの?」
「-----」
イザキは少し暗い表情を浮かべた。 まるで何かに悩んでいるように。
イザキは一回ため息をつき、僕達の方を向いた。
「俺は今大君の命令で逃げた新生物の保護、および関連する者たちの始末を行っている」
イザキはまるで別人のような眼を僕たちに向けた。 彼の本当の狙いはこの事件の抹消だろう。 何故なら政府が新生物の保護をしたら遺族から大バッシングを受けるのは確実だからだ。 なので新生物の保護ではなく抹殺が正しく、研究者はそのままの意味で殺すのだろう・・・・いや、でも皇族から降りているとしても元皇族なわけだしばれたら権威が保てなくなるのは確実だ・・・・・いったいどのような選択肢が正しいのだろう?
「チトセ、そんなに考えなくてもいいと思うぞ?」
「どうして、そんなこと言うの? 本当はとんでもない組織にこき使われてーーーー」
「こんなこと皇族じゃなくて秘密警察と軍がすることだ。 奴のあの瞳は来てほしくないではなく本当はついてきてくれたらうれしかったけど我たちがお家族を探す旅行くからショック受けてるんだろう」
「まさかそん・・・・な」
イザキは顔を真っ赤にして下にうつむいてる。
あ、マジなんか。 うん、何も見なかった・・・うん・・・。
「ま、また会えるといいね!」
「あ、あぁ。お前も家族に会えるといいな」
イザキは先ほどの英雄の顔のようになり、そのまま出口からでた。
彼の後姿は少し懐かしい感じがした。
そんな彼は後ろを振り向きーーーー。
「あ、火消すの忘れてた」
「おかえり」
・・・・・・ちょっと心配になってきた。
ーーーーーー我らが主よ目覚めの時だ・・・・・・。
----あの時の・・・・・・
屈辱を晴らせ!!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます