第48話 出会い

あの後、若干遅いと文句を言われながらも僕らは無事に配達を終えて、店に戻っていた。

戻ってからは、調合の作業にリヤイは準じていた。


「エシタ...トミリオ、ヌメロ、カーロ.....」


棚の中から材料を取っていくリヤイ、笑顔を浮かべている。

彼曰く、調合の作業が一番楽しいらしい。


「そうだ、これとこれを混ぜてみ....」


「リヤイ!!」


喝を飛ばしたのは店主だ。


「勝手なマネすんなよぉー?」


リヤイが薬で苦しんだあの日以降、店主はリヤイの近くで彼の行動を監視するようになっていた。


「アハハ....だめですか店長、私用の薬を作るのって」


冷や汗をかきながら答えるリヤイ。


「ダメに決まっとるだろうが!レシピどうりさっさと作れ!」


詰め寄りながら店主はいった。


「お前....前々から思ってたんたが....盗んだりはしてないよな?」


「いえ、まったくしておりませんここに約束します」


手を上げながら答えるリヤイ。彼の目は、あっちこっちに行っていた。


「お前いったな、約束破ったら.....」


店主は人差し指を首の前で動かした。


「こうだ」


リヤイは顔が青白くなりつつ、その日は夜まで働いた。

仕事が終わった後は晩御飯を街で食べたりして、夜中まで家に帰らなかった。

暗くて人通りが少ない夜の街を、僕らは歩いている時だった。


「にしてもすっかり遅くなっちゃいましたね、怒られないですか?こんな時間に帰って」


「適当にいっときゃなんとかなりますよー」


そんなくだらない話をしながら歩いていると.....。


「おい......!!」


僕らははっと足を止めた。今のは幻聴ではない。互いに顔を見合わせて、それを確認した。

たしかに今の声は、この真っ黒な場所から聞こえた.....。僕らは怖がりつつも、その場所を確認した。

するとそこには、一人の白い服をきた老人.....昼間にあったあの老人がそこに苦しい表情をして座り込んでいたのだ。


「大丈夫ですか!?」


リヤイが駆け寄った。


「助けてくれぬか....今ワシは追われているんじゃが....」


「ええ、助けましょう、僕と一緒に来てください」


僕はこの老人がなぜ、追われているのか疑問に思いながらも、爺さんを連れていくリヤイについていった。

僕らはそのまま、家へと向かった。


「座ってください」


リヤイは爺さんを、庭にある椅子に座らせた。


「ありがとう....」


腕を抑えながら感謝を伝える爺さん。


「けがは大丈夫なんですか....悪ければ薬草を持ってきますよ」


「ありがとう....上質なものを持ってきてくれ、定価の2倍は払う」


「ははは、今回はただにしますよ、人助けが好きでね」


「それは.....」


爺さんはしばらく驚愕したあと、ニッコリ笑顔を見せた。


「本当にありがとう、私は君のことが気に入ったよ」


なんだかんだ言って根はいいやつなのだと僕はこのやり取りを見ていて思った。


「じゃあここで待っててください、薬を取ってきますんで」


果たしてこの家に傷を治す薬などあったかなあ、そこらへんがひっかかったので、僕はリヤイに尋ねた。


「薬なんて家にありましたっけ?」


「ないね」


「じゃあどうするんですか」


「ついてくればわかるさ」


ついていくと、もう閉まっている勤務先の薬草屋へとたどり着いた。


「......やるんですか?」


「ああ、人が助かるならあのおっさんも本望だろう」


「やっぱお金払わせた方が良かったのでは?」


「まあまあまあ、そう言わずに見張っててくれよ」


彼の強引なやり方に不満を持ちつつも、言われたとおりにした。

しばらく待っていると....。


「リヤイ!!」


どうやら店の奥にいたようだ。リヤイが慌てた顔で袋を持ちながら飛び出してきた。


「逃げるぞ逃げるぞ」


僕らは全速力で夜の通りをかけた。裏路地を出た時に人にぶつかった。


「おい、気を付けろよ!!」


「すいませんすいません」


ぶつかった男は僕らに指を指して注意した。すると、男は抱えている薬をみて、首を傾げた。


「なあ、お前が抱えているそれはなんだ?」


リヤイは目線をあっちこっち泳がせながらも。


「く、薬です.....友人に上げようと思って.....」


「そうか...」


なんとか答えてその場をやり過ごした。僕は急ぎ駆け足で、家へと向かった。

特に何事も起こらず、無事に帰れた。

爺さんはゆっくり僕らをまってくれていたようだった。


「爺さん、お薬取ってきたよ」


「おお、ありがとう.....」


「今準備するからちょっと待ってて」


リヤイはそのまま道具を取りに中へ入った。僕と爺さんは、外で待っていた。

言葉は交わさなかった、何故なら....ぼくも爺さんも、どこからか向けられる視線を感じ取っていたからだ.....。

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