??????編

第44話 再開

どうも、カイ・サカグチでございます。

ダビットたちが住む○○町から離れて大体13日ぐらい。出来れば誰にも迷惑をかけない、要するに誰もいないところへ身を置きたいと思いつつも、やはり一人じゃ寂しいものなので村を見つけると入ってしまうのが僕の悪い癖。

何だかんだ、ダビットという男は幸せ者だと僕は思う。あれだけ身を案じてくれる人、僕にはいない。この世界ではもちろんだが、元の世界でもそうなのだ......。


自分の話はここまでにして、僕は13日に渡る放浪でなんかもう疲れていた。そこで僕は今回の舞台である△△町へとたどりついたのだ。

町の大きさはボベダ村より一回り大きいといった具合。滞在するにはちょうどいい感じである。

僕は宿を探すべく、町を探索していた時だ。一軒のボロ屋の横を通った時、その家の庭には一人の青年と爺さんがいたのだが、その爺さんの方を見た時に、一瞬既視感を感じたのだ。

通り過ぎた時に感じた僕は、ん?と思って一瞬戻って酒を飲んでいる爺さんの顔をもう一度じっくり見た。僕の感覚は確かだったようだ。


「.....ビリーさん!?」


僕は思わず声をかけてしまった。このボロそうな服を着て、顔に赤みがかっていて、憎たらしい表情をしているこの男、確かにビリーこと”ジジイ”だった。


「んん?なんじゃおま.....ああ!へっぽこ魔導士のサカグチじゃないか!!久しぶりじゃなぁ」


「うう....その人、知り合い...なの?」


ジジイは僕に気づいてくれたようだった。まあボッカス・ポーカスなんて忘れようがないからね。青年も吊り縄でトレーニングをした状態のまま僕の方を見る。

辛そうだ。


「ビリーさん、どうしてここに?」


「こいつを鍛えるためじゃ、めんどくさかったんじゃが、クエストも終わって暇になったんでな」


「どうりで、全く見なかったわけで.....」


大臨会の時に全く見なかったのは、こういうわけだったのか。

ジジイはキセルで煙を吸いながら、僕と話している。


「あ、あの、お客さんも来たみたいだし、そろそろ休息に....」


青年が、顔を真っ赤にしながらジジイに休憩を求めた。腕立て伏せをする時の体勢のまま、ずっとつられているので辛そうである。


「駄目じゃ、わしらが話してる間、もうちょっと頑張らんかい!」


指導者としてのこいつは、やはり厳しくいくタイプみたいだ。


「ああ、は...い」


「一セット、動け」


ジジイがそう言うと、青年が前後左右にある大小様々なつり革を使って新体操みたいな動きを始めた。


「彼は?」


僕はこの青年の名前が知りたくて、ジジイに聞いた。


「あいつはリヤイ、ワシから見れば.....甥孫っていえばええんか?とりあえずそんな所の男じゃ」


こいつ結婚してたのか.....僕は青年の名前よりも、それに驚いてしまった。

あからさまな表情を見せてしまったので。僕はジジイに問い詰められた。


「なんじゃ、そんな驚くようなことか?」


「いえ、別に.....」


話がこじれそうだったんで結婚していたことに驚くのはやめた。

リヤイがつり革で必死にまわって運動するそばで、僕はジジイと色々話した。

チャウのことについても....話した。


「そうか......」


旧友の死には、流石のジジイも顔を曇らせた。


「あいつは...常に前に進むことばかり考えて...行くとこまで行ってしまったのか....」


「はぁ.....」


「先に死ぬのは、ワシの方だと思ってたんだがなぁ.....」


そう言って、口から煙を吐く。


「トンは、強くなったのか?」


「....強くなりました、心を殺す羽目になりましたが」


「この世界で生きていく以上、あの性格は、変えなきゃいけないものだったからしょうがない」


そうこう話していると、一セット終わったのか、リヤイが地面に降りた。


「ハァ....ハァ....これでいいですか」


「よし、これぐらいにしてやるか....」


彼は疲れ切って、もう立つのがやっとなぐらいだ。フラフラになりながら、家の中へ入っていく。


「あっ.....!!」


家の中から驚く声が聞こえた。すぐさま、バタバタと荒い走りでリヤイが家から出ていく。


「じっちゃん!ちょっと行ってくるわ」


「おお、気を付けてな」


彼は町の中へと走っていった。


「彼、どこへ行ったんですか?」


「うーんと....たしかこの時間に仕事があったとか、たしか薬草屋だったか.....」


「なるほど」


僕はジジイと一通り話すこと話して暇だったので、彼の仕事を見物しに行くことにした。

街角にある一軒の店、その薬草屋のカウンターで、彼は薬草の調合にいそしんでいた。その店の前に、一組の冒険者カップルが現れた。


「おっ、ここで頼んでみようか?」


「いいわね」


そう言って店へと彼らは入っていった。なんかカップルって聞くとラングとフェイの事を思い出して憂鬱になるなぁ....元気だろうか。


「いらっしゃい!」


威勢のいい声で、リヤイが言う。


「なあ、ここの店って医療用以外の奴も作れるのか?」


薬草はゲームみたいな怪我を治す奴以外に漢方薬みたいなのもあるし、ジジイが吸ってるようなヤバい奴もある。

さて、この男の求める物はどれか。


「ええ、調合可能ですよ」


「じゃあ、この紙に書いてある通りに作ってくれないか」


男はリヤイに、薬草の名前が書いているであろう紙を手渡した。

リヤイはそれをみて、悩ましいような表情を見せる。


「このようなものは見たことありませんが.....」


疑いの目をかけるリヤイ。


「なに、別にやましいもんじゃないよ、このレシピは、なかなか出回っていない特別なものなんだ。まあしらなくてもしょうがないな」


「いったい、この調合した薬草には、どういった効果があるんでしょうか?」


「こいつはすごいぜ、疲労回復、血液をサラサラに、後骨も強くなる」


「ええっ!?」


リヤイが食いついた。なんだか僕からみればすごい胡散臭いものなのだが....。


「今すぐ作ってくれないか.....」


「わかりました!初めてですけど頑張ってみます!」


リヤイは店内をうろついて、レシピに書いてある材料の薬草を探し始める。


「気を付けて作れよー」


材料の薬草を見つけると、彼は店の奥に入っていった。恐らく調合の作業に移ったのだろう。

彼はしばらく出てこなかった。30分ぐらいたっても出てこなかったので、しびれを切らした男はカウンターで叫んだ。


「おいいつまで待たせる気だー!!はやくしろ!」


「ああっ!?すいません今出ます!」


彼は慌てた調子の声で答え、煎じた薬草の汁が入った皿を持って出てきた。彼の顔は、分かりやすく見えるほど赤かった。

リヤイも飲んだのかな?にしてもこの薬の効果はどんなものだったのだろうか。


「お待たせしました」


そう言って彼は器をカップルが座っている席のテーブルに置いた。


「どうも。さっ飲んで飲んで」


男はリヤイにお礼を言うと、彼女?に飲むように促した。


「爽やかな香りがするわ....いただきます」


彼女はゆっくり、熱々だったので若干しぶりつつも、その煎じたものを飲んでいった。


「あれ....?それ彼女が飲むんですか....?」


女が飲んだことに対して何故か疑問を持つリヤイ。先に飲んでいた彼に、一体何があったのか。


「はぁ?何言ってんだよお前....?」


「いやぁ、あの....」


「彼女の為に頼んだんだぜ?これは女性用の薬だ。俺が飲んでも効果はあまりない」


女性用の薬.....?一体どういうことだ。

この男は何か....隠している。しょーもないことだから考えてもしょうがなかったのだが。


「そ、それって本当なの...?」


あからさまに動揺し、敬語ですらなくなるリヤイ。


「ああ、本当だ。実は....まだ確認したわけではないが、彼女は妊娠していてな、力を付けるために、これを飲ませたんだ」


そうか....別に怪しいものでもなかったか。確かに彼らは冒険者カップルだったとはいえ、装備をしていたのは男のほうだけだった。


「やべぇ....やべぇやべぇ!!!」


男から話を聞いたリヤイは、頭を抱えて焦りだした。あの煎じた薬は、リヤイが本来のむべきものではなかったのだ。成人男性にはどんな効果が表れるのか、わからない。下手したら毒として作用するかもしれないのだ。


「ど、どうしたんだ!?」


調合中に店に帰ってきた店主らしき人が、リヤイに駆け寄る


「じょ、女性用の調合薬を飲んでしまったんです......」


顔が一気に真っ青になるリヤイ。


「はぁ?何やってんだよ馬鹿野郎!」


「すいません....やべぇ...なんか腹部に膨張感ががが」


あきれた顔を見せながら、店主は、懐から何かを取り出した。


「ほら、これ飲め」


「何ですかこれは.....?」


粒状の何かを、リヤイに渡す。


「中和薬だ、薬草の効能を抑える効果がある」


「ああ....ありがとうございます」


リヤイはすぐさまそれを受け取って腹の中にぶち込んだ。


「まったく.....今日はもう帰れ」


「ええっ!?俺はまだ....」


「いいから、もう、お前トラブル起こしすぎなんだよ!」


それを聞くと、リヤイはしょんぼりとした表情をしながら、トボトボと歩いて店から離れていった。


「ああ、まだお腹が気持ち悪い......」


なかなか面白い奴だと僕は見ていて思った。

しばらく彼の成長を見るのも悪くないと僕は考えて、よたよた歩く彼の後ろについていった。

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