第2話 生命体の命名、そして生体実験
タケルがボクに言葉を教えるのに夢中になりすぎて声の高い人が帰ってくるまで教えていた。
そして現在、声の高い人に正座させられている。
「兄さん。 私が何で起こっているか分かる?」
「・・・・・・この子を予告せず外に出したからだろう?」
タケルは気まずそうに声の高い人から目をそらす。
「えぇ、そうよ。 その通りよ」
声の高い人はため息を漏らす。そしてボクの方を向いた。
「ごめんね、自己紹介はまだだったね。 私の名前は徳田メイ、そこで目を私からそらし続けている人の妹よ」
声の高い人、いや、メイは童顔の兄に似た顔をした美形で、兄と違って肌が少し薄いため一見体が弱そうに見えるが、とても活発な印象を受ける。
メイはタケルを睨みながら指をさしながら自己紹介をした。
タケルはメイを手招きしながら指を指すなと言い、彼女をいったん座らせる。
「で、どうしたの」
「・・・・・・」
メイはタケルを見て何かを察した。
「あ~名前ね?」
「そう、名前だ」
メイは名前ねとうなずきながら答える。
その後二人はボクを無視して会話を進める。
名前?
この二人は名前というものを大切にしているようだがそこまで必要なものか? でもなんでだろう。
ボクも名前というものが欲しくなる。
二人はまた僕の方を向きまた二人で話し合った
「名前はどうしたい?」
「私が決めてもいいの?」
「あぁ」
「ええと、ならどうしようかな?」
メイは頭を抱えて考えてくれる。何だろう、この二人はボクのために名前を考えてくれているみたいだがそんなことよりもボクに構ってよ。
え、構って? なんで?
ボクのためにやってくれているのに感謝よりその気持ちが強くなってしまう。
そして、ほかにこんな気持ちがわいてくる。
ボクはのけ者なのかな?
そろそろ僕が悲しくなってくるとメイがボクの方を向いた。
「貴方の名前はチトセ。 貴方の名前はチトセよ」
メイは優しく僕に名前という暖かい物をくれた」
「チ・・・・・・ト・・・セ?」
「うん、貴方はチトセ」
「ボク・・・・・・チトセ」
なんだろう、この暖かい物は。これがうれしいという感情なのか。
二人はボクの方を見て笑顔になっている、何だろう、ハズカシイ?
ボクは二人から目をそらすように下にうつむいた。
「意味は末永く、だから長く生きてね」
メイはそう言ってボクの頭を優しくなでる。ボクは構ってくれてうれしかったのか自然と。
「アリ・・・・・・ガト・・・・・・」
ボクはまだ慣れない言葉で彼女に感謝の気持ちを伝え伝えることが出来た。
そしてタケルが「ようこそ・・・・・・外の世界へ」とボクに静かに言った。
ボクはこの日の出来事は一生忘れることはないだろう。
それから太陽が十回のぼった日の朝。
ボクは名前をもらった日から毎日太陽というものを見るのが日課となっている。
最初はこの部屋のソトというさらに広い空間に行こうとしたがタケルにばれるとまずいからと止められた。でもさすがに可哀想と思ってくれたのか屋根裏に天窓を設置してくれた。そのおかげでボクは何度も昇ってくる太陽の観察ができる。
・・・・・・あの日からボクは色々なことを教わった。 メイは女子高校生2年でタケルは去年大学を卒業して今は母が運営していた研究所を継いでるようだ。
その母の研究の続きという名の下で僕が誕生したらしい・・・・・・目的はよくわからない。
いくら問い詰めても教えてくれなかったが唯一教えてくれたのは「すべてを失い、奪われた母の仇をとる」・・・・・・が目的みたいだがそれ、ボクの誕生理由と一致する部分はあるにはあるが・・・納得できない。
「チトセおはよー、襖の前でボーとしてどうしたの?」
メイが寝間着姿でボクに挨拶する。
そうだ思い出した、名前をもらった日からメイの部屋で寝ていたんだった!!
そんなことを思い出しているとメイがボクを持ち上げた。
「今日も日の出を見るの?」
「ウン」
そういうとメイは天窓が設置された屋根裏に連れて行ってくれた。
この部屋はタケルが小さいころよく隠れて実験をしていた部屋らしく、今ではメイの日向ぼっぽする場所だ。
しかし屋根裏に行くにはまずメイの部屋を出てそのあと勿論階段があるのだがボクの体は重く動かすことが難しいためメイがいつも早く起きてくれてボクを連れて行ってくれるのだ。
「あ! 昇ってきたよ!」
「ワー!」
ボクは日の出の光景を何度見ても忘れない。だって見てるだけで心が落ち着くからだ。
「きれいだねー」
彼女も僕と同じなのか太陽を見つめる。
メイはそういえばとボクを揺さぶって妄想の世界から現実の世界に戻す。
「ナニ?」
ボクがそういうとメイが冷や汗をかきながら。
「今何時だっけ?」
「シラナイ」
メイはそうだったと言い、ポケットから光る薄い板を取り出して指を動かす。
「ご・・・五時・・」
メイはこの世の終わりの顔をするが、何故だかわからない。メイはボクを持ち上げると「ごめんね」と呟いた。
階段を下りた先にはタケルが仁王立ちをして待ち構えていた。
なんだろう、普段は優しいせいかかなり怖い。
「メイ」
「は、はい」
「・・・・・・約束は守ろうな? チトセを大切にするのは構わないが・・・・・・」
タケルはわめき散らしたり、一方的に攻めたりせず優しく叱った。
「ごめんなさい・・・」
「反省したらよし、ほら余った時間で勉強しな、テストが近いんだろう?」
「はーい」
メイはボクをタケルに渡し、自分の部屋に戻る。
タケルはボクをつれて地下におり、あの広い部屋に連れて行った。
あの広い部屋に連れてきたあとボクを机の上に乗せた。
「チトセ、今日から何するか覚えているか?」
「リハビリ?」
「そう、リハビリだ。 お前を何とか体を動かせるようにしたいから真面目に取り組んでくれよ?」
「ウン」
「教えてくれる時はうんじゃなくて?」
「ハイ!」
「そう! 正解!」
タケルは一見無愛想だがしゃべってみるとメイと同じとても優しい、この間単語を教えてもらっている時タケルが言っていた兄妹は似るものとはこういうことかな?
「ではまず前の片方の触手を動かしてみて」
「ウ、ウーーーン」
「うん、少しは動くな? あれ?」
タケルは少し間抜けな顔になる、どうしたんだろう?
「めっさ動いてるよ」
えっそう! ボクは今動かしている触手を見てみると・・・・・・本当に動いてる・・・。
何これ、起きたときは動かなかったのに!
ボクが悩んでいる時タケルは「あの部分がチトセの成長を早めるDNAスイッチなのかなー」と訳の分からないことをつぶやいていたが無視しよう。
ボクは片方が動かせたら全部行けるのかなと思いためしに動かした・・・・・・普通に動くよ。なんで? 本当になんで? そんなことをしていたらタケルが「机に思いっきり触手をたたきつけろ」と言ってきた。
「コワスノ?」
「壊してもいい、やってくれ」
ボクは言われるがままに触手を机に叩きつけた。
______それからは地獄だった。
あの後ボクは机を大破させてしまったがタケルは怒らず、これも結果のうちと紙に何かを書いた。
これからは机はもったいないと床にすることになった、何度も何度も・・・・・。
何時間か経過したのかお腹が空いてきて力が入らなくなってきた。
この訓練の成果はまだ出ておらず、何とか力加減が覚えたぐらいだ。タケルはボクの動きが鈍くなったのを見て悟ったのか時計で時間を確認し、手を大きく鳴らした。
「朝のリハビリは終了! いったんご飯にしよう」
タケルはそういうとボクを抱いてこの部屋から出た。
部屋を出て階段を上って左に曲がったところに食堂がありそこにはメイが何か焦げたぱさぱさしたものを置いていた。これは何だろうとボクは困惑したが、それよりもこれを平然と食べているメイがすごいと思った。
「兄さん出来てるよ」
「あぁ、ありがとう」
タケルはそういうとボクをイスに座らせ、ぱさぱさした何かをボクの前に置いた。
「コレ・・・・・・ハ?」
「これか? これはイナゴという食べ物だ」
「イ・・・・・・ナゴ」
絶対食べ物じゃないよね!?
ボクは大声でこう言いたくなった。ナニコレ?本当に食べ物? 絶対違うよね? こんな得体のしれないものを食べてもボクの体に合わないと思う。だって見るだけで危なそうだもん。
ボクが困った顔を見て悟ったのかメイは冷気が出る箱から僕と同じ体をしたものを取り出して持ってきた。
タケルは困った顔をメイに向けた。
「何故タコ?」
「なんとなく」
「今日タコ焼きとかで昨日買ったものだろう」
「いいの、気が変わった」
タケルはマジかと頭を抱えた。メイはと言うとボクの前にタコを持ってきて「食べる?」と質問してきたが・・・・・・知らないよ!
でもあの得体のしれないものよりおいしそうだから少しだけいただこう・・・・・。
「どう?」
「オイ・・・・・・シイ」
「まじか」
最初は一口だけにしようとしたがタコがあまりにもおいしかったためすぐに平らげてしまった、でも初めての食事だからか今はこれでもお腹が満帆だ・・・・・・眠い。
「なんだろう、この子を見てるとお姉さんになったんだなーって。 つくづく実感するよ」
「・・・・・・これがお前が一番欲しかったものだろう?」
「・・・・・・うん、本当にありがとう」
・・・・・・ボクはこの世に生を受けてまだ十日だがここに生まれてよかったと思う。大好きな二人に囲まれてずっと生きていたいな~。
ボクはそう思い静かに目を閉じ___。
「おい寝るなよ?」
タケルに強制的に起こされた。
「ではいってきまーす!」
メイはそういうと学校に向かった。タケルはメイを見送った後ボクを抱いてまた同じあの広い部屋に連れて行った。
それからも何度も動く練習を繰り返したが成果は出ず、日が暮れメイが帰宅しては晩御飯を食べ、徹夜でしても効果が出なかった。
いや、とらえ方にっては成果なしではないのかもしれない。 メイが学校に行き、タケルにジャンプしてと言われたボクは一回触手を地面にたたきつけ、その衝撃でジャンプすると比較的長く浮くことが出来た、タケルはそれが面白いと言い出し、その研究でリハビリの時間をつぶしたがこの中でボクは触手で上手いこと調節すれば動くこともたやすいのではと思い練習したが、なかなかうまくいかなかった。 そして時間がただ過ぎていきメイが帰ってきて晩御飯となった。 食べ終わった後は徹夜・・・・・・? と言ってもボクの中でだが一二時間ほど滞空してからの移動の練習し、ちょっとは動けたがまだまだ足りない、ボクはまだ続けたかったがメイがうるさいと苦情を言ったため今日はなしとなりボクはそのままメイに抱かれ寝室に行った後、抱き着かれながら寝た。
次の日ボクは疲れすぎて早く起きてしまった。隣ではまだメイがぐっすり眠っている。 日の出までまだ時間があり暇で仕方がない。
そこでボクはメイの睡眠の妨げにならない程度に練習をした。
「チトセおは・・・・・・え?」
この日家中にメイの声が響いた。
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