第51話 暴走する正義

ヤロリと別れ、行く当ても特に無かった僕らは町へと戻った。

余り何も食べておらず、お腹がすいていた僕らは飲食店を見つけたのでそこへと入った。


「いらっしゃい、さあどうぞどうぞ」


店の中で僕らを案内したのは若い男だ、ただこの人、どこかで見覚えがあるような顔だった。

料理が届いた後、これからどうするか、それについてグダグダ話しながら僕らは料理をゆっくりと食べていた。

するとそこに、一人の男が近づいてきた。


「君、ちょっといいか?」


リヤイは呼びかけられ、後ろを振り向く。そこにいたのは...僕らがヤロリを助けるために薬を盗んだ時、帰りにぶつかった男の人だった。

リヤイも、それに気づいたようだった。


「な、なんでしょう」


「人を探しているんだ....君たちは昨日まで、白い髪の老人.....名前を言った方がいいか、ヤロリと共に行動していただろう?彼がどこに言ったか知らないか?」


リヤイは戸惑いながらも、それになんとか答えた。


「それを聞いて...あなたはどうするつもりですか....?」


「決まっている」


その男は目を見開いた。


「見つけ出して殺すのだっ!!!」


その男は強い口調で言い切った。


「ほう...ではやってみよ」


びっくりした....なんとヤロリがすぐ後ろに立っていたのだ。


「先生...」


僕らは本当に驚いて言葉も出なかった、ヤロリが物を言うまで、本当に気付かなかったのだから。

男も非常に慌てていた。


「い..いやいやいや...冗談だ....」


急なヘタレ具合に僕は心のそこでちょっと笑った。この男、仮にヤロリを見つけたとしてどう殺すつもりだったのか、まあもう知ることはできないが。


「貴様にそのつもりがなくても、ワシはお前を殺すつもりだ」


「なっ....!?」


たちまち戦闘が始まった。店内は案の定大混乱、多くの人は逃げ出していった。

戦いはまたもや一方的だった、ヤロリの素早く強い連撃に対応出来ず、3発目で地面に倒れた。

ヤロリは男の喉を足で踏みにじりながら言った。


「貴様らのアジトはどこだ?言えば楽にしてやろう」


「あ.....アジトの位置は○○○○だ.....」


その男は簡単に場所を吐いてしまった、根性がないみたいだ。

ヤロリは足を離し、すぐその場所へと向かって行ったのか、その場から立ち去ってしまった。

瀕死の男を置いて.....。


「...あ...う..」


男の状態はすぐに処置を行わないと死ぬような感じだった。これは...明らかにヤロリからの示唆だ、自分の手でトドメを刺せという意味に違いない。

リヤイもこれに気付いていたようで、しばし考えたが、彼は結局トドメを刺すことはなかった。


「運ぼう、手伝ってくれ」


僕も出来れば人殺しなどしたくはない、なので僕はリヤイに協力して近くの病院へ運び、すぐさまこの男が言ってたアジトへ向かった。

来てみると、そこは道場のようだった、入り口にはバタバタと死体があり、既に何かしらの争いがあったことがわかる。

リヤイはすぐさま門をくぐった、中ではヤロリが蟷螂拳の構えをとっており、その向かいでは黒服の男が胸を抑えて壁に寄りかかっていた。


「先生!」


リヤイはヤロリの腕を掴んで止めた。


「やめろリヤイ、この男は死ぬべきだ」


すると男がその場に跪いて言った、口からは血が出ている。


「もう...もう許してください...二度と誘拐しません....許してください」


「ほら、この方もそう言っています、許してあげてください!!」


リヤイの説得は必死だ、だがふと男の方を見ると、その男の目は憎悪に満ちていた、僕がそう感じた瞬間、男はヤロリ目掛けて飛び出した。


「危ない!」


僕は思わず叫んだ、ヤロリはすぐさま攻撃に対応し、男の攻撃を全てはじいた。

そして、トドメとばかりに喉に一撃を食らわせた。


「あ....が.....」


ヤロリは男が息絶えた事を確認すると、青ざめたリヤイに対して。


「これが現実だ」


そう言って去って行った....。

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